上 下
49 / 324
二章 学校で夜遊び

049 剣の師匠

しおりを挟む

「グギギギギギ……氷柱!!」

 アイアンゴーレムのデカイ手で押し潰されたように見えたフィリップは、ギリギリ盾での防御は間に合った。そのまま全力でアイアンゴーレムの重みに耐えていたが、目の前に氷の柱を出してつっかえ棒にしたら、一気に脱出した。

「うおっ。盾が一発でぐにゃってなってる」

 氷の柱がアイアンゴーレムの左手に潰されるなか、盾を確認したらご臨終。ついでにステータスを開いて自分のことも確認する。

「HPは……2割も持って行かれた。間接的でもこんなに減るなんて、直撃を喰らったらゾッとするね。てか、瀕死の重傷になったらどうなるんだろ? 怖いからやらないけど……ま、先にトドメを刺してやる! 盾の仇だ~~~!!」

 分析はあとから。フィリップは右手右足がなくなって立つこともできないアイアンゴーレムの右側から近付き、頭を凍らせて割るので……

「もう! 手が邪魔!!」

 いや、アイアンゴーレムが悪足掻きするので、胴体を凍らせて真っ二つに割ったら、アイアンゴーレムはそのまま床に吸い込まれて行くのであったとさ。


「なんか予定とは違う倒し方になったけど……まぁいいや。ドロップは何かな~?」

 ちょっと納得のいかないフィリップであったが、床から宝箱が現れたので嬉しそうに開けてみた。

「お~。カッチョイイ剣が出た。強そうだ~」

 ドロップアイテムは、大金とカッチョイイ剣。大金はアイテムボックスに入れたら、カッチョイイ剣は鞘から抜いてカッチョよく構えてみたり、ステータス画面を確認してる。

「いや~。やっぱり王道の剣はいいよね~。それに猫の手グローブよりちょっと強い。攻撃力が70もあるよ。これは本格的に剣の訓練してやらないとな~」

 こうして中ボスをクリアしたフィリップは上機嫌で階段を下りて行ったけど、アイアンゴーレムとの戦闘に時間を掛けすぎていたので、次のセーブポイントには届かないのであった……


 中ボスを倒してから何度も12階のセーブポイントを目指したフィリップであったが、次にダンジョンに潜ったら必ずアイアンゴーレムが復活しているからぜんぜん制限時間までに辿り着けないので、作戦変更。

「やはり、剣の訓練をします!」

 レベル上げをすると思っていたけど、フィリップは現実逃避してるな……

「ノンノンノン。そんなわけないだろ~……ん? 僕は誰と喋ってんだ??」

 心の声と対話していたフィリップは、とあるモンスターを指差した。

「剣の先生は、ソードマン師匠です。パチパチパチパチ~」

 ソードマンとは鎧を着込んだガイコツで、立派なソードを持っているからフィリップが勝手に呼んでいるだけ。しかし剣の腕前は、フィリップが見た中ではトップクラスの実力だから、名称に違わぬモンスターなのだ。

「よろしくお願いします!」

 そんなことを言ってもソードマンに通じないどころか、襲い掛かって来たのであった。


 フィリップは剣の訓練をするとか言っておきながら、胴体が半分くらい隠れる盾と猫の手グローブで対戦。これはソードマンの剣筋を見ようという作戦みたいだ。
 ソードマンは、まずは袈裟斬り。フィリップは左手に持った盾で、刃と直角に受け止めた。

 これはフィリップのほうがレベルがかなり高いということもあり、速度でも筋力でも上回っているから余裕で受けられるのだ。

「いいよいいよ。もっと来て」

 フィリップにおちょくられたソードマンは怒りもせずに、横切りに縦切り。連続斬りでフィリップに襲い掛かったか、全て盾で受け止められている。

「う~ん……パターンがあるのかな? こうしたらどうだろう?」

 何十回と剣を受け止めたフィリップならではの発見。ソードマンの動きを誘導して、同じ動きをさせ続ける。

「おお~。やっぱりパターンがあるな。これならわかりやすい。もうちょっと付き合ってもらおう」

 ソードマンのひとつの動作を、足運びから腕の振りまで目に焼き付けたフィリップは、床から数本のツララを出して師匠を串刺しにしたのであった。


「確か……こう。こうだよな?」

 ソードマンが床に沈んでアイテムを回収したら、フィリップは壁際に姿鏡を設置して剣の素振り。ゆっくりと振りながら動きを体に染み込ませる。
 そんなことをしていたらソードマンがリポップしたけど、フィリップは氷魔法で倒して素振りに戻る。

「よし。次のヤツは剣で相手してやる」

 何体も師匠をほふっておいて、自分勝手なことを言ってるフィリップ。ひとまずソードマンが現れたら、フィリップは剣を中段に構えて待ちの姿勢。
 ソードマンが近付いて剣を振るとフィリップは一歩下がり、練習した足捌きで踏み込み斜めに斬り付けた。

「おお~。いいんじゃない? 鎧に斬り込みが入った。こんなショボイ剣でも鎧なんて斬れるんだ」

 剣捌きが練習通りいったと喜んだフィリップは、同じ動作で二度斬ったら、ソードマンは床に倒れるのであった。

「う~ん……鎧が斬れたというより、ダメージエフェクトという感じなのかな? ドンドン行こう!!」

 ここはゲームが現実化した世界。フィリップは分析を挟みつつ、剣術訓練に精を出すのであった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

収納魔法を極めた魔術師ですが、勇者パーティを追放されました。ところで俺の追放理由って “どれ” ですか?

