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なな。
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やばい、心臓が。持たない。
さっきまで手なずけていたはずの心臓がリードをほどいて暴走し始める。
急いでスマホを取り出し、今年一高速でロックを解除してからホーム画面のスクロールを開始する。
あれっ・・・・。
さっきまで接近していたはずの足音が、聞こえない。
えっ。どういうことだ。
すぐに状況を確認したい気持ちでいっぱいだが、もし(ないと思うけど)おれの真後ろにでもいたら・・・と思うと今は我慢するしかない。
「 ———————————— 。」
「ぷはっ!」
どれくらいたっただろうか。息を止めて、体感30秒くらいは待ったはず。
もし仮に、真後ろにいたとしたら30秒以上音もたてずにその場で突っ立ってるのはさすがに不審者だよな。とは思うものの、万が一が怖い。流石にまた失敗したらおれはもう立ち直れんぞ。
何も出来ずに首は動かさず視線をチラチラさせていると、片手にもっていたスマホが目に入る。ホーム画面のスクロールを一時停止したことで、画面は真っ黒になっていた。
画面に反射する自分とにらめっこするように、考える。
あっ。
俺は天才か!!!
エジソン顔負けのスピードでひらめいた案をすぐに行動に移すべく、スマホの画面を両手でもったまま両肘をゆっくりと近づけていく。
端末の位置が肩より高くなったところでおそるおそる、目線だけ画面にもっていく。
い・・・・いない・・・・
嬉しいよな、悲しような、とりあえず一切のリスクはなくなったので肉眼でも再度確認してみる。
いない。 が・・・・
一番理想としていた状況にはならなかったものの、一番危惧していた恐ろしい状況にはならなかった。
つまり、耐えた・・・・が。
くそっ~~。
何やってんだおれ。ほんの十数分前の自分が恨めしい。
学生たちがうるさい。そんなことどうでもいいやんけ。勉強するわけでもないし、ホーム画面なんか断崖絶壁でもスクロールできるやろうがい。リサーチ一週目で迷わず避けていた席についている自分を想像して思わず天を仰ぐ。
でもまあ、これでもしテイクアウトとかだったらさすがに泣いてたのでとりあえずよしとしよう。
んーーーー。
夢のような状況により暴走していた心臓も、世の中思うようになんか行かないよねとも思える出来事が重なったことで中和され、ひとまず落ち着き平静を保ち始める。
しかし、この後は一体どうするべきなのだろうか。
「何もしない」というのは一度消え去った希望を、ドラマのように蘇らせてくれた神様に面目立たないのでありえない。とはいうものの、ナンパスキルなんかないし、研修中同じ班の女子にもろくに話しかけられないおれに選択肢なんかないのは明白だった。「一緒の会社」という共通点があるはずの同期でさえ話せないのに、共通点なんか「人」以外なんもない相手に話しかけられるわけがない。
「ああ、人なんですか!? 奇遇ですね! おれもなんですよ!」
ありえない。「人なんですか」は失礼すぎるやろ。やっぱり無理だ。だいたい、あんな学生たちが騒ぐ場所でナンパなんかしてみろ。馬鹿にされるだけならまだしも(普通にきつい)、バズって一生デジタルタトゥーだぞ。
ん。
てことは、タイムマシンがあったら座るだろう場所に元々いたとしても結果は同じはずだし、おれの選択はあながち間違えてはないのか。むしろ、近くにいたら色んな意味で平静を保てるわけがないので冷静な判断ができなかったかもしれない。
「ちっ。」
一人で納得していたものの、またおれの悪い癖が露呈したことに苛立ちを覚える。
おれの恋愛はいつもそうだった。いい感じだと友達に言われたことはこれまで何回もあった。なのに一度も自分から行動したことがない。高校の時できた彼女は、ほとんど受け身だった。デートを誘ってくれたのも向こう、告白したのももはや向こう。
「わたし、いつでもまってるから!」
そんなんほぼ告白ですやん。中学、高校では幸いなことに「クラス」という組織があったので自分から行動せずともある程度は誰でも知り合うことができた。しかし、大学という開かれた場所に解き放たれたことで、おれの弱さは見事に浮彫になってしまった。
とりあえず、スマホの電源をつける。迷わず赤い色の再生アイコンをタップし、検索バーが出てきたところで手を止めて考える。
自分の知っている知識で考えても何も生まれないのは明白だったので、とりあえず有識者の意見を聞いてみることにする。今の時代は非常に便利だ。分からないことがあったらすぐにスマホで調べれば一瞬で答えが出てくる。なんでも教えてくれるパーフェクト先生がすぐ近くにいつもいるようなもの。しかも、余計なプライドを身に纏っているおれからすると、気兼ねなく聞けるのもありがたい。友達とかに相談すると、「え?どうしたん?笑 なんかあったん?」と相談にのった対価を求められる。相談したことで自分への認識を少なからず変更させてしまうのもなんか嫌だった。そんなこんなで、今まで「恋愛」について人に相談するということをずっと躊躇ってきた。そう考えると、昔の人はどうやって恋愛をこなしていたのか。おれみたいなやつは、一体どうやって乗り切ったのか。想像が付かないということは、おそらくお先真っ暗だったことを想像するとあまりの恐ろしさに思わずゾッとする。
そんなこんなで、検索バーに「恋愛 上手くいく」と打ち込みおすすめ表示されたトップ動画をタップしてみる。
『こんにちは! 恋愛になやむ、奥手男子のみなっ』
「うわっ!」
さっきまで手なずけていたはずの心臓がリードをほどいて暴走し始める。
急いでスマホを取り出し、今年一高速でロックを解除してからホーム画面のスクロールを開始する。
あれっ・・・・。
さっきまで接近していたはずの足音が、聞こえない。
えっ。どういうことだ。
すぐに状況を確認したい気持ちでいっぱいだが、もし(ないと思うけど)おれの真後ろにでもいたら・・・と思うと今は我慢するしかない。
「 ———————————— 。」
「ぷはっ!」
どれくらいたっただろうか。息を止めて、体感30秒くらいは待ったはず。
もし仮に、真後ろにいたとしたら30秒以上音もたてずにその場で突っ立ってるのはさすがに不審者だよな。とは思うものの、万が一が怖い。流石にまた失敗したらおれはもう立ち直れんぞ。
何も出来ずに首は動かさず視線をチラチラさせていると、片手にもっていたスマホが目に入る。ホーム画面のスクロールを一時停止したことで、画面は真っ黒になっていた。
画面に反射する自分とにらめっこするように、考える。
あっ。
俺は天才か!!!
