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第二章 さらば愛しき日々
第25話 逃亡失敗~あり得ない.真実 ~
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まさしく俺はどん底だった。三日経って両手の拘束は外されたが、散々に抱き潰された身体は指先ひとつ動かすことすら出来ないほど疲弊していた。だが心はそれ以上に打ちひしがれていた。
ーヤツは俺が俺であることを知っていた。知っていて.....ー
犯して、辱しめた。俺がその事を責め立てると、ヤツはせせら笑いながら言った。
『当然だろう......。お前がお前でなければ、躾ける意味が無い』
『何だと....! 』
ヤツは、力の入らない俺の両脚を無造作に押し広げながら言った。
『私は弱い者に興味は無い。.....強い者が屈する姿にこそ感動するんだ。.....こうして、な』
『や、止めろ!......ひっ.......ひあっ...あくっ!...』
ヤツの指が容赦なく俺の中に潜り込み、敏感な痼を押し潰し擦りたてた。額に汗が沸き、喉が競上がる。
『すっかり前立腺の快感を覚えたようだな』
冷徹な笑みが否応なしに沸き上がる快感に身を捩る俺を見下ろしていた。ヤツはひとしきり俺のそこを弄び、するりと指を抜いた。昇りつめる寸前で放り出されたそこは、更なる快感を求めて、じくじくと疼き、蠢いていた。
ヤツは入り口の襞を指先で極めてソフトに撫で回し、腹の奥を焼いて渦巻く熱を煽りたてる。
『欲しいか.....ん?...』
屈辱と切なさに涙が滲んだ。俺は、半ば崩れ落ちそうな意識を奮い起こし、ヤツに叫んだ。
『こんなことのために、俺をこの身体に入れたのか?.....元の俺では、抱く気にならなかったから、あのガキの身体を使って...!』
『それは違うな』
ヤツはくっと喉元で笑うと俺の唇に口づけた。ひんやりとしたそれが、かすかに熱を帯びていた。
『元のお前でも、この手に捕らえられるなら、捕らえていた。そうしたら、もっと厳しく躾けてやったのに......。周りの連中に邪魔をされてな。......お前を殺すしかなかったのは、実に不本意だった』
ヤツは、ふと俺の身体から離れると、椅子に無造作に引っ掛けたジャケットから何かを取り出した。
『大事なものだろう?.....返してやろう』
枕元にぽ...んと放り投げられたものを見て、俺は目を見張った。
それは、ZIPPOのオイルライターだった。オイルはとっくに切れて石もすり減って使い物にはならなかったが、俺はオヤジの形見のそれを肌身離さず持っていた。何の飾りもない金属の塊を鏡のように磨いて、街の景色を映して見るのが好きだった。が、目の前にあるそれは、真ん中がひどくひしゃげて、大きな穴が開いていた。かなりの衝撃が加わった跡.....だ。
ーオヤジ......ー
『そいつに感謝するんだな。私の放った弾丸は、そいつに阻まれて、お前の心臓まで届かずに止まった。......まぁ、おかげで私もお前を手に入れることができたのだから、幸運だった。しかも、同時にあの少年が天から降ってきたんだ。神様の思し召しとしか思えまい?』
ミハイルは硬直する俺の頬を撫で上げて囁いた。その眼に宿る狂気を見留めて俺は身を竦ませた。それは、間違いなく狂気だった。
『だからって入れ替えるなど.....そんなことが.....あり得ない!』
そら恐ろしさに唇を震わせながら呟く俺の耳許で、ヤツは可笑しそうに喉を鳴らして言った。
『世の中にはそういうーあり得ないことーの出来る奴がいるらしくてね。......私もペテンかと思っていたんだが、試しにやらせたら、成功してしまったのさ。もっとも、二人とも仮死状態に近い状態で魂とやらが抜けかかっていたからできた.....のだそうだ』
『そんな.....そんな馬鹿なことが!』
なおも首を振る俺に畳み掛けるようにヤツは言った。
『香港にはそういう怪しげな奴が結構いるらしいじゃないか。道士とかと名乗って客から大枚を巻き上げている奴が......』
客から始末を頼まれてね.....とヤツは言った。
『そいつが日本に逃げていたのが、私の幸運だった。お前には不運だったか幸運だったかはわからないが.....とにかくあっさり消すのも面白くないので、お前を殺るまでは生かしておくつもりだった』
『何だと?』
『色々と術というものがあると言っていたが...まぁ、ベストな結果だな』
『ベストだと.....!?』
『昏睡から覚めた後、お前が入ったのを確信した時、私は感動したよ。治療ついでに早々にマイクロチップも埋め込んだ.....今度こそ、私のものにするために.....な』
『ミハイル、お前......! 』
なおも猛ろうとする俺をシーツの上に捩じ伏せて、ヤツが笑った。
『お喋りは終わりだ、ラウル.....。いい声で啼くのを聞かせてくれ』
俺はひしゃげたZIPPO を握りしめ、オヤジに詫びながら昇りつめ、気を失った。
直前にヤツが嘯いた言葉に、奈落に突き落とされて、俺の理性は完全に崩壊した。
