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一章 帝都で夜遊び

017 悪者イベント

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「クソガキ……諦めたんじゃなかったのかい?」

 前回迷惑かけまくった娼館にフィリップが入るなり、店主のマダムに質問されている。

「諦める? なんで??」
「昨日来るとか言って来なかったじゃないかい」
「あ~……こないだ何もできなかったからムラムラしちゃってね。いつもお世話になってるお姉さんと盛り上がりすぎて来れなかったの~」
「理由が不純!?」

 そう。フィリップが訪れなかったから、マダムはもう来ないだろうと思っていたのに、そんなことして来れなかったとは想像もできなかったっぽい。

「さってと。今日もアンケート取りまくるぞ~」
「待ちな! 営業妨害だ。さっさと帰りな!!」
「あ~……ゴメン。テンション上がりすぎてた。損失分は払うよ。いくら必要?」
「そういうことじゃない。ケツ持ちがあんたのことを客から聞いて、昨日から見回りに来てんだよ」
「プッ。怖い顔してるのに優しいね。でも、もう遅いんじゃない??」
「チッ……だから言ったんだよ」

 マダムの後ろからガラの悪い2人の男が近付いていたのでフィリップが指を差すと、マダムも諦めたような顔でその男たちの前に移動した。

「そのガキだな?」
「ああ……でも、追い出すだけにしてやってくれないかい? まだ年端のいかない子供なんだ」
「営業妨害しておいてそれはないだろ。ここは大人が社会の恐ろしさを教えてやらねぇとな。どけ」
「くっ……」

 マダムはフィリップを助けたいみたいだが、リーゼントの男に押し退けられてしまった。

「よう。坊主、やってくれたな」
「ガキでも子供でも坊主でもないハタチだよ」
「ククク。肝が座ってるガキだな。20歳というなら、多少痛い目にあわせてもいいってことだな?」
「暴力反対!」
「はあ? これはお前がやらかしたことの落とし前だ。急にビビリやがったか??」
「いや。暴力を振るうなら、僕も反撃しなくちゃいけないじゃない? そっちこそ死ぬ準備できてるのかな~っと思って」
「クハハハハ」

 フィリップは気を遣って忠告したけど、リーゼント男には伝わらず。

「そこまで言うなら殺す覚悟でやってやる。表出ろ」
「はいは~い」

 心配そうな女性たちに見送られ、やる気満々の男たちのあとをスキップでついて行くフィリップであった……


「「「「「はい??」」」」」

 子供が酷い目にあうのは見たくないが、心配になった女性たちが外に出ると地面に転がる男2人と、パンパンと手を叩いているフィリップの姿があったので、変な声が出てる。これは殴り掛かって来た男を瞬く間に倒した結果だ。
 しかしフィリップはそちらには目を向けず、気絶していないリーゼント男の右手を踏んで力を込めた。

「ねえ? ボスに会わせてくれない??」
「ああ!? 誰がお前なんかの言うことを聞くんだ!!」
「これはお願いじゃなくて命令だよ。拒否するなら右手は踏み潰すけど、いいんだね?」
「や、やってみろ!!」
「仕方ない。ゆっくり行くよ~~~?」
「ぐう……いてぇ! ひと思いにやれよ!!」

 フィリップがゆっくり足に力を入れるとリーゼント男に激痛が走り、その終わりが見えない上に骨がミシミシと鳴り出した。

「ぎゃっ! 折れた! 折れたって!!」
「だからなに?」
「もういいだろ! やめてくれ~~~!!」
「じゃあ、もうちょっとやったら次は左手ね。その次は指を1本ずつ引き抜いてやるよ」
「わかったから! ボスに会わせるから足をどけてくれ~~~!!」

 脅しは徹底的に。右手の骨にヒビが入ったところで泣きを入れたリーゼント男は、さらに恐ろしい拷問が続くのかと、恐怖でフィリップに屈するのであった。


「あ、マダム。迷惑かけたね。迷惑料はいくら払っていいかわからないから、とりあえずこれ受け取って」

 呆気に取られる夜の住人の中にマダムを見付けたフィリップは、駆け寄って金貨10枚を握らせた。

「こんなに!?」
「多いと思うならスタッフの健康面に使ってあげて。また来るから、今度はいい子紹介してね~」

 子供から出て来るはずのない大金を見たマダムが驚いているうちに、フィリップは男2人に前を歩かせてに娼館を離れるのであった。


 夜の街を、男たちに質問したり軽く蹴ったりしながら歩くフィリップ。ちなみに質問の内容はこれから会いに行くボスの話ではなく、お勧めの娼館と女性の名前だったから「いま聞くこと?」と、答えが遅くなったから蹴られてたみたい。
 そうしてやって来たのは、貴族街の近くにある立派な石造りの建物。ここにボスがいるとのことなので、フィリップから先頭に扉を潜った。

「いらっしゃいませ。今日はどういったご用件……子供!?」

 すると執事風の紳士が丁寧に出迎えてくれたが、フィリップの姿に驚いてフリーズした。

「えっと……ここって何屋さん? マフィアのボスがいるんじゃないの??」

 それはフィリップも一緒。高級感漂う店内に驚いて、いまさらリーゼント男から聞き取りしてる。

「誰がマフィアだって言ったんだよ」
「いや、見た目が……」
「取り締まりには迫力があったほうがいいとボスが言うから、こんな格好してんだ」
「つ、つまり、君たちって何者??」
「国から許可をもらってやってる奴隷館の警備員だ。性奴隷を店に派遣したり、そこで起こった揉め事を解決するのも俺たちの仕事だ」
「それって……悪い人とかスネに傷ある人とかじゃないってこと??」
「普通の帝都市民だ」
「ゴゴゴゴ、ゴッメ~~~ン!!」

 フィリップ、盛大な勘違いをしていたので誠心誠意の謝罪。心の中では「こんな商売してるんだから、誰でもその筋の人だと思うよね~?」とか言い訳してるけど……
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