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五章 二年生も夜遊び

107 ダンジョンの最奥地

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「これでアイテムもバグってたら、キレるぞ~~~??」

 サイクロプスがバグっていた上に死ぬ時までバグっていたので、フィリップはすでにキレている。その状態で出て来た宝箱は、半ばヤケクソで開けた。

「セーフ! でも、お金以外使えねぇ!!」

 出て来た物は、金貨数枚と白金貨2枚。それとフィリップより大きな金棒だったので、やっぱりキレてる。装備してみたらいま使っている武器より強かったけど、見た目から装備を諦めるフィリップであった。


 それからカクカクした動きのポリゴンモンスターを危なげなく倒して文句ばかり言っていたフィリップであったが、経験値は多く入るし出て来るドロップアイテムはいい物ばかりなので微妙な顔。
 地下19階より難易度が低いから、RPG好きからしたら物足りないのだ。苦戦するのは、空を飛ぶモンスターだけ。下りて来ないもん。

 その場合は、真下から指鉄砲連射。反撃も真下には来ないから楽々倒せると言いたいところだが、指鉄砲ではHPを削るには時間が掛かるのだ。
 いちおう最強魔法の氷桜吹雪ひざくらふぶきを使えば早く倒せるが、一発では倒せないしMP消費が激しいので、MP回復ポーションをガブガブ飲むことになるからやめたんだって。アイテムボックスにたんまり入っているのに、貧乏症だ。

 ちなみにフィリップのアイテムボックスは、宝の宝庫。武器防具に服や服飾品、各種回復アイテムが山ほど入っている。これは何かに使えるかと思って溜めていたけど出番がまったく来ないので、もう何が入っているかわからない。
 お金もたんまり入っているけど、銅貨と銀貨はクーデターの時に全て吐き出したので、それ以降は拾っていない。金貨や白金貨だけでも充分すぎる額になっているからだ。
 ただし、下に行くほど金貨が増えているので、捨てようかどうかめっちゃ悩んでいるらしい……


 ポリゴンモンスターは限られた動きしかしないので楽勝に倒せると言いたいところだが、HPだけは無駄に多いから倒すには時間が掛かる。
 しかしフィリップは剣と魔法を駆使して危なげなく倒し、地図を作って進んでいたら、見覚えのある部屋を発見した。

「おお! セーブポイントだ。さすがにここには無いと思っていたけど、ラッキー。ちょっと休んで行こう」

 セーブポイントは4階ごとに設置されていたが、ラスボスの手前にはないと思っていたのでこれ幸いと、フィリップはお皿の水をコップですくって一気に飲み干した。
 ちなみに回復水はセーブポイント限定。フィリップはどこでも使えると思って大量の水筒や瓶に移したのに、お腹パンパンになるまで飲んでもMPが一切回復しなかったから、そのまま不法投棄したんだって。

 MPが満タンになったフィリップは、その場に座ってダンジョンノートを開いた。

「まさか21階なんてないよな? いや……あるかも? 帝都学院のダンジョンでは、ヒロインがこけて偶然発見するんだから、似たようなここならクリちゃんがこけて発見するのかも? ドラゴンみたいな裏ボスがいるのかな~?」

 フィリップは心を躍らせてノートにメモを足していると、ふと気になることが頭に浮かんだ。

「てか、ここって地下20階もあるってラーシュでも知っていたけど、誰が潜って調べたんだろ? 僕の予想では、5人パーティでもレベル50はないと厳しいぞ。一番強い近衛騎士でもレベル30しかなかったのに……また謎だよ~」

 この世界の誰も到達できないダンジョンが人々に知れ渡っていたのでは、フィリップの悩みは増えるのであった。


 それからひと月、経験値の割には楽な地下20階に籠って順調にレベル上げしていたフィリップ。ついでに宝箱漁りをしていいアイテムを手に入れてはいたが、ポリゴンモンスターには飽きて来た。

「もうラスボスとやり合ってみるか~」

 なので、今日は地下20階のセーブポイントにやって来たらお着替え。最強装備を取り出して装備する。

「う~ん。なんかバラバラ。でも、いまある装備じゃこれ以上のパラメーターアップはしないからな~……」

 フィリップの姿は、頭には頭頂部が尖ったヘルメット。フルメイルの鎧は動きにくいので胴体だけ装備して、違う軽鎧から腕当てとすね当てを付けている。防具は体のサイズに合うものが少ないから、バラして使うしかなかったらしい。
 右手にはカッチョイイ剣より強い、攻撃力90のダサイ剣。左手には金ピカのバックラーだ。
 見た目は超ダサいけど、これでも防御力は200を超え、各種補助効果アップもあるので素早くなり、攻撃力は115となっているので我慢するしかない。

「ま、誰も見てないんだから、気にすることないか。行きま~す。はぁ~」

 フィリップは強がってみたけど、装備がダサイのでいまいち気持ちが乗らないのであったとさ。


「ここ、たぶんボス部屋だと思うんだけど、何もいないんだよな~……」

 最短距離を進んだフィリップが扉を開けるだけ開けて入ろうとしないだだっ広い部屋は、ダンジョンの最奥地。
 他の部屋は全て確認済みだから、ボスがいるのは確実。ただ、氷だるマンを放り込んでも何も起きないので、慎重派のフィリップは入りづらいのだ。

「虎穴には入らずんば虎児を得ず! 氷だるマン!!」

 覚悟を決めたかに見えたフィリップは、人間大の氷だるマン5体を盾にしながらゆっくりと奥に進むのであった。


「「「ガルルルゥゥ!!」」」
「ヤバッ!?」

 フィリップが奥に進んで「なんであんな所に?」と玉座が目に入った瞬間、床一面に魔法陣が現れたと思ったら、次の瞬間には氷だるマン3体が同時に、床から出て来たみっつの口に飲み込まれたので、フィリップは大きく後ろに飛び退いた。

「初見殺しかよ……」

 こんなことをするモンスターは初なので、床から出て来ている黒いモンスターを睨みながら全体が現れるのを待つフィリップ。

「デカイ……ケルベロスだ~~~!!」

 しかし、巨大なケルベロスを生で見れたと、怒りは吹き飛ぶフィリップであった……
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