上 下
24 / 50
二 通小町

巡り合いて......(一)

しおりを挟む
 怒涛の夏休みが終わり、学校が始まった。

「うっす!」
 
「おはよー!」

 俺は休み前より十分早く家を出て学校に向かう。
 夏祭りの時の菅原先生との約束で遅刻するわけにはいかない。菅原先生にリアルに雷落とされたら堪らない。
 水本はインターハイ前の朝練が始まり、先に学校に行ってる。

「おはよう、小野君」

 菅生と篠原、安達が揃ってこっちにやってくる。

「あ、色々ありがとうね」

「いや別に......。元気か?菅生んとこも」

「うん。大丈夫」

「お姉ちゃん、お礼言ってた。よろしく伝えてって」

 二人が口々に言うのを安達もにこにこして見ていた。

「今日は水本君は?」

「バスケの朝練。インターハイ近いだろ?」

「あ、そっか」

 ケラケラ笑う三人娘。元気になって良かったよ。

 四人で喋りながら、通学路を歩いていたんだけど、

 なんか妙なんだよね。
 いや菅生達じゃなくて、背後が。なんか視線を感じるんだ。
 でも、振り向くと誰もいない。

ーなんだ?ー

 何回も振り向いたけど、やっぱり誰もいない。

「おはようございまーす」

「うん、時間厳守でよろしい」

 校門の前でいつも通り仁王立ちしている菅原先生に挨拶して校内に入ると、気配は消えた。

 そう言えば、馬頭さんが妙な気配がするって言ってたな。
 
 それに平泉から帰ってきてから、松尾のじいちゃんから手紙が来てた。義雄さん達がお礼を言ってたって報告なんだけど、最後にP.S.で背後に気をつけろって書いてあった。
 俺はそっち系じゃないし、そっち系の友達もいないから、たぶんそういう意味じゃなくて......なんだろうな。

 あ、ちなみに追試は無事クリアなんだけど、小野崎先生てば、休み明けたら小テストやるから、って不気味な前振りしてたな。
 どこまでスパルタなのよ、先生。



「おっはよ、コマチ。よくひとりで学校来れたな。えらいえらい」

「俺は小学生か!」

 教室に入ると、先に席に着いていた水本に頭をぐしゃぐしゃされた。止めんかい!セットが乱れるわ。
 と、ふっと教室の外に一瞬あの気配がした。が、ガラリと扉が開くと同時に消えた。

「みんなおはよう!」

「おはようございます」

 立花先生、相変わらず髪の毛スゴいっすね。あ、でもちょっと短くなってる。白衣もパリッと......。

『立花先生、恋人出来たみたいよ、休み中に』

 斜め後ろの安達がサクッと情報提供。それは目出度い。三十路のうちに春が来て良かったね先生。

「静かに!」

 なんとわなしに顔を赤らめながら、先生が咳払い。

「今学期から新しくクラスメートが増える。......入ってきなさい」

 先生が廊下の方に目をやると、男子生徒がおずおずと教室に入ってきた。

「新しく転入してきた深草くんだ。仲良くしてやってくれ」

 長身スリムなメガネ男子に女子の目がキラリ、いやギラリと光った。

「深草陸海むつみです。よろしくお願いします」

 ちょっと気弱そうな草食系のインテリって感じのニューフェイスに女子のテンションが上がって、男子のテンションはちょい下がりぎみ。まあでも好感度高めかもな。陰キャっぽいけど。

「席は.......そうだな。窓際の一番後ろが空いてたな。深草くんは視力は大丈夫か?」

「大丈夫です」

 先生の問いかけにニッコリ笑顔で返す深草くん。
 でも、指定された席に向かう彼の目線が俺とぶつかった時、なんか背筋がぞわっとした。

「よろしく」

って顔は笑顔なんだけど、目が怖い。

 

 でもまぁ、慣れてないから緊張してるのかな?と俺は特にも気にかけなかった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

JKがいつもしていること

フルーツパフェ
大衆娯楽
平凡な女子高生達の日常を描く日常の叙事詩。 挿絵から御察しの通り、それ以外、言いようがありません。

魔界最強に転生した社畜は、イケメン王子に奪い合われることになりました

タタミ
BL
ブラック企業に務める社畜・佐藤流嘉。 クリスマスも残業確定の非リア人生は、トラックの激突により突然終了する。 死後目覚めると、目の前で見目麗しい天使が微笑んでいた。 「ここは天国ではなく魔界です」 天使に会えたと喜んだのもつかの間、そこは天国などではなく魔法が当たり前にある世界・魔界だと知らされる。そして流嘉は、魔界に君臨する最強の支配者『至上様』に転生していたのだった。 「至上様、私に接吻を」 「あっ。ああ、接吻か……って、接吻!?なんだそれ、まさかキスですか!?」 何が起こっているのかわからないうちに、流嘉の前に現れたのは美しい4人の王子。この4王子にキスをして、結婚相手を選ばなければならないと言われて──!?

残念な女教師と笑わない僕

藍染惣右介兵衛
ミステリー
 【僕の先生はグラマーな和風美人。だけど、残念系!】  それは恋なのか、変なのか……  それは性なのか、聖なのか……  容姿端麗な新米女教師と笑わない少年が紡ぐ物語。  学内や学外で起こる様々な出来事を解決していく二人。 教師と生徒という立場を乗り越えて愛が芽生えるのかそれとも…… 「咲耶君……パンツを脱がせてほしいの」 「前からなら脱がせます」 「お尻より前が見たいの? エッチだなぁ」 「爆風に巻き込まれないための予防策ですよ」  僕は美咲先生のパンツをゆっくりと引きおろす……  そしてまた、今夜も夢の中でアイツが出てくる…… まるで僕の欲望を写し出す鏡のように。 【※一旦、完結させています】

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

虚像のゆりかご

新菜いに
ミステリー
フリーターの青年・八尾《やお》が気が付いた時、足元には死体が転がっていた。 見知らぬ場所、誰かも分からない死体――混乱しながらもどういう経緯でこうなったのか記憶を呼び起こそうとするが、気絶させられていたのか全く何も思い出せない。 しかも自分の手には大量の血を拭き取ったような跡があり、はたから見たら八尾自身が人を殺したのかと思われる状況。 誰かが自分を殺人犯に仕立て上げようとしている――そう気付いた時、怪しげな女が姿を現した。 意味の分からないことばかり自分に言ってくる女。 徐々に明らかになる死体の素性。 案の定八尾の元にやってきた警察。 無実の罪を着せられないためには、自分で真犯人を見つけるしかない。 八尾は行動を起こすことを決意するが、また新たな死体が見つかり…… ※動物が殺される描写があります。苦手な方はご注意ください。 ※登場する施設の中には架空のものもあります。 ※この作品はカクヨムでも掲載しています。 ©2022 新菜いに

一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!

当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。 しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。 彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。 このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。 しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。 好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。 ※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*) ※他のサイトにも重複投稿しています。

駒込の七不思議

中村音音(なかむらねおん)
ミステリー
地元のSNSで気になったこと・モノをエッセイふうに書いている。そんな流れの中で、駒込の七不思議を書いてみない? というご提案をいただいた。 7話で完結する駒込のミステリー。

処理中です...