上 下
32 / 326
二章 学校で夜遊び

032 ボローズ王国の初夜

しおりを挟む

 ダンマーク辺境伯領の西には2ヶ国が隣接しており、フィリップたちを乗せた馬車は北側にあるボローズ王国との国境に到着した。
 そこで待ち構えていたのは、多くの兵士。ここはホーコン・ダンマーク辺境伯が対応することになっているらしく、フィリップには絶対に外に出るなと注意して前進して行った。

 フィリップは何が行われているのかと馬車の窓に張り付いて見ていたが、遠いし人が多いから諦めてダグマーと喋っている。

「向こうの兵士、うちより多いけど本当に大丈夫なの?」
「はい。カールスタード学院に留学する馬車は攻撃しないと協定で決まっていますので。あの兵士も、ボローズ王国とカールスタード王国の兵士の集合体だと思われます」
「カールスタードの兵士がこんなところにいるの??」
「念の為、国を跨ぐ場合にはカールスタード王国が護衛に入るとのことです。これならば、兵士が揉めた場合も証人がいますから、安全に進むことができるのです」
「あ~……なるほど。三竦さんすくみね」

 フィリップが納得してウンウン頷いているが、ダグマーは不思議に思う。

「そんな難しい言葉、よく知ってましたね」
「やだな~。小説ぐらい、勉強嫌いな僕でも読んでるよ~」
「勉強をしたほうがよいのでは……」
「アハハ……あ、なんか揉めてない??」

 賢さを気付かれたくないフィリップがボケたらダグマーに冷たい目で叱られそうになったので、騒ぎ声が聞こえて来たからこれ幸いと話を逸らした。

「おそらくですが、辺境伯様がボローズ王国のイェルド将軍と揉めているのかと……」
「なんで~?」
「領土問題で何度か兵を出して戦っていますので」
「わ~お。宿敵ってヤツだ。そんなところに足を踏み入れて、本当に大丈夫なの??」
「先ほど申した通り、カールスタード王国の兵士もいますので戦闘にはならないはずです。もしも辺境伯様が帰らなかった場合、全面戦争になりますし」
「ちょっかい出すうちは、まだ大丈夫ってことか……」
「殿下はたまに賢いことを言いますね」
「たまにじゃないよ~? いつも賢いよ~?」
「おたわむれを」
「ひどいっ!?」

 ダグマーが勘付きそうだったので、フィリップは演技。というか、本当に賢いので、演技でも馬鹿にされるのはちょっと嫌なので迫真の演技になったから上手くダグマーを騙せた。

 そうこうしていたらホーコンが戻って来たけど顔にアザがあったので何があったかを質問したら、イェルド将軍と拳で語り合っていたんだとか……

「思ったより脳筋だったね……」
「はい……これで戦争にならないのが不思議です……」

 豪快なホーコンとは、あまり関わらないほうがいいと思ったフィリップとダグマーであったとさ。


 ホーコンとイェルド将軍はそれ以降は問題は起こさず、移動を開始する。帝国を移動するより多くの護衛を引き連れて進んでいると、宿場町に到着。
 この宿場町は帝国に一番近い町ということもあり、外壁に囲まれて守りが堅そうだ。そこを窓のカーテンを閉めて進んで本日の宿に到着したら、フィリップは周りに見えないように帝国兵に囲まれて最上階の部屋に連れ込まれた。

「仰々しいな~。これじゃあ誰とも喋れないじゃない」

 フィリップはボローズ王国にはどんな女性がいるのか見たかったので、ダグマーに文句言ってるよ。

「なにぶん敵国ですので。殿下の顔を見せるわけにはなりません」
「子供なんだからいいじゃ~ん。帰りには大人になってるから、いま見られても関係なくない?」
「それでもです。ここからは窮屈な思いをすることになりますが我慢してください」
「えぇ~~~」

 町での唯一の楽しみの女性見学を禁じられたフィリップは、がっくし。部屋からも出られないんじゃ、監禁と変わらない。
 それならばと、夜に抜け出そうと考えていたフィリップだが、食事とお風呂の世話を済ませたダグマーが寝巻きのワンピースに着替えて一向に出て行かないどころか、ベッドに入って来たのでさすがに驚いた。

