31 / 37
最低なクリスマス
しおりを挟む
アントーレ王子と主人公クリスのカップルはなかなか上手くいってるようでひと安心。外野があれこれ言ってますが、気にしない。
今年のクリスマスは楽しく過ごせそう。
と思ったら王宮から呼び出しが来ちゃったよ、おい。
召集令状、じゃなかった招待状の送り主は、なんと皇太子ウィスタリア殿下。バックレる訳にもいかないんで、大人しく参上いたします。
俺をドナドナしていくのは、殿下の御学友でもあるスゥエン兄さん。逃げられるわけないでしょ?
一張羅の深紅のベルベットのスーツに身を包み......って一張羅なわけじゃないんだけど、スゥエン兄さんが大至急で仕立てさせたの。本当に弟思いなんだから。トホホ.....。
宮殿について案内されたのは東の宮、早い話が皇太子ウィスタリア殿下のお住まい。当たり前のようだけど、こっちは殿下のいわばプライベートスペース。一般のお客は入れない、はず。まあスゥエン兄さんが一緒だからかな、とこの時は思った。
「まぁ掛けなさい」
一人用のソファーから優雅に手招きするウィスタリア殿下。顔の造りはアントーレ王子と大差ないけど、圧が違う。破壊力満点のイケメンフェイスに低めのイケボ。こちらを見る眼差しの目力が半端ない。怖いよう。
恐る恐るソファーに座る。隣にスゥエン兄さん。ちょっと安心かな。パンパン、と手を叩くと給仕が素早くお茶のセットを持って俺達の前に置く。
殿下は一口、お茶で舌を湿らせるとおもむろに口を開いた。
「初めまして、かな。ラフィアン・サイラス。兄上からよく話は伺っているが、本当に美しい。おまけに武勇にも優れているんだって?」
「そんな......」
恐縮する俺の隣でウィスタリア兄さんがにっこりと笑う。
「お褒めにあずかり光栄でございます。自慢の弟です」
「そうか」
殿下もにっこり。なんだけど、おふたりの笑顔がなんか黒く見えるのは俺の気のせい?
「君はアントーレの婚約者だそうだが......」
殿下はお顔の前で形の良い手を組んで言った。
「彼とはうまくいっているのかね?......最近、彼に他に想い人が出来たと聞いたんだが......」
「そ、それは......」
俺は心の中でガッツポーズを取りながら、俯いて答えた。小芝居、小芝居。演技力無いけど。
「仕方ないんです。僕に魅力が無いので......」
「そんなことはあるまい」
殿下が椅子を立ってこちらに歩み寄ってきた。
.「君はとても魅力的だよ」
じぃっと俺を目を見つめる。近い近い、高過ぎますって殿下。
「アントーレが嫌なら、私の側室にならないか?私は平等に愛せる男だよ」
はあぁ?何言ってるのこの人。兄さんに助けを求めようとしたら、いない。え、なんで?兄さんどこ行ったの。
「どうだね?アントーレとの婚約など破棄して、私のところに来ないか?」
長い指が俺の顔に触れる。あのこれ、顎くいっ、てやつですか?
婚約破棄はしたいけど、そういう意味じゃな~い。
「殿下、失礼いたします」
もう少しで顔がくっつきそうになった時、重々しいノックの音と侍従さんの声。
「なんだ?」
「アントーレ殿下がお見えです。至急にお目にかかりたいと......」
ウィスタリア殿下は眉をしかめて俺から離れた。
ナイス乱入。やるじゃん、ポンコツ。今だけはお前がストーカーで良かっと思うわ。今だけだけど。
しぶしぶと扉の方に歩みつつ、イケメンフェイスがくるっと振り向いた。
「友達は選びなさい。ラフィアン・サイラス。君は皇妃になるかもしれないのだからね」
何言ってんだコイツ?お前の愛人になんかならねーわ!
