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ケントとマラーク1

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ホーホーと夜行鳥が鳴いている。夜行鳥が夜更けに鳴くのは、異性の夜行鳥への求愛らしい。そんな鳴き声に紛れて、時々夜風で揺れる木々の葉の音が聞こえるくらい、静かな小さな村。

この村では、夜行鳥が鳴き始める頃には、人の話し声どころか人影すら滅多に見えない。そんな村にある木造りの倉庫で、何やらコソコソと人影が動いていた。

「へへっ……いいぜ──ケント」

壁穴のようなフェンス窓の隙間から差し込む月光を背に、男は言葉を口にした。不遜な態度で木箱に座ったまま、赤いバンダナを巻いた黒髪の男は、その赤い瞳で何かを見下している。

寒くもないはずなのに、彼から漏れる息はどこか荒い。甘い霧のような吐息は、彼が見つめる先へと蒸発するように消えていく。

わずかに息を荒げながらも、男は不気味に右の頬を上げて笑みを浮かべる。その八重歯が、楽しそうという感情だけではなく、やや狂気のような感情をもどこか含ませているようだ。

大きく足を広げた赤いバンダナ男の股下で、1人の青年が媚びを売るように跪(ひざまず)いていた。

跪(ひざまず)いている男の髪は、ブラウン色の髪は細く短いはずなのに、ザラつきもなく艶やかで、その綺麗な髪質と比較的小さな体のせいか、青年のはずがどこか未発達な少年のような容姿をしている。そんな短い髪をさらに引き締めるかのように、青年の頭には緑模様のバンダナが巻かれていた。

濃いブラウン色の青年は、その小さな口から舌を出し、何かを舐めている。
赤いバンダナの男の足元で必死に咥えていたのは、硬直した男根──いわゆるペニス。

男根を咥えることに慣れていないのか、決してその舌使いは上手なものではなかった。だが濃いブラウン色の青年が自分のモノを黙って懸命に咥えている姿を、赤いバンダナの男は黙って見ている。まるで傲慢な悪党が大きく開き、自身の足元にいる下僕を見るような目つきで。
熱のこもった太い竿(さお)──そして竿から先っぽへとゆっくり舐め、小さい頬(ほほ)の中にその根をくわえこむのを、ただ──ただじっと見て楽しんでいた。

「ハッ……ったくサイコーだぜケント、テメェみたいなスケベ野郎が相棒になってくれてよ」

赤いバンダナの男が煽るように言葉を発すると、ブラウン色の短髪をした青年は咥えていたモノを口から大きく放し、上目遣いでどこか不服そうにマラークへと話す。

「……スケベ野郎って言うな、そんなんじゃない──マラーク」

「へぇー……ま、どっちでもいいけどよ。ほらよ、もっと気持ちよくしてくれや」

傭兵マラークはその大きな手で短い茶髪の頭を抑えるように、ケントの顔を持って自身のペニスへと近づけた。

ケント自身の唾液と、初めて舐めた男根の匂い。
普通ならえずいても仕方がないような匂いのはずだが、その匂いをなぜかケントの脳みそがいい匂いだと錯覚させたのか、ケントの口を引き寄せた。

ケントは無意識に自分のペニスを少しばかり固くしながらも、その小さい口で、再びマラークのペニスを咥え始めた。

「……へっ、やっぱスケベ野郎じゃねぇか」

マラークは自身の黒髪に巻かれた赤いバンダナを左手首でこすり上げ、嬉しそうな八重歯を見せた。
ケントの頭をなでながらも、気持ちのいい事を全てをケントに委ねるようにマラークは手を放し、目を閉じて天井へと顔を向けた。

(ったく本当にサイコーじゃねぇか。新人の面倒を見ろって言われた時はめんどくせぇって思ったけど──)

マラークはアゴを下げ、必死に自分のペニスを舐めるケントを見返した。

(まさかこうなるなんてな──せいぜい使ってやるよ、なぁ相棒)

マラークは両手でケントの頭を抱えこむように持ち抱え、まるでケントの顔をモノのように前後に振った。

「──んっ!?」

「……そろそろイクわ──お望み通り……俺の精液──飲ませてやるぜッ……!」

呼吸が荒くなると、マラークはどこか引きつったような余裕のなさと、どこか不敵な笑みの混じった表情でケントを見続けている。

(くそ……やっぱマラークは無茶するなッ……!)

「──出るぜッ」

マラークの根のスジが張り詰めるとともに、その先端から口の中へと粘り強く、異常に濃い液体が勢いよく喉へと飛び出した。

「んんッ──」

その初動でさえ尋常じゃない量なのに、何度も自分の喉へと発射されるマラークの精液。
初めて受け入れる男の精液にケントはむせかけたが、涙目になりながらも必死に我慢をしてそれを受け入れた。
口の中で何度も何度も根元(ねもと)が生々しく脈を打ち、その度に口の中がマラークの精液に犯されてるようだった。

「……ふぅ……あー……大量に出ちまったわ」

そうマラークが言うと、ケントはゆっくりと口から精液がもれないように力を入れながら口からペニスを抜いた。

(口の中に……これマラークの──精液……すごい量──)

「ほら、飲むんだろ?俺の精液。見ててやっから飲みこめや」

男の精液なんて飲み込めるはずがない。飲み込む事もない。今日の今日まで人生の選択肢にあるなんて微塵も思っていなかった。しかしここは異世界であり、精液を飲ませてくれと頼んだのは他でもないこのケント自身なのだ。
ケントの口の中にある精液の匂いが鼻へ、そして肺の中に満たされていく。その原因となるネバり気の強い液体を、意を決してゴクリと一気に飲み込んだ。

粘り気のある濃いマラークの精液が、ケントの喉を通って腹の中に流れていく。子を作るためのマラークの精液が、ケントの体内になだれ込んでいった。

「……マジで飲んだのかよ」

「ハァ……ハァ……なんか……変な感じ。でも……なんかこう──魔力が巡ってるような気がする」

「へぇ、マジでユニーク持ってんだな。オマエ、なら──明日も俺の精液飲ませてやろうか?」

「──え?」

「どうすんだァ?」

「……ああ」

「へっやっぱスケベ野郎だなオマエ」

そうご機嫌そうにマラークが言うと、ケントに顔を近づけて耳元でささやいた。

「いいぜぇ?俺の精液、全部お前に飲ませてやるよ」

マラークの悪魔のささやくような擦れた声。その言葉に、ケントは寒気のような興奮のような、今までにない感覚を覚えた。

「じゃあな、相棒」

ケントとすれ違うようにマラークは、こちらを振り返る事もなく右手をヒラヒラさせながら倉庫から立ち去っていった。

ケントは、倉庫で一息つきながらも、マラークの精液が自分の魔力へと成った感覚に浸っていた。しかしケントは別の変化にはまったく気づいていなかった。
自身の男根からほんの少しだけ、なぜか先走った液体が出ていた事を──


倉庫を出ふとると、ケントは寝床に戻るための土道をゆっくりと歩いた。
ケントは自身の手を見つめると、血液だけじゃない何かが巡っているのか、自身の体の変化に高揚していた。いままでケントが持ちえなかった魔力という感覚。
ケントが、あのマラークに頭を下げて精液を飲ませてほしいと、意を決して頼んだ理由──それはケントだけが持つユニークスキル。他人の精液を自分の魔力に変換できる『精変換』にあった。

そのスキルの存在を知ったのが半年前──傭兵団や村の者達は誰も知らないが、半年前にケントは現実からこの異世界転移した。しかしその条件の特異性からか、今の今までケントは一度たりとも使った事も相談する事もできなかった。

ケントが所属する『サンダーライト傭兵団』。
同じくサンダーライト傭兵団の相棒──傭兵マラークに恥を忍んで頭を下げ、ケントは今日初めて『精変換』を発動させた。そこに至る手段こそ思っていたのと違ったが、それでも──いつもと違った変化にケントの感情は高ぶっていた。

しかしこの先、精液を欲する理由が『魔力を得るため』から、目的が徐々に変わっていくなんて、ケントは想像もしていなかった──


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