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六章 夜遊び少なめ
125 新メイド
しおりを挟む帰る直前に、奴隷館のキャロリーナに身バレしてしまったフィリップ。しばらく2人でワーキャーやっていたけど、疲れたのかゼーゼー言いながらベッドに倒れ込んだ。
「なんでわかったの?」
息が整ったフィリップは、ようやく謎解きをする。
「なんでと言われてもぉ、勘としかぁ……フィリップ殿下が旅立った日に君はいなくなってぇ、帰って来た次の日に現れたらぁ、疑いたくもなるわぁ。歳も近そうだしぃ」
「確かに……これ、他の人も気付きそう?」
「勘のいい人ならぁ。夜の街でもぉ、君の正体はフィリップ殿下だと少しだけ噂があったからぁ、気を付けたほうがいいわねぇ」
「うっ……もうしばらく色街には近付かないほうがいいか……」
「そうねぇ。あたしのところは箝口令敷くからぁ、毎日来てもオッケーよぉ」
自分の正体がバレると遊びづらくなるから、フィリップも夜遊びは自粛したほうがいいと思ったけど、気になることはある。
「いちおう聞くけど、僕を他の女に近付けさせないために、身バレの話した?」
「そんなわけないでしょぉ。フィリップ殿下と知ってしまったからぁ、そのネタ使っただけよぉ」
「鶏が先か卵が先かですか……」
「ラッキー。ウフフ~」
フィリップ、ガックシ。身バレさえしなければ夜遊びできたはずだが、ここで身バレしたから助かった可能性もあるので怒ることもできない。
「ちなみに、第二皇子と知ってもキャロちゃんは変わらないんだね」
「お忍びで来てるんでしょぉ? それならそう対応するのがプロよぉ。そんな貴族、五万といるしぃ~」
「さすがキャロちゃ~ん」
「でも、よくよく考えたら、初めて会ったのは8歳? そんな子供にあたしはなんてことを……陛下にバレたら殺されるのでは??」
「なんか早口になってるよ? 大丈夫??」
フィリップの年齢は現在12歳。それを思い出して、いまさら怖くなったキャロリーナ。
「ところでぇ、どうやって城から抜け出してるのぉ~?」
「それは秘密。もしも脅して聞き出すなら、もう帝都では遊ばない。キャロちゃんもどうなるかわからないよ?」
「うっ……言いふらしてもいいことなさそうねぇ。最悪、あたしが裁かれそう……わかったわぁ。もう聞かないわぁ~」
「うんうん。そのほうがいいよ~」
「でもぉ、もう1回だけいい~?」
「もう1回? もう1個じゃなくて??」
フィリップは質問のことだと思っていたら、キャロリーナは絡み付いて下半身をワサワサした。
「本当の君としたいのぉ~」
「あ、そゆこと。いいけど……できるかな??」
というわけで、カツラを取ったフィリップとマッサージを楽しむキャロリーナであった……
キャロリーナに全てを吸い取られた翌日は、フィリップは精も根も尽き果てていたので朝から仮病。昼も起きられずに夕方に目覚め、腰を擦りながら奴隷館に行っていた。
アガータのお風呂のあとは、ムラムラしているとかじゃなくて目の保養のために、キャロリーナに会いたくなったみたい。この日はマッサージは少しだけして、フィリップは何故かキャロリーナの裸体を描いてた。下手とか言われてたけど。
その翌日は、待ってましたの新メイドのお披露目。フィリップは仮病は使わずに、眠そうに新メイドがやって来るのを待っていた。
「フリューリング侯爵家が長女、ヴィクトリアと申します。これからフィリップ殿下のお世話をさせていただきます」
アガータが連れて来たヴィクトリア・フリューリング侯爵令嬢18歳は、巨乳ではなく貧乳でもなくちょうど真ん中辺りの大きさの金髪美女。
アガータの補足を聞きながらフィリップは舐めるように見て、少し気になる点はあるものの「いいね~」と、息子さんと語っている。
「坊ちゃま。この者は至らぬ点が多々ありますので、何かありましたらいつでも私に言ってください。教育しに参りますので」
「うん。わかったよ。短い間だったけどお疲れ様」
「いえ。たいしたことではありません。では、私は失礼いたします」
フィリップが労いの言葉を掛けると、アガータは謙遜し、綺麗なお辞儀をして部屋から出て行ったのであった。
「さってと。僕、体調悪いから、もうちょっと寝るね~」
ヴィクトリアと2人きりになったフィリップは、うるさいのがやっと出て行ったと嬉しそうに寝室に入り、ベッドに飛び込んだ。
「はぁ~。ダル……」
そして布団に入ったところで、ヴィクトリアがベッドに腰掛けて疲れたように呟いた。
「えっと……何してんの?」
「やることもないから休憩」
「いや、掃除とかイロイロあるでしょ?」
「えぇ~? わっかんな~い」
「いやいやいやいや……」
皇帝から教育しろとは言われていたが、ここまで何も知らない女がメイドをしていることにフィリップも驚きを隠せない。
「なんで何も知らないのにメイドなんかやってんの?」
「第二皇子のメイドになれば、フレドリク殿下に近付けるからよ。パパは第二皇子は寝てばかりの楽な職場だからって言ってたのにな~」
「そっちなんだ……」
フィリップ的には第二皇子の妻の座を狙っているのかと思ったけど、ハズレ。ただ、会ってすぐにここまでナメられる経験をしたことがないので、こんなことを考えていた。
(なんだこいつ? 僕の下へやって来るメイドって、何か欠点がある人しかいないのか? いや、エイラもダグマーも欠点とは言えないか。なんだかんだでメイド業は満点だったし……てか、ついに寝やがったな……)
フィリップが考え事をして黙っていたら、ヴィクトリアはベッドにゴロンと寝転がった。
(いや、ありえなくない? 皇子のベッドだよ? 僕のメイドになった人は、いまのところ全員ベッドに寝転んでるけど……でも、許可無く入って来のはこいつが初めてだ。どうしたモノか……)
フィリップは襲ってやろうかと思っていたら、ヴィクトリアは寝返りを打ってフィリップのほうを向いた。
(しかし、どっかで見た顔なんだよな~……あっ! 乙女ゲーム! こいつ、フィリップのメイドで後ろにいた。聖女ちゃんにビンタしたヤツじゃん!?)
このヴィクトリア、主要キャラではないが立派な出演者。帝都学院内でヒロインをビンタする事件が起こり、そこでフィリップがクビにするから、いまクビにしていいか悩み出した。
(とりあえず様子見してみるか。なんか辞めさせられない気がするし……)
この世界は乙女ゲームに沿った世界。強制力が働いてヴィクトリアを辞めさせられない未来が見えたフィリップは、このまま寝てしまうのであった。
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