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六章 夜遊び少なめ

132 人気の違い

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 帝都学院、新学期の初日は短縮授業。お昼には授業が終わったので、フィリップは大きなあくびをしていた。

「「「「「フィリップ殿下~~~」」」」」

 それはクラスメートの待ってましたの時間。フィリップは遅れて来た挙げ句、休み時間もずっと寝ていたので喋り掛けられなかったから、お近付きになろうと手ぐすね引いて待っていたのだ。

「えっと……なに?」
「校舎の案内をいたします!」
「それは私が!」
「授業の説明をいたしましょう!」
「俺の言いたいこと取るな!」
「オッパイ触りません?」
「はしたないこと言わないの! 結婚して!!」
「「「「「抜け駆けするな~~~!!」」」」」

 フィリップが質問しただけで、この始末。腐っても皇族がやって来たのだから、クラスメートはケンカする勢いで喋り倒している。
 とりあえずフィリップはしばらくその様子を見ていたら、自己紹介は全て誰かの声で掻き消されるのでわからない。クラスメートの1人が目の前に現れては後ろに引っ張られて、違う人が出てまた後ろ下がるので顔も覚えられない。

「誰がオッパイ触らせてくれるって言ったの~?」

 どうやらフィリップがキレずに残っていたのは、オッパイのためだったらしい……

「「「「「私です!!」」」」」
「「「「「俺です!!」」」」」
「なんで僕が野郎の胸を触るんだよ!!」
「「「「「あっ……」」」」」
「「「「「キモッ……」」」」」

 ついにキレたのは、野郎共が勢い余って胸を差し出したから。同時に女子が冷めた目で見たので、ようやくクラスが静かになった。

「「「「「オッパイです!!」」」」」

 でも、それは一瞬だったとさ。


 また騒ぎが酷くなって来たのでフィリップもそろそろ本気でキレようと思っていたら、徐々に声が小さくなって来た。
 よく聞くと女子の声が減っており、最終的には男子の声だけが残ったので、フィリップは何故かと椅子に乗って立ち上がったけどすぐにしゃがんだ。

「なんであいつらが……」

 フィリップが変な行動をしたので男子たちもそちらを見たら、そこにはフレドリクとイケメン3人に囲まれたヒロインが教室に入って来たところ。
 ヒロインとかはどうでもいいが、次期皇帝のフレドリクが下級生のフロアに現れたから、鼻の利く女子たちはいち早くキャーキャー言って離れ、男子たちは釘付けになったのだ。

 ちなみにヒロインの名前は、ルイーゼ・アメルン。美人ではなく愛らしい表情の茶髪の少女で、乙女ゲームではさほど人気は高くない。プレイヤーは女性が多いのだから、そりゃそうか。
 人気があるのはフレドリクと親友の3人。黒髪筋肉イケメンのカイ・リンドホルム。メガネイケメンのヨーセフ・リンデグレーン。ロン毛イケメンのモンス・サンドバリ。ここにショタのフィリップを入れて、イケメン4と呼ばれていた。

 乙女ゲームでの人気1位はキラキラ皇子のフレドリク。キラキラしたエフェクトが出てるのかと見間違えるような微笑みで生徒に問い掛ける。

「フィリップに会いに来たのだが、どこにいるか知ってるか?」
「「「「「はは! こちらでございますぅぅ」」」」」

 どうやらフレドリクは、校舎の案内をしようとフィリップに会いに来た模様。その質問に男子たちは一糸乱れぬ動き。バババッと両サイドに分かれて道を開けた。

「ん? どこだ??」
「「「「「……へ??」」」」」

 しかし、そこには机と椅子はあるけどフィリップはおらず。なので男子たちは嘘をついたと思われないかと真っ青になって土下座してる。

「「「「「つい先ほどまでそちらにいたんですぅぅ!!」」」」」
「そう怖がるな。罰なんてないんだからな。楽にしてくれ」

 焦りまくる男子たちに優しく対応するフレドリクであった。


「うお~。ギリギリセーフ……」

 ところ変わって教室に隣接されたベランダ。フィリップはフレドリクたちに視線が集中した隙に、素早く逃げて窓から外に出ていたのだ。

「なんかよくわからないけど、逃げてしまった……まぁ逆ハーレムルートは避けたいから正解か。てか、兄貴、めちゃくちゃ人気あるな。心なしか、女子の目がハートになってるし……同じ血筋なのに、こうまで違うのか」

 自分に群がる女子は目が血走っていることが多いので、若干嫉妬にかられるフィリップ。しかし窓から覗きながら分析も行っていた。

「ひょっとして、逆ハーレムルートには僕の知らないルートがあるのかも? なんだよ~。一度ミスったら終わりって、ネットに書いてたのに嘘ばっかじゃん……わっ! また聖女ちゃんが近付いて来た。とりあえず退散しとこ」

 フレドリクがクラスメートを宥めるなか、ルイーゼが1人でベランダに向かって来ていたので、フィリップは匍匐ほふく前進というかゴキブリみたいにガサガサ動いて、隣のクラスから脱出するのであった……


 校舎を出たフィリップは、寮に向かおうとしたけど自分の部屋の場所はわからないし忘れ物があったので、時間を置いて壁を登って教室に戻った。

「殿下! どこに行っていたんだよ!!」

 教室はもぬけの殻だったけど、慎重に廊下に顔を出したところでボエルを発見。フィリップはチョイチョイと手招きして教室に入れた。

「大声出さないで。他の生徒に見付かるでしょ」
「てことは、隠れていたと?」
「そそ。お腹すいたんだけど、お兄様がいない場所で食べられない?」
「兄弟なんだから一緒に食べたらいいのに……てか、どこに隠れてたんだ?」
「ヒミツ~」

 フレドリクの向かった食堂は、フィリップを捜すのに走り回ってボエルも把握していたので別の食堂に向かったけど、何故かそこで食べていたので別の階に移動して昼食。
 一気に掻き込んだら、コソコソしながら校舎を出るフィリップであった。

「ところでなんでそんなにコソコソしてんだ?」
「それもヒミツ~」
「フレドリク殿下とケンカしてるとか?」
「意外とゴシップ好きなの? 女子みたい」
「そんなんじゃねぇし!」

 詮索して来るボエルは、からかって煙に巻くフィリップであった。
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