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どうしたんだよ!?

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そして......

 みんなの転移が済み、俺がマグリットを転移させようとした時、マグリットがひどく転移を嫌がった。

「何処かへ、ふたりで逃げないか?」

 急に言い出したマグリットに俺は困惑した。

「なんでだよ?僕は王都に戻るよ。僕だって決着をつけなきゃいけないんだ」

 言い切って魔方陣を描く俺の腕をマグリットが強く掴んだ。

「公爵と対峙するなんて無茶だ」

「無茶は承知だよ」

 構わず、俺は魔方陣を完成させた。詠唱によって陣がまばゆく光りだした。

「行くの?行かないの?」

「君が行くなら、行く」

 渋るマグリットとともに転移した先生の家は.......なぜか騎士団に囲まれていた。
 中心にいたのは......トニー兄さんだった。

「な......ぜ?」

 呆然とする俺にレイトン先生が淡々と言った。

「読まれていたみたいだね。それとも情報が漏れていたか.....」

「まさか、クリスが?」

 歯噛みするアントーレに先生は小さく首を振り、すっと腕を伸ばした。

「君だよね。ルードヴィヒ君」

 杖に手を伸ばす暇もなく、ルードヴィヒの身体は先生の魔術で捕獲された。

「ルー、なぜ......?」

 驚愕して言葉を失う俺に、先生が静かに言った。

「私達が旅立つ前、彼らはそれぞれの上司に謁見している。その時に何かを指令されていてもおかしくはない。......ルードヴィヒ君が私達に隠れて使い鳥を飛ばすのを、ウチのドローンカラスがキャッチしている」

「僕はただ......報告を入れるよう指示されていただけです」

 光の輪の中でもがきながら、ルードヴィヒが言った。

「そうだろうね。......ラフィアンがサイラス家と敵対するとは思ってはいなかったからね。最後の使い鳥は転移することを決めた直後だろう?」

 ルードヴィヒは唇を噛んで項垂れた。

「だって父さんの......」

「そう。ワグナー先生はサイラス家との関わりが深い。人質みたいにされる可能性もあった」

 ルードヴィヒは小さく頷いた。
 直後に、マグリットが腰から鞘ごと剣を外し、アントーレの前に膝をついた。

「申し訳ございません、殿下」

「マグリット?」

「俺は、殿下を亡き者にするように命じられておりました。けれど、やはり出来なかった......」

 やはり項垂れるマグリットに、俺は呆然とした。

「なぜ?マグは、僕をちゃんと守っていたじゃないか!?」

「君を守ることと、私を排除することは矛盾しないよ。ラフィ」

 アントーレが小さく首を振った。

「けれど、マグリットは私に向かって剣を抜くことはしなかった。ダンジョンでもあの隠れ家でも、いくらでも私を殺すことはできた。でもしなかった」

アントーレの言葉に、マグリットがはっ......と頭を上げた。

「彼の......君への愛も帝国への忠誠も本物だよ」

 アントーレの言葉に耐えきれなくなったのか、マグリットは、苦しげに真相を吐露した。

「殿下を亡き者にして、ラフィを連れて逃げろ......と。ほとぼりが覚めたら、ラフィと結婚させてくれるって......トリスタン閣下が......」

「トニー兄さんが?」

 俺は地面が崩れ落ちる音を聞いた気がした。その場に崩れ落ちそうな身体をアントーレが抱き止めた。

「それは嘘だな」

 ふっと目をやると、エメルさんが立っていた。

「お前が命令を実行したら、お前は王子を殺して婚約者を奪って逃げた罪人として殺されるだけだ」

 エメルさんの言葉が突き刺さる。

「でも何故そうまでしてアントーレを......」

 幼い子供の俺達を婚約させたのは父親だ。

「アントーレ、ジラルド様が病で急死された。三月前だ」

「ジラルド様が?」

 エメルさんの言葉にアントーレが目を見開いた。ジラルド様は確か、ウィスタリア殿下の配偶者だ。サイラス家と並ぶマーラー帝国の有力者、ナジェスタ家の出身だ。

「おそらくは.......毒殺だ。サイラス公爵がとうとう牙を剥いたな」

 つまり、俺を皇太子のパートナーの後釜に据えるために、アントーレが邪魔になった......というのか。

「なぜ!?父はそんな人じゃない!」

 喚く俺を制して、エメルさんが厳しい顔で言った。

「黒幕がいる、と言ったろう?」

「それはともかく......この包囲をなんとかしないと」

 トニー兄さんは強い。戦って正面突破は難しい。だが、もう一度、転移するだけの体力は無い。

「なに、心配はいらない。もうすぐ迎えがくる」

 エメルさんがニヤリと笑った。
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