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七章 珍しく昼遊び

148 ダンジョン内での生徒

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 フレドリクパーティがダンジョンのモンスターと戦う姿を堪能したフィリップは急いで教室に戻ったけど、ボエルにめっちゃ怒られた。授業をサボっているのだから当たり前だ。
 その怒りの半分は、ずっと捜していたから。どこを捜しても見付からなかったから、ボエルは学校と寮をずっと行き来していたらしい。

 そんな苦労話をされても、フィリップは口を割らない。なんなら「サボる絶好の場所を喋る馬鹿がどこにいるんだ」と反論したから、頭を拳骨で挟まれてグリグリされていた。

「皇族に暴力振るってるよ? わかってる? これで2回目だよ??」
「うっ……この件は何卒、ご内密に……」
「いいよ~。サボってるのも秘密ね~?」
「だから黙って受けていたのか!?」
「別に体の関係だけでもよかったんだけど、ありがとね~」
「なんて悪知恵の回るヤツなんだ……」
「ストレス発散、手伝うよ~」

 ボエル、ガックシ。その性格があだとなって、フィリップに弱味を握られまくっているので強く言えないのであった。
 この日はフィリップが献身的にマッサージをしたから、ちょっとは気分が晴れたらしいけど……


 ダンジョン実習は体に負担があるから2日に一度の授業らしいので、次の日はフィリップは長い間ダンジョンの上で待ちぼうけ。夜になってからイーダに教えてもらったけど、自分の失敗なのにイーダに当たっていた。

「そ、そこでやめられると……」
「んん~? もっと欲しいなら、僕を気持ち良くしてくれたらしよっかな~?」
「イジワル~~~」

 おかげでフィリップも上機嫌。イーダもなんだかんだでいつも満足させてくれるから、言葉ほど怒っていない。
 ダンジョン実習も必ずある日を確認してから行くようになったので、授業の半分は出て寝てる。もちろんボエルが見てるので「せめて起きてろ」と怒られていた。

 そんな感じでダンジョンに足を運んでいたフィリップであったが、フレドリクパーティはレベル上げに精を出しているので面白味に欠ける。なので、他の生徒のことも見学していた。

「う~ん……真面目にやってるのは半分ぐらいか? 残りは地下1階で遊んでるヤツばっかだな」

 他の生徒でやる気があるのは、騎士家庭で育った者がほとんど。文官の家は地下1階で魔法の練習程度しかしていないし、自分が位が高いと思っている者なんかはそもそも出席していない。
 地下1階では楽しめないので、2階に移動。それでもフィリップのお眼鏡にかなう者はいないけど、ピンチになっているところはドキドキして楽しかったらしい。

「おっ! 悪役令嬢発見。この時期はゲームに出て来なかったから、こんな授業サボってると思っていたけど、真面目に受けてたんだな~」

 お気に入りのキャラを発見したフィリップは集中的にストーキング。悪役令嬢をエロイ目で見てるけど、真面目に分析してる。

「あの2人の男はけっこう強いけど、本当に生徒か? 顔も老けてるな……護衛の騎士でも雇ってお姫様プレイしてるのかも? いや、悪役令嬢以外は戦ってるか。イーダは風魔法使えたんだね。マルタは身体強化かな? 体当たりでお仲間ぶっ飛ばしたな……」

 悪役令嬢……ではなく、エステル・ダンマーク辺境伯令嬢のパーティ構成は、2人の騎士が守り、イーダが遠距離攻撃。マルタが近距離攻撃でオークを倒している。
 エステルはムチを持っているから中距離攻撃をするのかと思っていたら、何故かゴブリンに近付いて行った。

「うわ……めった打ちしてる……でも、なんでゴブリンはあの位置から動かないんだ? あっ! 影を踏んでるのか。確か悪役令嬢の魔法適性は闇だから、影も操れるのかも? にしても、もっとやりようがあると思うんだけどな~……」

 この日はエステルパーティをストーキングして、「自分ならこうするのに」とヤキモキしながら見続けるフィリップであった。

「あのさ~……」
「なんですか?」
「ううん。もっとこうしてほしいんだけど……」
「こうですか?」
「うん。それそれ~。きんもちいい~」

 夜にイーダに会った時に助言しかけたが、マッサージの助言しかしないフィリップであったとさ。


 ここ最近は先回りしているフィリップが地下3階で待っていたら、フレドリクパーティの少し後ろを歩く人物が目に入った。

「なんだアイツ……あんな如何いかにもモブっぽいヤツ、乙女ゲームにいたか?」

 その人物は身長が低くはなく高くもない、影が薄そうなオカッパ頭の男子。武器は腰にナイフを差しているだけで、かなり軽装だ。

「あ、そういうことか。僕がアイテムボックスを奪ったから、荷物持ちが必要になったのか。それはゴメン。プププ。てことは、そろそろ下に挑戦するのかな~?」

 モブ生徒の仕事は、荷物持ち。フレドリクパーティがモンスターを倒し、モブ生徒がドロップアイテムを拾ってリュックに詰める。
 もちろんモブ生徒は戦うすべはないから、フレドリクパーティが守りながら戦っている。今日に限って言うと、フィリップが跡を付けているので、バックアタックの心配なしだ。

「モブ君、華奢きゃしゃに見えるのにけっこう力持ちだな。物を入れすぎてリュックが自分より大きくなってるのに普通に持ってる……あのリュックに秘密があるのか? はたまたご都合主義なのか……ま、これならアイテムボックスは必要ないな。セーフってことで」

 自分のせいでフレドリクパーティのダンジョン攻略に支障が出るかもと思っていたフィリップは、モブ生徒に感謝しながら跡を追うのであった。


 それからもフィリップが付け回していたら、フレドリクパーティは新モンスターには少し苦戦をしていたが順調に進み、地下5階に下りたところで休憩していたので、フィリップは隠れて様子を見る。

「うわ……かわいそ。4人で聖女ちゃんとばかり喋って、モブ君は蚊帳の外だ。あんな中に入らなくてよかった~」

 そこには、4人のイケメンがルイーゼをチヤホヤする姿。それを見ないように明後日の方向を向いて静かに休んでいるモブ生徒。
 いくら乙女ゲームが好きでも、逆ハーレムルートを選ばなくてよかったと胸を撫で下ろすフィリップであった。
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