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六章 夜遊び少なめ

144 帝都学院の初テスト

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 主要キャラ大集合のケンカの場面を堪能したフィリップは、ボエルのスカートの中も堪能してしまったので拳骨制裁されていた。自室に戻ってからも説教されてるよ。

「オレのことは百歩譲って許すから、辺境伯令嬢のことはなんとかしてやれよ!」

 あんなことされたのに、ボエルはエステルのことのほうが心配みたいだ。

「なんとかしろと言われてもね~……男女の仲のことだから、口を挟むのは野暮ってモノでしょ」
「いいや。誤解があるなら、言ってやるべきだ」
「そうかな~? それを許し合い、乗り越えることこそ大事でしょ。逆に聞くけど、それすら乗り越えなれないカップルが、皇帝と皇后をやって行けると思ってるの?」

 フィリップの問いにボエルは目を伏せた。

「わ、わからねぇ……」
「だったら四の五の言わないで。2人の試練だと思って温かく見守ろう。ね?」
「ああ……殿下は意外と大人なんだな」
「そうだよ~? だからさっきの続き、どう?」
「さっきって??」
「ちょっと感じてたよね??」
「バッ! 感じてねぇし! 気持ち悪かったし!!」
「アハハ。冗談冗談。アハハハハ」

 言葉巧みにイベントに関わらないように釘を刺した上に、ボエルのスカートの中でお触りしたことを思い出させて口説くフィリップであった。

「どうしたの? 早く入って来なよ~。もう我慢できないよ~」
「変な言い方するな! あと、前隠せ!!」

 お風呂に入る前に、自分の下着をチェックしていて遅れるボエルであったとさ。


 それからも、フィリップはニヤニヤしながらルイーゼをストーキングしてエステルたちのやり取りを楽しんでいたら、付き合わされていたボエルも呆れている。

「何がそんなに楽しいんだか……」
「ボエルだって、なんだかんだついて来てるじゃ~ん」
「オレのは仕事だ。殿下から離れられないから仕方ないだろ」
「あ、そっか。なんかメモ取ってたから楽しんでるのかと思ってた。なに書いてたの? 見せてよ」
「これは、その……報告書に載せるヤツだから、秘密だ」

 実はボエルも、男女のやり取りは面白い模様。このやり取りを勉強して、まだ見ぬ彼女の参考にしようと思ってメモを取っていたのだ。
 まぁこんな言い方してるから、フィリップにバレてるな。ニヤニヤしてるもん。

「なんだよその顔……」
「いや~……ボエルも大変だな~っと思ってね」
「うっせぇ。それより明日からテストだろ。勉強しろよ」
「テスト??」
「中間試験だよ! よくよく考えたら、殿下が勉強してる姿を見たことない……」
「そういえば、テスト前はいつもダグマーに教えてもらっていたな……ま、なるようになるさ」
「やべぇ! オレの仕事だった!? 帰って勉強するぞ!!」
「えぇ~……ヤダ~~~……」

 ボエル、まだメイドに慣れていないみたい。いまさら職務を思い出し、文句を言うフィリップを担いで自室に連れ帰るのであったとさ。


 一夜漬けで中間試験に挑んだフィリップは、ボエルには「できたできた」と報告。その言い方ではまったく信用できないので、テスト期間はずっと一夜漬けをやらされていた。
 そして全てのテストが終わった次の日は、休日だからフィリップは寝ていたら、焦ったボエルに起こされた。

「ムニャムニャ……一発スッキリしとく?」
「なんの夢見てんだ!?」
「まだ~? やってくれないと起きないよ~? ムニャムニャ……」
「寝てるんだよな? 起きてくれ~~~!!」

 寝ながらめちゃくちゃ喋るフィリップなのだから、ボエルも何度も確認してから揺すりまくった。しかしフィリップは全然目覚めないので、ついにボエルもフィリップのある部分を握った。

「あうっ……あれ? 何してるの?」
「殿下が起きないからだろ~~~!!」
「ダ、ダメ……いまは刺激しないで……離して……あうぅぅ」

 お陰様でついに目覚めたフィリップであったが、怒ったボエルがなかなか離してくれなかったので、二射目……二度寝は免れたのであったとさ。


 ボエルがこんなに焦って起こしていたのは、皇帝から「フィリップを直ちに連れて来い」って呼び出しがあったから。文面からも怒りが伝わったフィリップも焦って着替え、カバンに書類を詰めてボエルと走って寮を出た。
 豪華な馬車に揺られて城に到着すると、皇帝は来客があるとのことでしばし待機。さすがのフィリップも、ボエルにセクハラしている余裕がない。でも、1時間も待たされたので、もうちょっとゆっくりしてくればよかったと後悔していた。

 そうして執事が呼びに来たら、フィリップとボエルは執務室へ。ボエルを部屋の前で待機させようとしたら、執事から「一緒に入るように」と言われていた。
 しかしフィリップも折れずに、強引にボエルを残して1人で執務室に入って、言われてもいないのに怒れる皇帝の膝の上に座った。

「どうして呼び出されたかわかっているな?」
「はい……テストのことだよね? これが、本当の解答。答案用紙には10点代が取れるように書いたの。確認してよ」
「ほう……」

 フィリップは馬鹿ではない。テストで低すぎる点数を取ると皇帝から怒られる可能性があったから対策済み。問題用紙には50点ちょいが取れるように書き込み、答案用紙は馬鹿皇子設定にしていたのだ。
 その問題用紙を受け取った皇帝は、難しい問題だけに目を通して頷く。

「ふむ……嘘はなさそうだな」
「まぁちょっとナメ過ぎてたから、半分くらいしかわからなかったの。でも、それは僕が悪いからボエルに否はないよ」
「どうしてそんなことをしたのだ?」
「中途半端な点数取るよりは、悪いほうが変な虫が寄って来ないと思ってね。みんな僕に近付こうと必死なんだもん」

 フィリップは嘘しか言っていないのに、皇帝は感心したような顔に変わった。

「わかった。この件、何も言うまい。いや、最下位だけは取るな」
「あ、やっぱり最下位だったんだ~。次は真ん中より下辺りを狙ってみるよ」
「その知能、もったいない使い方させてすまないな」
「そんなのいいよ。どう考えてもお兄様が継ぐことが、帝国に一番利益があるもん。気にしないで」
「うむ……」

 少し弱気の発言をした皇帝だったがフィリップの気持ちが嬉しくなったのか、優しい顔でフィリップの頭を撫で続けるのであった……
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