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四章 クーデター後も夜遊び
093 怒り
しおりを挟む「派手に遊んでるらしいですね……」
今日の夜遊びは、まずはお城から。フィリップが寝室に入ると、クリスティーネに睨まれた。
「そそ。クリちゃんのおかげで、自由に遊べるようになったよ。ありがと~~~」
「怒っているのに通じない……」
「チュチュチュ。モミモミモミモミ」
「ああ! もう!!」
なのにフィリップはエロモード突入。クリスティーネもヤケになってマッサージを終わらせた。
「娼館について、ちょっとお願いがあるんだけど~?」
「彼女とこんなことしておいて、よく娼館の話ができますね……頭、おかしいんですか?」
「うん。おかしいよ。ダメ??」
「ダメに決まってるんですけどね。はぁ~……お願いってなんですか?」
「中町の話なんだけど~……」
フィリップのお願いは、昨夜行ったクラブや高級娼館の話。兵士を派遣することもそうだが、根本的な改革を求めている。
「高すぎる、と……」
「そうなの。あの値段設定じゃ、クラブも娼館もひと月もしないうちに潰れちゃう。失業者で溢れちゃうから、国が介入したほうがいいと思ってね」
「意外と真面目な話だった!?」
クリスティーネは値段の文句を言いに来たと思ったけど、話を聞いたらド正論で驚きを隠せない。
「それは急いでやらないといけないとはわかりましたけど、値段設定は誰に聞いたらいいか……」
「ここに娼館のプロがいるでしょ~?」
「そんなに行っているのですか……はぁ~。フィリップに任せます」
「そうだな~……帝国の値段から始めて、客の入りを様子見よっかな~? たぶん、帝国よりちょっと下げた値段がここの相場に合ってると思うんだよね~」
「楽しそうですね……」
初の色町運営なのだから、フィリップもノリノリ。クリスティーネは呆れ果てて、メモを取るのであった……
「あ、そうだ。もう1個いい?」
色町運営プランを全て喋り終えたフィリップの質問に、クリスティーネは「どうせろくでもないことを聞こうとしてんだろ?」って目で話を聞く。
「ストールって貴族、知ってる? 伯爵家の」
「ストール伯爵ですか。挨拶も丁寧で、人の良さそうな人ですよね。その人がどうしたのですか?」
「へ~……表の顔はそうなんだ」
「表? 何かあったのですか??」
「ちょっと揉めただけ。ま、あまり信用しないほうがいいかな~?」
「フィリップがそう感じたなら……お取り潰しにします??」
「権力は、僕のために使う物じゃないよ~?」
フィリップはこう見えてクリスティーネの救世主。その救世主が困っているなら、女王の権力をフルに使うことを辞さないクリスティーネであったとさ。
クリスティーネは仕事で忙しいからほどほどの時間で撤退したフィリップは、まだ帰るには早すぎるのでハシゴ。昨日行った高級娼館にエロイ顔して足を運んだ。
「なんかあった? 顔、腫れてない??」
そこでナンバー1娼婦のドロテーアが対応してくれたけど、店内も変な雰囲気が漂っていたので、エロイことを考えていたフィリップでも気になるらしい。
「いえ……ハタチ様には関係のないことですので……」
「関係ないことないよ。僕たちお金と体の関係でしょ?」
「それはその通りですけど……それを関係ないと言うのでは??」
「まあまあ。話してみな。さっき女王様と会って来たところだから、力になれるからね」
ただのスタッフとお客の関係では薄すぎたので、伝家の宝刀、クリスティーネの名を勝手に使って話を聞き出すフィリップ。
「あいつ……また暴力振るったのか……」
犯人はストール伯爵。あんなに大金を使ったからフィリップは今日は来ないと踏んで乗り込み「アニタを出せ」と散々暴れ、ドロテーアが身代わりになって、ついさっき帰ったらしい。
「そいつの家、どこかわかる?」
「ですから、ハタチ様が関わるようなことでは……」
「ちょっと嫌がらせするだけだよ。お願い。ね? なんなら、白金貨1枚で情報買うよ~??」
「い、いりません! しまってください!!」
結局は金の暴力で聞き出すフィリップ。ドロテーアは昨日も貰いすぎていたからと、地図を書いてしまうのであった……
「なんか悲鳴が聞こえるんだけど……」
地図通り進み、高い壁を飛び越えて立派な石造りの家に忍び寄ったフィリップの耳に、女性の悲鳴のような声が聞こえて来た。
なのでフィリップは、アイテムボックスからフード付きのマントを取り出して羽織り、2階のバルコニーに飛び乗って、窓を氷魔法でムリヤリ開けて室内に入った。
「こっち来い!!」
「や、やめて……ギャーーー!!」
「ママ、ママ、ママ~~~!!」
廊下に出たところで女性の悲鳴と女の子の泣き叫ぶ声が大きくなり、フィリップは急ぎつつも物音を立てずに階段を下りてその先を見る。
そこでは、女性の髪の毛を掴んで地下室に引きずり込もうとするストール伯爵の姿。それを止めようと、ストール伯爵の足にしがみついた女の子。その子を蹴り飛ばして壁に打ち付けた現場。
「何してんの?」
「だ、誰だ!?」
そんな現場を見たフィリップは、姿を隠すことをやめてゆっくりと近付いて行った。
「た、助けて! 助けてくださ~~~い!!」
「お前! 賊に助けを求める貴族がいるか!!」
「とりあえず一旦離せ!!」
「がふっ!?」
フィリップはストール伯爵に素早く近付き、鳩尾に拳をめり込ませた。その一発でストール伯爵は女性の髪は手放し、ヨロヨロと後退ったせいで、地下に下りる階段を転げ落ちて行ってしまった。
「なんかよくわからないんだけど、2人には手を出さないと約束するから、ちょっと待ってて」
「ママ~~~」
女性がコクコクと頷き女の子が抱き付くなか、フィリップは階段をゆっくりと下りて行くのであった……
階段の下では痛がるストール伯爵がいたので、フィリップは髪の毛を掴んで引きずって歩き、奥の扉を開いて投げ込んだ。
「ふ~ん……なるほどね。だから従者が1人も見当たらなかったんだ……」
そこには、拷問に使うような器具の数々。フィリップは辺りを見回してからストール伯爵に語り掛ける。
「国王が失脚したから、オモチャにする人間を外から補充できなくなったんだ。だから娼婦で憂さ晴らししたけど、それでも晴れなかったから奥さんにやろうとしていたと……どんだけゲスなの??」
「私にこんなことをしてわかっているのか! 私は貴族だぞ!!」
「質問に答えないならいいよ。もう殺す。どんな拷問をしてやろうか……」
「ご、拷問……待て! 話をしようじゃないか? なんなら金も女もくれてやる……ま、待ってください……」
ストール伯爵が何を言ってもフィリップは聞く耳持たず。一言も喋らずに、淡々とストール伯爵の命を削るのであった……
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