『心配するな、道士は始末した。......お前の秘密を知るものは誰もいない』
私だけだ……と囁くその声にふとある面影が浮かんで、消えた。泣きそうな怒っているような……。
ああ、あれは……。
ーヤツは俺が俺であることを知っていた。知っていて.....ー
犯して、辱しめた。俺がその事を責め立てると、ヤツはせせら笑いながら言った。
『当然だろう......。お前がお前でなければ、躾ける意味が無い』
『何だと....! 』
ヤツは、力の入らない俺の両脚を無造作に押し広げながら言った。
『私は弱い者に興味は無い。.....強い者が屈する姿にこそ感動するんだ。.....こうして、な』
『や、止めろ!......ひっ.......ひあっ...あくっ!...』
ヤツの指が容赦なく俺の中に潜り込み、敏感な痼を押し潰し擦りたてた。額に汗が沸き、喉が競上がる。
『すっかり前立腺の快感を覚えたようだな』
冷徹な笑みが否応なしに沸き上がる快感に身を捩る俺を見下ろしていた。ヤツはひとしきり俺のそこを弄び、するりと指を抜いた。昇りつめる寸前で放り出されたそこは、更なる快感を求めて、じくじくと疼き、蠢いていた。
ヤツは入り口の襞を指先で極めてソフトに撫で回し、腹の奥を焼いて渦巻く熱を煽りたてる。
『欲しいか.....ん?...』
屈辱と切なさに涙が滲んだ。俺は、半ば崩れ落ちそうな意識を奮い起こし、ヤツに叫んだ。
『こんなことのために、俺をこの身体に入れたのか?.....元の俺では、抱く気にならなかったから、あのガキの身体を使って...!』
『それは違うな』
ヤツはくっと喉元で笑うと俺の唇に口づけた。ひんやりとしたそれが、かすかに熱を帯びていた。
『元のお前でも、この手に捕らえられるなら、捕らえていた。そうしたら、もっと厳しく躾けてやったのに......。周りの連中に邪魔をされてな。......お前を殺すしかなかったのは、実に不本意だった』
ヤツは、ふと俺の身体から離れると、椅子に無造作に引っ掛けたジャケットから何かを取り出した。
『大事なものだろう?.....返してやろう』
枕元にぽ...んと放り投げられたものを見て、俺は目を見張った。
それは、ZIPPOのオイルライターだった。オイルはとっくに切れて石もすり減って使い物にはならなかったが、俺はオヤジの形見のそれを肌身離さず持っていた。何の飾りもない金属の塊を鏡のように磨いて、街の景色を映して見るのが好きだった。が、目の前にあるそれは、真ん中がひどくひしゃげて、大きな穴が開いていた。かなりの衝撃が加わった跡.....だ。
ーオヤジ......ー
『そいつに感謝するんだな。私の放った弾丸は、そいつに阻まれて、お前の心臓まで届かずに止まった。......まぁ、おかげで私もお前を手に入れることができたのだから、幸運だった。しかも、同時にあの少年が天から降ってきたんだ。神様の思し召しとしか思えまい?』
ミハイルは硬直する俺の頬を撫で上げて囁いた。その眼に宿る狂気を見留めて俺は身を竦ませた。それは、間違いなく狂気だった。
『だからって入れ替えるなど.....そんなことが.....あり得ない!』
そら恐ろしさに唇を震わせながら呟く俺の耳許で、ヤツは可笑しそうに喉を鳴らして言った。
『世の中にはそういうーあり得ないことーの出来る奴がいるらしくてね。......私もペテンかと思っていたんだが、試しにやらせたら、成功してしまったのさ。もっとも、二人とも仮死状態に近い状態で魂とやらが抜けかかっていたからできた.....のだそうだ』
『そんな.....そんな馬鹿なことが!』
なおも首を振る俺に畳み掛けるようにヤツは言った。
『香港にはそういう怪しげな奴が結構いるらしいじゃないか。道士とかと名乗って客から大枚を巻き上げている奴が......』
客から始末を頼まれてね.....とヤツは言った。
『そいつが日本に逃げていたのが、私の幸運だった。お前には不運だったか幸運だったかはわからないが.....とにかくあっさり消すのも面白くないので、お前を殺るまでは生かしておくつもりだった』
『何だと?』
『色々と術というものがあると言っていたが...まぁ、ベストな結果だな』
『ベストだと.....!?』
『昏睡から覚めた後、お前が入ったのを確信した時、私は感動したよ。治療ついでに早々にマイクロチップも埋め込んだ.....今度こそ、私のものにするために.....な』
『ミハイル、お前......! 』
なおも猛ろうとする俺をシーツの上に捩じ伏せて、ヤツが笑った。
『お喋りは終わりだ、ラウル.....。いい声で啼くのを聞かせてくれ』
俺はひしゃげたZIPPO を握りしめ、オヤジに詫びながら昇りつめ、気を失った。
直前にヤツが嘯いた言葉に、奈落に突き落とされて、俺の理性は完全に崩壊した。
『心配するな、道士は始末した。......お前の秘密を知るものは誰もいない』
私だけだ……と囁くその声にふとある面影が浮かんで、消えた。泣きそうな怒っているような……。
ああ、あれは……。
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