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あんまりです......泣 

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ーはあぁ.....ー

 テラスのテーブルに突っ伏して、重い溜め息をつく俺。前世は日本のサラリーマン。25歳、独身。嫁無し、彼女無し。

 あ、彼女がいなかったのは、仕事漬けでまともにLINE も返さなかったから振られただけです。ゲイではありません。念のため。

 で、今はどっかの異世界で貴族の三男坊やってます。はっきり言って美形です。大人になったらすっげえイケメンになります。細めですが、鍛えてます。
 きっと美女にモテモテです。可愛い彼女をゲットしてリア充爆発します。

 なのに......

 それなのに......

 この世界には女の子がいませんっ!
 
 もう一度言います。

 女の子がいないんですっ!!

「お茶のお代わり、お持ちしましょうか?」

 俺の頭上でにっこり微笑むメイドのマルタ。ちょっと年上だけど、すっごい可愛い。栗色のおさげ髪に榛色はしばみいろの丸っこい眼がくりくりしてて、ピンクの唇がちょこっとアヒルっぽくて、ふっくら艶々な頬っぺたは、ついつい突っつきたくなる。

 なのに...。

 女の子じゃないんです。
 男の娘なんです。泣き。

 そりゃあ胸無いな~とは思ったけど、年頃の乙女にそんな失礼なことは言えないし、元々、貧乳(失礼)、嫌いじゃないからさ。

 グラマーなフェロモンむんむんな美人より、スカッとマニッシュな女の子のほうが好みだった。元カノもそういうタイプだった。けど......。

ー余計なもんまで付いてなくて良かったのに......ー



ーーーーーーーーーー



 俺がその驚愕の事実を知ったのは昨夜のこと。学園の入学を前に、第二王子との件を確かめておきたかったから。

 夜半に父の書斎のドアをノックした時、俺にはまだ希望があった。
 まず、婚約自体しなければ、婚約破棄も無い。断罪もあり得ない。
 だが、その最初の希望は打ち砕かれた。

『あの......僕、アントーレ殿下と婚約したくないんですけど.....』

 おずおずと言う俺に父、サイラス公爵は、これでもかというほど、デカい声で笑った。

『ラフィ、困った子だ。本当に忘れてしまったのかい?アントーレ殿下とお前はずっと前に婚約してるんだよ』

『え、ずっと前って......?』

 イヤな予感しかしなかった。

『お前が三歳の時に、アントーレ殿下が一目惚れされてな、是非、配偶者にしたいと仰せになった。私達は喜んで婚約をお受けしたんだ』

 三歳?......まるっきり記憶にありません。てか、それ子どもの人権侵害じゃないですか!本人の意志も確かめずに婚約だなんて。前世にいた世界では、百年以上前に滅んでいる風習ですよ。訴えられますよ。
 そして俺は食い下がった。

『でもほら、もしかしたら殿下には他に好きな方が出来ていらっしゃるかもしれませんよ。学園には可愛い女の子もいっぱいいるでしょうし......』

 そう、それは俺のささやかな希望でもあった。バカ王子無視して、可愛い女の子とお友達になる。で、学園生活を楽しむ予定だった。
 正直なところ、なんで男がヒロインなのか、その時まではまだ深く考えていなかった。だって男女両性いても、男同士でくっつく話も普通にあったから......。

 そしたら、父は思い切り不思議そうに、怪訝な眼差しで俺の顔を覗き込んだ。

『女の子?......それはなんだ?』

『なんだ、って......え~と僕達と身体の造りの違う人間です。胸が大きくて、お尻が丸くて。赤ちゃんを産んでくれる人達です』

『そんな人間は知らないな。みんな身体の造りは一緒だろう?』

 父の言葉に俺は愕然となった。

『じゃあ赤ちゃんは......』

『配偶者となった者同士が性交を行って生まれるんだ』

 あ、そこは一緒なんだ。木に成るわけじゃないんだ。

『その前に、婚儀の時にどちらが子を宿す役割をするか決めないといけないが。そうだな、アントーレ殿下はお前が産むことを望まれるだろうな』

 ち、ちょっと待て......。それって、俺が妊娠する側ってこと?無理だろ、俺には.....。

『え、だって身体の造りは同じなんでしょ?』

『大丈夫だ。結婚すれば、子を宿す機能が出来る儀式を行うから。まあ、詳しいことは後で母さんに聞きなさい』

『はい......』

 俺は頭を下げて大人く父の部屋を退出した。それ以上聞けない、いや聞きたくなかった。
 子どもの出来るシステムの詳細は聞けなかったけど、聞かなくても同じだ。

 この世界には女の子はいない。

 俺を産んだ母親も、男。
 胸がぺったらなのは、貧乳じゃなくて男だから......。
 母がマニッシュなパンツスーツなのは、当たり前に動きやすいから。

 マルタ達がいわゆるメイド服でスカートなのは、単なる趣味......というか好み?
まあ、性別で服装を決めつけたりすると、前世の某団体から抗議デモされそうだから、言わない。

 まあ、それはいい。諦める。
 男の娘だって可愛いものは可愛い。
 友達にはなれる。彼女は無理だけど。

 でも......。

 俺は子どもは産みたくない。
 痛そう過ぎる。




 絶対、絶対、バックレてやる~!!

 
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