フッと目を背けると、スゥエン兄さんが俺を見て頷いた。
ーそうか、わかった!ー
マグリットとルートヴィヒを襲ったのは誰か、俺は察知した。
ーお前らかよ!ー
俺の大事な友達を傷つけようとしたのは、ウィスタリア殿下。それとスゥエン兄さんだった。
ー信じらんねぇ!ー
俺は殿下の部屋を飛び出し、一目散に外へ走った。
「ラフィアン!」
誰かが呼び掛けてきたが、俺はショックで足を止められなかった。走って走って、宮殿の中庭まできて、芝生に倒れ込んだ。
頭も心もぐちゃぐちゃだった。
「ラフィアン、大丈夫か?」
顔を上げると、トニー兄さんが心配そうに俺の顔を覗き込んでいた。
「兄さん?!」
俺は兄にすがって泣いた。
今年のクリスマスは楽しく過ごせそう。
と思ったら王宮から呼び出しが来ちゃったよ、おい。
召集令状、じゃなかった招待状の送り主は、なんと皇太子ウィスタリア殿下。バックレる訳にもいかないんで、大人しく参上いたします。
俺をドナドナしていくのは、殿下の御学友でもあるスゥエン兄さん。逃げられるわけないでしょ?
一張羅の深紅のベルベットのスーツに身を包み......って一張羅なわけじゃないんだけど、スゥエン兄さんが大至急で仕立てさせたの。本当に弟思いなんだから。トホホ.....。
宮殿について案内されたのは東の宮、早い話が皇太子ウィスタリア殿下のお住まい。当たり前のようだけど、こっちは殿下のいわばプライベートスペース。一般のお客は入れない、はず。まあスゥエン兄さんが一緒だからかな、とこの時は思った。
「まぁ掛けなさい」
一人用のソファーから優雅に手招きするウィスタリア殿下。顔の造りはアントーレ王子と大差ないけど、圧が違う。破壊力満点のイケメンフェイスに低めのイケボ。こちらを見る眼差しの目力が半端ない。怖いよう。
恐る恐るソファーに座る。隣にスゥエン兄さん。ちょっと安心かな。パンパン、と手を叩くと給仕が素早くお茶のセットを持って俺達の前に置く。
殿下は一口、お茶で舌を湿らせるとおもむろに口を開いた。
「初めまして、かな。ラフィアン・サイラス。兄上からよく話は伺っているが、本当に美しい。おまけに武勇にも優れているんだって?」
「そんな......」
恐縮する俺の隣でウィスタリア兄さんがにっこりと笑う。
「お褒めにあずかり光栄でございます。自慢の弟です」
「そうか」
殿下もにっこり。なんだけど、おふたりの笑顔がなんか黒く見えるのは俺の気のせい?
「君はアントーレの婚約者だそうだが......」
殿下はお顔の前で形の良い手を組んで言った。
「彼とはうまくいっているのかね?......最近、彼に他に想い人が出来たと聞いたんだが......」
「そ、それは......」
俺は心の中でガッツポーズを取りながら、俯いて答えた。小芝居、小芝居。演技力無いけど。
「仕方ないんです。僕に魅力が無いので......」
「そんなことはあるまい」
殿下が椅子を立ってこちらに歩み寄ってきた。
.「君はとても魅力的だよ」
じぃっと俺を目を見つめる。近い近い、高過ぎますって殿下。
「アントーレが嫌なら、私の側室にならないか?私は平等に愛せる男だよ」
はあぁ?何言ってるのこの人。兄さんに助けを求めようとしたら、いない。え、なんで?兄さんどこ行ったの。
「どうだね?アントーレとの婚約など破棄して、私のところに来ないか?」
長い指が俺の顔に触れる。あのこれ、顎くいっ、てやつですか?
婚約破棄はしたいけど、そういう意味じゃな~い。
「殿下、失礼いたします」
もう少しで顔がくっつきそうになった時、重々しいノックの音と侍従さんの声。
「なんだ?」
「アントーレ殿下がお見えです。至急にお目にかかりたいと......」
ウィスタリア殿下は眉をしかめて俺から離れた。
ナイス乱入。やるじゃん、ポンコツ。今だけはお前がストーカーで良かっと思うわ。今だけだけど。
しぶしぶと扉の方に歩みつつ、イケメンフェイスがくるっと振り向いた。
「友達は選びなさい。ラフィアン・サイラス。君は皇妃になるかもしれないのだからね」
何言ってんだコイツ?お前の愛人になんかならねーわ!