「えっと……これはどういうこと?」
「敵国ですので、しばらくお側で護衛させていただきます」
「つまり、夜のお世話もしてくれるってこと??」
「セクハラです」
「ええぇぇ~~~!!」

 つい先程まで全裸でフィリップの体を撫で回していた女性がベッドの中にいるのだから、フィリップは辛抱堪らん。
 それに抜け出して夜遊びしようとしていたのだから、興奮して眠れるわけがない。

「あの……ちょっとだけでも……」
「セクハラです」
「触るだけでも……」
「死にます」
「死なないで~~~」

 訴えられるだけならフィリップも強行に出たのだろうが、死なれては困る。フィリップはダグマーから離れて眠るのであった。

「ウソ! ウソウソウソウソ! ナイフしまって! ね??」
「危険ですから、寝ている私に触れようとしないでください」
「うんうんうんうん!」

 でも、寝付けないから寝息を立ててるダグマーの胸を揉もうとしたら、いきなりナイフが首元に飛んで来たので、そんな気分が吹き飛ぶフィリップであったとさ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

魔術師セナリアンの憂いごと

野村にれ
ファンタジー
エメラルダ王国。優秀な魔術師が多く、大陸から少し離れた場所にある島国である。 偉大なる魔術師であったシャーロット・マクレガーが災い、争いを防ぎ、魔力による弊害を律し、国の礎を作ったとされている。 シャーロットは王家に忠誠を、王家はシャーロットに忠誠を誓い、この国は栄えていった。 現在は魔力が無い者でも、生活や移動するのに便利な魔道具もあり、移住したい国でも挙げられるほどになった。 ルージエ侯爵家の次女・セナリアンは恵まれた人生だと多くの人は言うだろう。 公爵家に嫁ぎ、あまり表舞台に出る質では無かったが、経営や商品開発にも尽力した。 魔術師としても優秀であったようだが、それはただの一端でしかなかったことは、没後に判明することになる。 厄介ごとに溜息を付き、憂鬱だと文句を言いながら、日々生きていたことをほとんど知ることのないままである。

地球にダンジョンが生まれた日---突然失われた日常 出会った人とチートと力を合わせて生き残る!

ポチ
ファンタジー
その日、地球にダンジョンが生まれた ラノベの世界の出来事、と思っていたのに。いつか来るだろう地震に敏感になってはいたがファンタジー世界が現実になるなんて・・・ どうやって生き残っていけば良い?   

私は〈元〉小石でございます! ~癒し系ゴーレムと魔物使い~

Ss侍
ファンタジー
 "私"はある時目覚めたら身体が小石になっていた。  動けない、何もできない、そもそも身体がない。  自分の運命に嘆きつつ小石として過ごしていたある日、小さな人形のような可愛らしいゴーレムがやってきた。 ひょんなことからそのゴーレムの身体をのっとってしまった"私"。  それが、全ての出会いと冒険の始まりだとは知らずに_____!!

悪役令嬢?何それ美味しいの? 溺愛公爵令嬢は我が道を行く

ひよこ1号
ファンタジー
過労で倒れて公爵令嬢に転生したものの… 乙女ゲーの悪役令嬢が活躍する原作小説に転生していた。 乙女ゲーの知識?小説の中にある位しか無い! 原作小説?1巻しか読んでない! 暮らしてみたら全然違うし、前世の知識はあてにならない。 だったら我が道を行くしかないじゃない? 両親と5人のイケメン兄達に溺愛される幼女のほのぼの~殺伐ストーリーです。 本人無自覚人誑しですが、至って平凡に真面目に生きていく…予定。 ※アルファポリス様で書籍化進行中(第16回ファンタジー小説大賞で、癒し系ほっこり賞受賞しました) ※残虐シーンは控えめの描写です ※カクヨム、小説家になろうでも公開中です

