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二章 学校で夜遊び

048 カールスタードの中ボス

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 学生生活に戻ってみたフィリップであったが、エロに馬鹿に1人で何もできないヤバイ奴とか噂話のネタが増え続けたので、仮病を使ってまたダンジョンに引きこもり出した。

「やっぱり僕の弱点は接近戦だよな~……どうしよう?」

 レンナルトの攻撃はレベル差のおかげで余裕でかわせたのだが、ダンジョン内ではどんな危険があるかわからないので、魔法特化のフィリップとしては早急に解決したい。

「剣術授業もしょぼかったしな~……ラーシュかダグマーに習ったほうが早いとは思うけど、僕の強さがバレたらお父さんに話が行きそうだし……とりあえず盾だけ持ってみるか」

 ひとまずダンジョンで手に入れた防御力の高い大盾を装備してみたが、猫耳マントと猫の手グローブには似合わない。

「かわいい盾って、このゲームにあったかな? いやいや、僕は何を目指してるんだか……これでいいや。いこいこ」

 見た目がかわいすぎるので、装備にこだわることをやめたフィリップであった。


 それからもダンジョンに潜り、週2ぐらいでダグマーと遊んでいたフィリップは、めきめきと強くなっていた。

「おっ。ついにレベルが40になった。そろそろ10階にいるかもしれない中ボスに挑んでみよっかな~?」

 帝都学院のダンジョンでは5階に中ボスがいたから、階数が倍あるカールスタード学院のダンジョンでは10階にいると思っての安全策で、今までレベル上げをしていたフィリップ。
 1人だから、せめてフレドリクがゲーム内で最強のドラゴンを倒したレベル40までは我慢していたみたいだ。

 体を休めた次の日は、レベル上げに使っていた地下8、9階を最短距離でクリアして、たまに来て地図を埋めていた地下10階は慎重に進む。
 そうして地図を見ながら進み、モンスターはハメ技で倒していたら、今までと雰囲気の違うモンスターがいたからフィリップは身を隠した。

「デッカ……ゴーレムだよな?」

 広い空間の一番奥には、体高が10メートルを超えるゴツゴツした人型のモンスター。

「しかもあの色って、鉄だろ? 硬いヤツは苦手なんだよね~……」

 岩のゴーレムならば何度も戦ったことがあるし、氷魔法の威力も上がっているから貫くこともできるが、鉄ではフィリップも自信なし。凍らせる方法もあるけど遠距離では出力が低いし、接近しても巨大だから時間が掛かるのもネックだ。

「倒せないと進むこともできないし、やるだけやってみるか。氷だるマン!」

 まずは様子見の氷で作られた大きな雪だるま2体をジリジリと進ませて、アイアンゴーレムとの戦闘が始まる。


 アイアンゴーレムがパンチを放つと氷だるマンAは後退。その隙に氷だるマンBが体当たり。アイアンゴーレムに氷だるマンBが殴られて距離が空くと、氷だるマンAがアイアンゴーレムに体当たりして、そのやり取りが続く。

「スピード的には僕より遅いけど、あんなパンチ喰らったらどうなるかわからない。氷だるマンもヒビ入ってるもんな~……アレも試しておくか」

 フィリップの必勝法は、すってんころりん作戦。アイアンゴーレムを倒してしまえばなんとかなると思ったけど、そうは上手くいかない。

「全然こけない。あの重量じゃ、薄い氷なんて踏み抜かれてるな。やっぱり接近戦しかないか。あ、ゴーレムといえば、名前を変えるってのは……文字なんて書いてないから無理っぽい。覚悟決めて行くか!」

 フィリップは盾を構えると、氷だるマンを追加して走り回る。氷だるマンが攻撃したりアイアンゴーレムに殴られたりして氷が飛び散る中、その間を抜けてフィリップは右足にタッチ。一気に凍らせて距離を取った。

「凍ったけど、範囲が狭い。動きも変わらないし、もうちょっとやってみるか」

 フィリップはアイアンゴーレムにタッチして逃げるを繰り返して、凍っている範囲を広げると、全力疾走からの猫の手グローブでパンチを放った。

「うお~! あの巨大がノックバックした。本気出したらこんなに力あるんだ……ん?」

 アイアンゴーレムの足はヒビが入り少し欠けてダメージが入っていたが、それが悪かった。

「こっち来た!? 氷だるマン、足止めだ!!」

 アイアンゴーレムがフィリップにロックオンして走り出したのだ。この事態には、複数の氷だるマンに体当たりさせてスピードを落とし、フィリップはアイアンゴーレムの股を潜りながら右足にタッチして通り過ぎた。

「標的は移らないか……氷だるマン!」

 アイアンゴーレムはダメージを与えた敵を追い回す習性があるらしく、氷だるマンを吹っ飛ばしたらキョロキョロしてフィリップを見付けたら走り出したので、新しく出した氷だるマンをぶつけて時間稼ぎ。
 その間に残っていた氷だるマンを全てぶつけて、また右足にタッチ。その行動を繰り返すと、アイアンゴーレムの足は凍り付いた。

「猫パ~~~ンチ!!」

 そこにフィリップはパンチフルスイング。アイアンゴーレムの右足は、亀裂が広がりボキッと折れるのであった。


「ふぅ~……ここまで来れば、あとは余裕っしょ」

 アイアンゴーレムは片足が壊れては立つこともできず。ハイハイをするのがやっとで、機動力は激減だ。
 ただ、重量とパワーはたいして変わらないので、フィリップも慎重にヒットアンドアウェイ。アイアンゴーレムの右手にタッチしては逃げてを繰り返し、凍り付いたところで猫パンチ。

「いよっしゃ~!」

 アイアンゴーレムの右手も肘辺りから壊れたので、残りは頭を凍らせておしまい。そんなことを考えてガッツポーズしたフィリップであったが……

「ヤバッ!?」

 その一瞬の気の緩みが命取り。アイアンゴーレムは倒れながらも左手をフィリップの頭の上まで伸ばし、デカイ手に全体重を乗せたのだ。

 フィリップは避けられずに、アイアンゴーレムに押し潰されたのであった……
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