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五章 二年生も夜遊び

104 襲撃者

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 フィリップが2年生のフロアにカラフル王子たちの立ち入りを禁止すると、ついにラーシュに平和が訪れる。恥ずかしい決めポーズをやらなくてよくなったので、ここ数日はニコニコして機嫌がいい。
 フィリップとしては「聞き分けいいな」とか思いながらも、カラフル王子が何かしでかしてくれないかと願いながら学校に通っていた。しかし何もないので、そろそろダンジョン攻略に戻ろうとしていた。

 その日は、ちょっと遅くまで夜遊びして朝には仮病を使おうと思っていたフィリップは、カツラを被り庶民の服装に着替えてバルコニーに出たところで、入口のほうから物音が聞こえた。
 まさかこんな時間にダグマーが戻って来たのかと、フィリップは焦りながら服を脱いでいたら入口のドアノブがガチャガチャと鳴り出し、ついにはドアが壊れるような音がした。

「だ、誰!? ダグマーじゃないよね!?」

 さすがにそんな音が鳴っては、フィリップもパジャマを着ている余裕もなく寝室のドアに走り、勢いよく開けた。

「「「「我ら、色彩戦隊ブンテレンジャー!」」」」

 そこには武装した彼ら4人が立っていて、決めポーズしてる。

「もういいって言ったのに、律儀だね~」
「「「はっ!? つい……」」」

 カラフル王子、パブロフの犬状態。あれだけしつこくやらされていたから、フィリップの顔を見たら自然と体が動いたらしい。パープルのポントゥスが先走ってやったから釣られたってのもある。

「てか、こんな時間に僕の部屋に来るなんて、いい度胸だね~……」
「フッ……貴様の悪事を暴くためならば、我々はなんだってする覚悟だ!」
「おお~。正義の味方のかがみだね。わかった。相手してやるよ。その前に、パジャマ着ていい?」
「ああ……でも、なんで裸なんだ??」

 バルタサールの問いに、フィリップは「寝る時は裸」とか適当なことを言いながらパジャマを着ると、バルコニーに移動して椅子に座って足を組んだ。

「お前たちの狙いを当ててやるよ。僕を拷問して、罪を認めさせたいんだろ?」
「拷問とは人聞きが悪い。これは正義の行いだ!」
「なに言ってんの? 護衛がいなくなる夜にドアを壊して、凶器を持った賊が無断侵入しておいて、正義を語るなよ。お前たちは、器物破損に強盗の罪を犯してんの。わかってる?」
「貴様がやったことよりは遙かにマシだ!」
「ちなみに部屋の前に警備の兵士がいたはずだけど、殺した?」
「殺すわけがない。少し眠っていただいただけだ」
「言い方変えても、それ、暴行罪だからね?」
「だからなんだと言うのだ!!」

 バルタサールの言葉に、フィリップは呆れ果てる。

「まだわからないか~……お前たち、もう終わりだよ。帝国の第二皇子である僕の目の前で、罪を重ねすぎ。殺されても文句言えないって言ってんの。死ぬ覚悟はして来たってことでいいんだよね!!」
「「「「うっ……」」」」

 フィリップが怒鳴りながら立ち上がると、カラフル王子はひるんだ。

「なに~? 今頃ビビったの~? 僕に殺されたくなかったら、そこから飛び下りろよ。それで全てチャラにしてやる」
「ビ、ビビってなどいない! それに貴様の罪を暴きさえすれば、例え死んでも我々の勝利だ!!」
「仕方ない。僕が直々に殺してやるよ。剣を抜け!!」

 フィリップが再び怒鳴ると、カラフル王子は恐怖にかられて全員、腰から剣を抜いた。

「プッ……丸腰の相手に本当に抜いた。アハハハハ」
「何がおかしい! 行くぞ~~~!!」
「「「おう!!」」」

 こうしてカラフル王子は、一斉にフィリップに襲い掛かるのであった……


「はい?? うわぁああぁぁ~~~!!」
「「「うわぁああぁぁ~~~!!」」」

 次の瞬間、カラフル王子は空を飛んでいた。

「ほらほら~? 地面が迫ってるよ。風魔法使わないと死んじゃうよ~??」

 ついでにフィリップも……

 これはフィリップがちょっと速く動いて、カラフル王子たちを1人ずつポイポイ空に投げ、自分もバルコニーからジャンプした結果だ。

「「「「じ、じぬぅぅ~~~!!」」」」
「無理っぽいね。じゃあ死ね!」

 カラフル王子は感情の制御不能。泣き叫び続けているので、フィリップは1人だけ風魔法で減速して、カラフル王子を地面に叩き付ける。

「「「「……??」」」」

 いや、フィリップがギリギリのところで風のクッションを作ったので、カラフル王子は生還。全員、倒れたまま呆けている。

「なんてね。生きててよかったね~? アハハハハ」

 そこにフィリップがシュタッと着地して大笑いだ。

「次、僕にナメたことしたら、今度はもっと高いところから落として助けない。それと、お前たちは僕と会ってない。今日あったことは他言無用だ。約束守れるよね?」

 フィリップの問いに、カラフル王子は声も出せずにコクコクと頷くだけ。

「んじゃ、僕もお前たちが失禁したことは黙っておいてやるよ。おやすみ~」

 それだけ告げたフィリップは闇に消える。カラフル王子はフィリップが消えたことに驚くこともできずに、その場から一歩も動けないのであった……
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