木塚麻弥
ファンタジー
収納魔法を活かして勇者パーティーの荷物持ちをしていたケイトはある日、パーティーを追放されてしまった。 追放される理由はよく分からなかった。 彼はパーティーを追放されても文句の言えない理由を無数に抱えていたからだ。 結局どれが本当の追放理由なのかはよく分からなかったが、勇者から追放すると強く言われたのでケイトはそれに従う。 しかし彼は、追放されてもなお仲間たちのことが好きだった。 たった四人で強大な魔王軍に立ち向かおうとするかつての仲間たち。 ケイトは彼らを失いたくなかった。 勇者たちとまた一緒に食事がしたかった。 しばらくひとりで悩んでいたケイトは気づいてしまう。 「追放されたってことは、俺の行動を制限する奴もいないってことだよな?」 これは収納魔法しか使えない魔術師が、仲間のために陰で奮闘する物語。

猫王様の千年股旅

ma-no
ファンタジー
 神様のミスで森に住む白猫に転生させられた老人。  紆余曲折の末、猫の国の王となったけど、そこからが長い。  魔法チートで戦ったり技術チートしたり世界中を旅したりしても、まだまだ時間は有り余っている。  千年の寿命を与えられた猫は、幾千の出会いと別れを繰り返すのであった…… ☆注☆ この話は「アイムキャット!!? 異世界キャット漫遊記」の続編です。 できるだけ前情報なしで書いていますので、新しい読者様に出会えると幸いです。 初っ端からネタバレが含まれていますので、気になる人は元の話から読んでもらえたら有り難いですけど、超長いので覚悟が必要かも…… 「アルファポリス」「小説家になろう」「カクヨミ」で同時掲載中です。 R指定は念の為です。  毎週日曜、夕方ぐらいに更新しております。

ぐ~たら第三王子、牧場でスローライフ始めるってよ

雑木林
ファンタジー
 現代日本で草臥れたサラリーマンをやっていた俺は、過労死した後に何の脈絡もなく異世界転生を果たした。  第二の人生で新たに得た俺の身分は、とある王国の第三王子だ。  この世界では神様が人々に天職を授けると言われており、俺の父親である国王は【軍神】で、長男の第一王子が【剣聖】、それから次男の第二王子が【賢者】という天職を授かっている。  そんなエリートな王族の末席に加わった俺は、当然のように周囲から期待されていたが……しかし、俺が授かった天職は、なんと【牧場主】だった。  畜産業は人類の食文化を支える素晴らしいものだが、王族が従事する仕事としては相応しくない。  斯くして、父親に失望された俺は王城から追放され、辺境の片隅でひっそりとスローライフを始めることになる。

全能で楽しく公爵家!!

山椒
ファンタジー
平凡な人生であることを自負し、それを受け入れていた二十四歳の男性が交通事故で若くして死んでしまった。 未練はあれど死を受け入れた男性は、転生できるのであれば二度目の人生も平凡でモブキャラのような人生を送りたいと思ったところ、魔神によって全能の力を与えられてしまう! 転生した先は望んだ地位とは程遠い公爵家の長男、アーサー・ランスロットとして生まれてしまった。 スローライフをしようにも公爵家でできるかどうかも怪しいが、のんびりと全能の力を発揮していく転生者の物語。 ※少しだけ設定を変えているため、書き直し、設定を加えているリメイク版になっています。 ※リメイク前まで投稿しているところまで書き直せたので、二章はかなりの速度で投稿していきます。

魔境に捨てられたけどめげずに生きていきます

ツバキ
ファンタジー
貴族の子供として産まれた主人公、五歳の時の魔力属性検査で魔力属性が無属性だと判明したそれを知った父親は主人公を魔境へ捨ててしまう どんどん更新していきます。 ちょっと、恨み描写などがあるので、R15にしました。

女神を怒らせステータスを奪われた僕は、数値が1でも元気に過ごす。

まったりー
ファンタジー
人見知りのゲーム大好きな主人公は、5徹の影響で命を落としてしまい、そこに異世界の女神様が転生させてくれました。 しかし、主人公は人見知りで初対面の人とは話せず、女神様の声を怖いと言ってしまい怒らせてしまいました。 怒った女神様は、次の転生者に願いを託す為、主人公のステータスをその魂に譲渡し、主人公の数値は1となってしまいますが、それでも残ったスキル【穀物作成】を使い、村の仲間たちと元気に暮らすお話です。

退屈な人生を歩んでいたおっさんが異世界に飛ばされるも無自覚チートで無双しながらネットショッピングしたり奴隷を買ったりする話

菊池 快晴
ファンタジー
無難に生きて、真面目に勉強して、最悪なブラック企業に就職した男、君内志賀(45歳)。 そんな人生を歩んできたおっさんだったが、異世界に転生してチートを授かる。 超成熟、四大魔法、召喚術、剣術、魔力、どれをとっても異世界最高峰。 極めつけは異世界にいながら元の世界の『ネットショッピング』まで。 生真面目で不器用、そんなおっさんが、奴隷幼女を即購入!? これは、無自覚チートで無双する真面目なおっさんが、元の世界のネットショッピングを楽しみつつ、奴隷少女と異世界をマイペースに旅するほんわか物語です。

[完結]異世界転生したら幼女になったが 速攻で村を追い出された件について ~そしていずれ最強になる幼女~

k33
ファンタジー
初めての小説です..! ある日 主人公 マサヤがトラックに引かれ幼女で異世界転生するのだが その先には 転生者は嫌われていると知る そして別の転生者と出会い この世界はゲームの世界と知る そして、そこから 魔法専門学校に入り Aまで目指すが 果たして上がれるのか!? そして 魔王城には立ち寄った者は一人もいないと別の転生者は言うが 果たして マサヤは 魔王城に入り 魔王を倒し無事に日本に帰れるのか!?

処理中です...