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「魔王を滅ぼした者には、褒美として美しい我が姫を差し出そう」

 豊かな国の王女として産まれ、国一番と謳われる美貌を持ち、戦時中なので贅沢し放題とはいかなかったが不自由は何一つしなかった。そんな恵まれた第一王女アイリーンの人生は、王の一言でずるっと傾いた。


 勇者の活躍により幾つもの大部隊を退け、前線を上げ、魔王城への突入まであとわずか。劣勢から優勢へ、そして悲願の魔王討伐へ。勇者の、人類の勝利はもう目前!

 その知らせを喜びつつも、アイリーンの内心は複雑であった。戦争が終われば、王の宣言通り、勇者に差し出されてしまうのだから。
 美しすぎたのがいけなかったのだろうか、とアイリーンは勝手に決められた旦那にため息がこぼれる。同盟強化のために他国の王子に嫁ぐだろうとは幼いころから思っていたが、まさか神から啓示を受けた勇者が現れるなんて。
 
 王の宣言を聞くまではアイリーンだって勇者に労いの言葉をかけ、己に見惚れる勇者に特別に美しく微笑み返し、希望を預けたのに。まさか褒美扱いされるなんてこれっぽっちも思っていなかった。勿論アイリーンとて毎日神に平和を祈っているので、この戦争を終わらせてくれるならば勇者にだって何にだって嫁ぐしかあるまい。




 しかし。何十年も続く魔界と人間界の全面戦争に終止符を打ったのは、勇敢な勇者でもなく、歴戦の各国の騎士でもなく、魔王の側近である大公爵リシャール___悪魔だった。



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