フッと目を背けると、スゥエン兄さんが俺を見て頷いた。
ーそうか、わかった!ー
マグリットとルートヴィヒを襲ったのは誰か、俺は察知した。
ーお前らかよ!ー
俺の大事な友達を傷つけようとしたのは、ウィスタリア殿下。それとスゥエン兄さんだった。
ー信じらんねぇ!ー
俺は殿下の部屋を飛び出し、一目散に外へ走った。
「ラフィアン!」
誰かが呼び掛けてきたが、俺はショックで足を止められなかった。走って走って、宮殿の中庭まできて、芝生に倒れ込んだ。
頭も心もぐちゃぐちゃだった。
「ラフィアン、大丈夫か?」
顔を上げると、トニー兄さんが心配そうに俺の顔を覗き込んでいた。
「兄さん?!」
俺は兄にすがって泣いた。
1
お気に入りに追加
2,832
あなたにおすすめの小説
気づいて欲しいんだけど、バレたくはない!
甘蜜 蜜華
BL
僕は、平凡で、平穏な学園生活を送って........................居たかった、でも無理だよね。だって昔の仲間が目の前にいるんだよ?そりゃぁ喋りたくて、気づいてほしくてメール送りますよね??突然失踪した族の総長として!!
※作者は豆腐メンタルです。※作者は語彙力皆無なんだなァァ!※1ヶ月は開けないようにします。※R15は保険ですが、もしかしたらR18に変わるかもしれません。
悪役令息に転生したけど…俺…嫌われすぎ?
「ARIA」
BL
階段から落ちた衝撃であっけなく死んでしまった主人公はとある乙女ゲームの悪役令息に転生したが...主人公は乙女ゲームの家族から甘やかされて育ったというのを無視して存在を抹消されていた。
王道じゃないですけど王道です(何言ってんだ?)どちらかと言うとファンタジー寄り
更新頻度=適当
俺は北国の王子の失脚を狙う悪の側近に転生したらしいが、寒いのは苦手なのでトンズラします
椿谷あずる
BL
ここはとある北の国。綺麗な金髪碧眼のイケメン王子様の側近に転生した俺は、どうやら彼を失脚させようと陰謀を張り巡らせていたらしい……。いやいや一切興味がないし!寒いところ嫌いだし!よし、やめよう!
こうして俺は逃亡することに決めた。
配信ボタン切り忘れて…苦手だった歌い手に囲われました!?お、俺は彼女が欲しいかな!!
ふわりんしず。
BL
晒し系配信者が配信ボタンを切り忘れて
素の性格がリスナー全員にバレてしまう
しかも苦手な歌い手に外堀を埋められて…
■
□
■
歌い手配信者(中身は腹黒)
×
晒し系配信者(中身は不憫系男子)
保険でR15付けてます
涙の悪役令息〜君の涙の理由が知りたい〜
ミクリ21
BL
悪役令息のルミナス・アルベラ。
彼は酷い言葉と行動で、皆を困らせていた。
誰もが嫌う悪役令息………しかし、主人公タナトス・リエリルは思う。
君は、どうしていつも泣いているのと………。
ルミナスは、悪行をする時に笑顔なのに涙を流す。
表情は楽しそうなのに、流れ続ける涙。
タナトスは、ルミナスのことが気になって仕方なかった。
そして………タナトスはみてしまった。
自殺をしようとするルミナスの姿を………。
【父親視点】悪役令息の弟に転生した俺は今まで愛を知らなかった悪役令息をとことん甘やかします!
匿名希望ショタ
BL
悪役令息の弟に転生した俺は今まで愛を知らなかった悪役令息をとことん甘やかします!の父親視点です。
本編を読んでない方はそちらをご覧になってからの方より楽しめるようになっています。
主人公の兄になったなんて知らない
さつき
BL
レインは知らない弟があるゲームの主人公だったという事を
レインは知らないゲームでは自分が登場しなかった事を
レインは知らない自分が神に愛されている事を
表紙イラストは マサキさんの「キミの世界メーカー」で作成してお借りしています⬇ https://picrew.me/image_maker/54346
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる