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こうへん。
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終わった。
無残にも俺の希望は秒で消え去った。
改めて否定する彼女を見る。
さっきとは明らかに表情や言い方が違う。
マジトーンで明らかに脈がなしって言っている。
ああ、おわったんだ。
頭の中が一気に空っぽになる感覚を覚える。
「すみません、僕トイレいってきます」
ギリギリ残ったHPを使い、のどを振り絞ってそう言う。
※※
どうやってやめようかな。
トイレの個室でそんなことを考える。
居酒屋のトイレが、本来の目的以外の用途で使われてしまうのはよくあることだが、組織からの退き方を考える場所として使われているのは世界初であろう。
扉越しに、会場で盛り上がる声が聞こえてくる。かすかに甲高い彼女の声も聞こえる気がした。
俺がいなくなった後もなお、否定し続けているのかと思うとつらかった。
目頭が熱くなる。
理由なんて考えても結果は変わらないのに、振られた理由を考えることばかりに頭を使ってしまう。ラインもしていたしこの前は、初めて2人で帰った。
なのに。
2週間前の大和大学との対外試合中に突き指をしてしまい、もちろん俺は途中交代した。
かっこいいところを先輩に見せたかった俺は、泣く泣く向かった病院への岐路でコンビニに寄り、大好きなアルフォートを買って気分を誤魔化した。
すると、一口つまみながら店の外を出たところで、偶然先輩に会った。
試合中のはずなのに何故かその場にいる先輩に俺はどうしたのか尋ねた。
「ちょっと、急用できちゃって・・・・笑」
しかし急用で帰宅しているはずだった先輩は、断る俺を無視してついてきた。
「マネージャーとして、部員を病院に連れて行くのは当然でしょ?」
俺だって一緒に来てほしかったけど、急用があるならそっちを優先して欲しいし、何より申し訳ない。でも先輩は後にずらせるから大丈夫だと言い張る。
理由はどうあれ、好きな人と2人でいれることの喜びが他の感情の全てを凌駕してしまった。だから俺は先輩と2人で帰った。
でも今になって思う。試合中に急遽できる予定ってなんなんだろう。
ああもうだめだ、考えれば考えるほど脈ありポイントばかり模索してしまう。
YouTubeで脈ありサインは調べても脈なしサインは調べようともしなかったつけが今回ってきてしまった。
「ん?」
扉をノックする音が聞こえる。カギをかけ忘れていた。
まだ、この場で落ち込んでいたかったが、だれが見てもどっちが優先かは明白だろう。とりあえず待たせるわけにもいかないので、足してもない用を流すために蛇口をひねり、扉を開けて外にでる。
「え・・・・・」
「あ・・・・」
そこには、先ほど俺の妄想ワールドに出演していた張本人が、気まずそうな顔をしてそこにいた。
「あ!! えっと、私も・・・トイレ!!」
「あ、なるほど・・・」
気まずい空気が流れる。
両者とも日本語ユーザーなのに言葉が出てこない。
先に気まずさに耐えられなかったのは先輩だった。そのまま、トイレに入っていこうとする先輩が口を開く。
「あのさ、さっきはごめんね」
「え?」
別に謝る必要なないだろう。
逆にそういう言葉が俺を苦しめることなんか彼女に分かりっこない。
と思いつつも二言目を待つ。
「えっと、その」
「さっきのは違うから」
死刑宣告のことだと分かりつつもとぼける。
「・・・・さっきですか?」
「うん、さっき”ない”って言っちゃったのは違うから」
え・・・・嘘だろ。
神様・・・・・・。
その瞬間地獄でさまよってた自分に聖ペトロが腕をさし伸ばしてくれたような気がして思わず勢いに任せて聞いた。
「じゃあ、違うならなんなんですか?(笑)」
「もう!うるさい!!自分で考えて!! バカっ!!」
先輩は顔を赤らめ、頬を膨らましてそう言い放ちトイレに入っていった。
こうして退部は無期限延期となり、俺は勝ち誇ったように席に戻っていった。
無残にも俺の希望は秒で消え去った。
改めて否定する彼女を見る。
さっきとは明らかに表情や言い方が違う。
マジトーンで明らかに脈がなしって言っている。
ああ、おわったんだ。
頭の中が一気に空っぽになる感覚を覚える。
「すみません、僕トイレいってきます」
ギリギリ残ったHPを使い、のどを振り絞ってそう言う。
※※
どうやってやめようかな。
トイレの個室でそんなことを考える。
居酒屋のトイレが、本来の目的以外の用途で使われてしまうのはよくあることだが、組織からの退き方を考える場所として使われているのは世界初であろう。
扉越しに、会場で盛り上がる声が聞こえてくる。かすかに甲高い彼女の声も聞こえる気がした。
俺がいなくなった後もなお、否定し続けているのかと思うとつらかった。
目頭が熱くなる。
理由なんて考えても結果は変わらないのに、振られた理由を考えることばかりに頭を使ってしまう。ラインもしていたしこの前は、初めて2人で帰った。
なのに。
2週間前の大和大学との対外試合中に突き指をしてしまい、もちろん俺は途中交代した。
かっこいいところを先輩に見せたかった俺は、泣く泣く向かった病院への岐路でコンビニに寄り、大好きなアルフォートを買って気分を誤魔化した。
すると、一口つまみながら店の外を出たところで、偶然先輩に会った。
試合中のはずなのに何故かその場にいる先輩に俺はどうしたのか尋ねた。
「ちょっと、急用できちゃって・・・・笑」
しかし急用で帰宅しているはずだった先輩は、断る俺を無視してついてきた。
「マネージャーとして、部員を病院に連れて行くのは当然でしょ?」
俺だって一緒に来てほしかったけど、急用があるならそっちを優先して欲しいし、何より申し訳ない。でも先輩は後にずらせるから大丈夫だと言い張る。
理由はどうあれ、好きな人と2人でいれることの喜びが他の感情の全てを凌駕してしまった。だから俺は先輩と2人で帰った。
でも今になって思う。試合中に急遽できる予定ってなんなんだろう。
ああもうだめだ、考えれば考えるほど脈ありポイントばかり模索してしまう。
YouTubeで脈ありサインは調べても脈なしサインは調べようともしなかったつけが今回ってきてしまった。
「ん?」
扉をノックする音が聞こえる。カギをかけ忘れていた。
まだ、この場で落ち込んでいたかったが、だれが見てもどっちが優先かは明白だろう。とりあえず待たせるわけにもいかないので、足してもない用を流すために蛇口をひねり、扉を開けて外にでる。
「え・・・・・」
「あ・・・・」
そこには、先ほど俺の妄想ワールドに出演していた張本人が、気まずそうな顔をしてそこにいた。
「あ!! えっと、私も・・・トイレ!!」
「あ、なるほど・・・」
気まずい空気が流れる。
両者とも日本語ユーザーなのに言葉が出てこない。
先に気まずさに耐えられなかったのは先輩だった。そのまま、トイレに入っていこうとする先輩が口を開く。
「あのさ、さっきはごめんね」
「え?」
別に謝る必要なないだろう。
逆にそういう言葉が俺を苦しめることなんか彼女に分かりっこない。
と思いつつも二言目を待つ。
「えっと、その」
「さっきのは違うから」
死刑宣告のことだと分かりつつもとぼける。
「・・・・さっきですか?」
「うん、さっき”ない”って言っちゃったのは違うから」
え・・・・嘘だろ。
神様・・・・・・。
その瞬間地獄でさまよってた自分に聖ペトロが腕をさし伸ばしてくれたような気がして思わず勢いに任せて聞いた。
「じゃあ、違うならなんなんですか?(笑)」
「もう!うるさい!!自分で考えて!! バカっ!!」
先輩は顔を赤らめ、頬を膨らましてそう言い放ちトイレに入っていった。
こうして退部は無期限延期となり、俺は勝ち誇ったように席に戻っていった。
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