エジソン顔負けのスピードでひらめいた案をすぐに行動に移すべく、スマホの画面を両手でもったまま両肘をゆっくりと近づけていく。
端末の位置が肩より高くなったところでおそるおそる、目線だけ画面にもっていく。
い・・・・いない・・・・
嬉しいよな、悲しような、とりあえず一切のリスクはなくなったので肉眼でも再度確認してみる。
いない。 が・・・・
一番理想としていた状況にはならなかったものの、一番危惧していた恐ろしい状況にはならなかった。
つまり、耐えた・・・・が。
くそっ~~。
何やってんだおれ。ほんの十数分前の自分が恨めしい。
学生たちがうるさい。そんなことどうでもいいやんけ。勉強するわけでもないし、ホーム画面なんか断崖絶壁でもスクロールできるやろうがい。リサーチ一週目で迷わず避けていた席についている自分を想像して思わず天を仰ぐ。
でもまあ、これでもしテイクアウトとかだったらさすがに泣いてたのでとりあえずよしとしよう。
んーーーー。
夢のような状況により暴走していた心臓も、世の中思うようになんか行かないよねとも思える出来事が重なったことで中和され、ひとまず落ち着き平静を保ち始める。
しかし、この後は一体どうするべきなのだろうか。
「何もしない」というのは一度消え去った希望を、ドラマのように蘇らせてくれた神様に面目立たないのでありえない。とはいうものの、ナンパスキルなんかないし、研修中同じ班の女子にもろくに話しかけられないおれに選択肢なんかないのは明白だった。「一緒の会社」という共通点があるはずの同期でさえ話せないのに、共通点なんか「人」以外なんもない相手に話しかけられるわけがない。
「ああ、人なんですか!? 奇遇ですね! おれもなんですよ!」
ありえない。「人なんですか」は失礼すぎるやろ。やっぱり無理だ。だいたい、あんな学生たちが騒ぐ場所でナンパなんかしてみろ。馬鹿にされるだけならまだしも(普通にきつい)、バズって一生デジタルタトゥーだぞ。
ん。
てことは、タイムマシンがあったら座るだろう場所に元々いたとしても結果は同じはずだし、おれの選択はあながち間違えてはないのか。むしろ、近くにいたら色んな意味で平静を保てるわけがないので冷静な判断ができなかったかもしれない。
「ちっ。」
一人で納得していたものの、またおれの悪い癖が露呈したことに苛立ちを覚える。
おれの恋愛はいつもそうだった。いい感じだと友達に言われたことはこれまで何回もあった。なのに一度も自分から行動したことがない。高校の時できた彼女は、ほとんど受け身だった。デートを誘ってくれたのも向こう、告白したのももはや向こう。
「わたし、いつでもまってるから!」
そんなんほぼ告白ですやん。中学、高校では幸いなことに「クラス」という組織があったので自分から行動せずともある程度は誰でも知り合うことができた。しかし、大学という開かれた場所に解き放たれたことで、おれの弱さは見事に浮彫になってしまった。
とりあえず、スマホの電源をつける。迷わず赤い色の再生アイコンをタップし、検索バーが出てきたところで手を止めて考える。
自分の知っている知識で考えても何も生まれないのは明白だったので、とりあえず有識者の意見を聞いてみることにする。今の時代は非常に便利だ。分からないことがあったらすぐにスマホで調べれば一瞬で答えが出てくる。なんでも教えてくれるパーフェクト先生がすぐ近くにいつもいるようなもの。しかも、余計なプライドを身に纏っているおれからすると、気兼ねなく聞けるのもありがたい。友達とかに相談すると、「え?どうしたん?笑 なんかあったん?」と相談にのった対価を求められる。相談したことで自分への認識を少なからず変更させてしまうのもなんか嫌だった。そんなこんなで、今まで「恋愛」について人に相談するということをずっと躊躇ってきた。そう考えると、昔の人はどうやって恋愛をこなしていたのか。おれみたいなやつは、一体どうやって乗り切ったのか。想像が付かないということは、おそらくお先真っ暗だったことを想像するとあまりの恐ろしさに思わずゾッとする。
そんなこんなで、検索バーに「恋愛 上手くいく」と打ち込みおすすめ表示されたトップ動画をタップしてみる。
『こんにちは! 恋愛になやむ、奥手男子のみなっ』
「うわっ!」
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