NTRエロゲの世界に転移した俺、ヒロインの好感度は限界突破。レベルアップ出来ない俺はスキルを取得して無双する。~お前らNTRを狙いすぎだろ~

ぐうのすけ
ファンタジー
高校生で18才の【黒野 速人】はクラス転移で異世界に召喚される。 城に召喚され、ステータス確認で他の者はレア固有スキルを持つ中、速人の固有スキルは呪い扱いされ城を追い出された。 速人は気づく。 この世界、俺がやっていたエロゲ、プリンセストラップダンジョン学園・NTRと同じ世界だ! この世界の攻略法を俺は知っている! そして自分のステータスを見て気づく。 そうか、俺の固有スキルは大器晩成型の強スキルだ! こうして速人は徐々に頭角を現し、ハーレムと大きな地位を築いていく。 一方速人を追放したクラスメートの勇者源氏朝陽はゲームの仕様を知らず、徐々に成長が止まり、落ちぶれていく。 そしてクラス1の美人【姫野 姫】にも逃げられ更に追い込まれる。 順調に強くなっていく中速人は気づく。 俺達が転移した事でゲームの歴史が変わっていく。 更にゲームオーバーを回避するためにヒロインを助けた事でヒロインの好感度が限界突破していく。 強くなり、ヒロインを救いつつ成り上がっていくお話。 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』 カクヨムとアルファポリス同時掲載。

【完結】儚げな少年と思って助けたら魔界一最強の魔王様でした。

カントリー
恋愛
「おねえちゃん 僕のお嫁さんになって…」 奴隷の少年だと思い助け、 可愛がったら… 「…約束は守ってもらうからな オーロラ…破るなんてありえないよな?」 魔界一最強の魔王様でした。 これはメイドのオーロラが繰り広げる 魔族の最高頂点の魔王様に求婚されるまでの 異世界ファンタジー。 小説の「異世界でお菓子屋さんを始めました!」と少し繋がっています。

拾ったものは大切にしましょう~子狼に気に入られた男の転移物語~

ぽん
ファンタジー
⭐︎コミカライズ化決定⭐︎    2024年8月6日より配信開始  コミカライズならではを是非お楽しみ下さい。 ⭐︎書籍化決定⭐︎  第1巻:2023年12月〜  第2巻:2024年5月〜  番外編を新たに投稿しております。  そちらの方でも書籍化の情報をお伝えしています。  書籍化に伴い[106話]まで引き下げ、レンタル版と差し替えさせて頂きます。ご了承下さい。    改稿を入れて読みやすくなっております。  可愛い表紙と挿絵はTAPI岡先生が担当して下さいました。  書籍版『拾ったものは大切にしましょう〜子狼に気に入られた男の転移物語〜』を是非ご覧下さい♪ ================== 1人ぼっちだった相沢庵は住んでいた村の為に猟師として生きていた。 いつもと同じ山、いつもと同じ仕事。それなのにこの日は違った。 山で出会った真っ白な狼を助けて命を落とした男が、神に愛され転移先の世界で狼と自由に生きるお話。 初めての投稿です。書きたい事がまとまりません。よく見る異世界ものを書きたいと始めました。異世界に行くまでが長いです。 気長なお付き合いを願います。 よろしくお願いします。 ※念の為R15をつけました ※本作品は2020年12月3日に完結しておりますが、2021年4月14日より誤字脱字の直し作業をしております。  作品としての変更はございませんが、修正がございます。  ご了承ください。 ※修正作業をしておりましたが2021年5月13日に終了致しました。  依然として誤字脱字が存在する場合がございますが、ご愛嬌とお許しいただければ幸いです。

【イラスト帳★創作日記】 ※週2回ほど更新

双葉
エッセイ・ノンフィクション
いつか「双葉の絵柄が好き」と言ってくれる方に巡り合うことができたなら――そんな夢を見つつ、マイペースで更新していきます♪ ◆◆本作のイラストは全てAI学習禁止です◆◆ ※2022年~2024年の作品まとめ ※四コマ漫画風の小ネタあり ※絵は全て【アイビスペイント】で描いております(各イラストの背景・フレームなどにアイビスペイント内の素材を使用)

処理中です...