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二章 学校で夜遊び
046 剣術授業
しおりを挟む「で、殿下! 待ってくださ~い」
イジメの現場から立ち去ったフィリップに追い付いたラーシュは並んで歩く。
「さっきのはどういうことですか?」
「見た通りだよ。イジメって楽しいような楽しくないような……イマイチわからないね」
「いやいや、アレじゃあイジメをしている人もやめてしまいますよ。自分が殿下に同じことされると思って」
「そうなの? それじゃあ明日からは楽しめないのか~。残念だな~」
「どこまで本当のことを言ってるんだか……」
この事件をきっかけに、ラーシュはフィリップを見る目が変わり、生徒間では「第二皇子は何して来るかわからない危険なヤツ」と、変なレッテルが付け加えられたのであった。
翌日はイジメられていた1年生が助けてくれたことを礼を言いに来たので、何があったかだけ聞いて追い返す。どうやらテストの採点が普通になったから、同じ国の格下の1年生にレンナルトが大差で負けたからあんなことになったらしい。
つまりは、フィリップのせいで殴られていたから助けた気持ちにはなれなかったし、ラーシュも微妙な顔をしていたから勘付かれないように追い返したみたいだ。
それからフィリップは、念の為イジメを誘って来る人がいないか数日待っていたら、今日は剣術の授業があるとのこと。
フィリップは体操服に着替えに行く女子のあとを追っていたけど、ラーシュに首根っこを掴まれて男子更衣室でお着替え。ブーブー言いながら、グラウンドに向かった。
「なんか人が多くない?」
「聞いてなかったのですか? 2年生と合同授業ですよ」
ラーシュ曰く、今日は素振りの訓練をするからすでに習っている2年生と向い合わせになって、見本を見ながら木剣を振るだけみたいだ。
「クソつまんない授業だね」
「ですね。それぐらい、帝国の貴族なら習っていますのにね」
「え? マジで??」
「え? 習ってないんですか??」
「剣も持ったことない」
「マジで??」
まさかフィリップが剣も持ったことがないと思ってもいなかったラーシュは、敬語もクソもなくなっている。そのまま握り方からタメ口で教えていたら、チャイムが鳴って授業が始まった。
「で、殿下……」
「どっかで見た顔だね~……忘れたからまぁいいや」
「エシルス王国ノルドマン侯爵家が第二子、レンナルトです!!」
フィリップに見本を見せる役目は、レンナルト。クラスで一番位が高いから、フィリップの相手に選ばれたのだろうけど、名前を言われても完全に忘れてるな。
「えっと……なんか怒ってる??」
「いいえ……」
「あ、そ。じゃあいいや」
「怒ってません……」
「やっぱ怒ってそうだけど、質問いい?」
「はい……」
アレだけボコボコにしたのだから怒っていて当然なのに、フィリップはそれに触れながら問う。
「こんな素振りだけの授業って、やらなきゃいけないの?」
「いちおう授業ですから……剣に興味のない者は、途中でやめますけどね」
「あ、それアリなんだ。だったらクソつまんないし、木陰で寝てよっと」
「お待ちください!」
フィリップは木剣を肩に担いで歩いて行こうとしたら、レンナルトに止められた。
「ん?」
「こう見えて、私は剣には少し自信があるのです。素振りが退屈なら、模擬試合でもしてみませんか? もちろん、殿下が怪我しないように手加減いたしますので」
「まるで僕が弱いみたいな言い方だね~……」
「そう聞こえたなら申し訳ありません」
「ま、その安い挑発、乗ってやろうじゃないか! この剣にもたまには血をすすらせてやらないとならないからな!! アハハハハハハ」
「ただの授業用の木剣なんですけど……」
ちょっと恥を掻かせて復讐しようと思ったレンナルトも、フィリップが意味不明なことを言って狂ったように笑うので「ケンカなんて売らなければよかった」と、早くも後悔するのであったとさ。
模擬試合なんて教師としてはやらせたくないみたいだけど、フィリップがゴリ押ししたら簡単に許可。ラーシュからは死ぬほど止められたが、フィリップはグラウンドの端にある四角い闘技場にやる気満々で上がってしまった。
「あの~……公爵家の方が、殿下が剣を握ったのは今日が初めてだとおっしゃっていたのですが……」
しかし、レンナルトは素人の第二皇子相手に怪我をさせたらと思って尻込みしてる。
「フッフッフッ……彼は知らないだけだよ。僕の真の姿を! フィリップ流剣術の実力、とくとご覧あれ!!」
「怪我しても知りませんよ??」
「もう~。いまいい感じで決まったでしょ~? 怪我しても文句言わないから始めるよ~」
レンナルトの最後通告に腹を立てたフィリップは、教師に開始の合図をさせて模擬試合のスタート。
「では、殿下。打ち込んでください」
「その余裕、裏目に出ないといいね! 行くよ~!!」
フィリップはかっこよさそうなことを言ってからのダッシュ。そして木剣を振り上げ、レンナルトに向かって行った。その時、レンナルトはこんなことを考えていた。
(これ、本気か? 右利きなのに持ち手は逆。木剣なのに重さでフラフラしてる。こんなのと、なんで俺は戦おうとしているのだ……)
自問自答。だが、フィリップのヘロヘロの木剣はもうそこまで迫っているので防御するしかない。
「あうっ……」
「へ??」
「「「「「……」」」」」
レンナルトが防御するだけでフィリップの木剣は弾き飛んで行ったので、誰もが言葉を無くすのであったとさ。
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