7 / 37
あんまりです......泣
しおりを挟む
ーはあぁ.....ー
テラスのテーブルに突っ伏して、重い溜め息をつく俺。前世は日本のサラリーマン。25歳、独身。嫁無し、彼女無し。
あ、彼女がいなかったのは、仕事漬けでまともにLINE も返さなかったから振られただけです。ゲイではありません。念のため。
で、今はどっかの異世界で貴族の三男坊やってます。はっきり言って美形です。大人になったらすっげえイケメンになります。細めですが、鍛えてます。
きっと美女にモテモテです。可愛い彼女をゲットしてリア充爆発します。
なのに......
それなのに......
この世界には女の子がいませんっ!
もう一度言います。
女の子がいないんですっ!!
「お茶のお代わり、お持ちしましょうか?」
俺の頭上でにっこり微笑むメイドのマルタ。ちょっと年上だけど、すっごい可愛い。栗色のおさげ髪に榛色の丸っこい眼がくりくりしてて、ピンクの唇がちょこっとアヒルっぽくて、ふっくら艶々な頬っぺたは、ついつい突っつきたくなる。
なのに...。
女の子じゃないんです。
男の娘なんです。泣き。
そりゃあ胸無いな~とは思ったけど、年頃の乙女にそんな失礼なことは言えないし、元々、貧乳(失礼)、嫌いじゃないからさ。
グラマーなフェロモンむんむんな美人より、スカッとマニッシュな女の子のほうが好みだった。元カノもそういうタイプだった。けど......。
ー余計なもんまで付いてなくて良かったのに......ー
ーーーーーーーーーー
俺がその驚愕の事実を知ったのは昨夜のこと。学園の入学を前に、第二王子との件を確かめておきたかったから。
夜半に父の書斎のドアをノックした時、俺にはまだ希望があった。
まず、婚約自体しなければ、婚約破棄も無い。断罪もあり得ない。
だが、その最初の希望は打ち砕かれた。
『あの......僕、アントーレ殿下と婚約したくないんですけど.....』
おずおずと言う俺に父、サイラス公爵は、これでもかというほど、デカい声で笑った。
『ラフィ、困った子だ。本当に忘れてしまったのかい?アントーレ殿下とお前はずっと前に婚約してるんだよ』
『え、ずっと前って......?』
イヤな予感しかしなかった。
『お前が三歳の時に、アントーレ殿下が一目惚れされてな、是非、配偶者にしたいと仰せになった。私達は喜んで婚約をお受けしたんだ』
三歳?......まるっきり記憶にありません。てか、それ子どもの人権侵害じゃないですか!本人の意志も確かめずに婚約だなんて。前世にいた世界では、百年以上前に滅んでいる風習ですよ。訴えられますよ。
そして俺は食い下がった。
『でもほら、もしかしたら殿下には他に好きな方が出来ていらっしゃるかもしれませんよ。学園には可愛い女の子もいっぱいいるでしょうし......』
そう、それは俺のささやかな希望でもあった。バカ王子無視して、可愛い女の子とお友達になる。で、学園生活を楽しむ予定だった。
正直なところ、なんで男がヒロインなのか、その時まではまだ深く考えていなかった。だって男女両性いても、男同士でくっつく話も普通にあったから......。
そしたら、父は思い切り不思議そうに、怪訝な眼差しで俺の顔を覗き込んだ。
『女の子?......それはなんだ?』
『なんだ、って......え~と僕達と身体の造りの違う人間です。胸が大きくて、お尻が丸くて。赤ちゃんを産んでくれる人達です』
『そんな人間は知らないな。みんな身体の造りは一緒だろう?』
父の言葉に俺は愕然となった。
『じゃあ赤ちゃんは......』
『配偶者となった者同士が性交を行って生まれるんだ』
あ、そこは一緒なんだ。木に成るわけじゃないんだ。
『その前に、婚儀の時にどちらが子を宿す役割をするか決めないといけないが。そうだな、アントーレ殿下はお前が産むことを望まれるだろうな』
ち、ちょっと待て......。それって、俺が妊娠する側ってこと?無理だろ、俺には.....。
『え、だって身体の造りは同じなんでしょ?』
『大丈夫だ。結婚すれば、子を宿す機能が出来る儀式を行うから。まあ、詳しいことは後で母さんに聞きなさい』
『はい......』
俺は頭を下げて大人く父の部屋を退出した。それ以上聞けない、いや聞きたくなかった。
子どもの出来るシステムの詳細は聞けなかったけど、聞かなくても同じだ。
この世界には女の子はいない。
俺を産んだ母親も、男。
胸がぺったらなのは、貧乳じゃなくて男だから......。
母がマニッシュなパンツスーツなのは、当たり前に動きやすいから。
マルタ達がいわゆるメイド服でスカートなのは、単なる趣味......というか好み?
まあ、性別で服装を決めつけたりすると、前世の某団体から抗議デモされそうだから、言わない。
まあ、それはいい。諦める。
男の娘だって可愛いものは可愛い。
友達にはなれる。彼女は無理だけど。
でも......。
俺は子どもは産みたくない。
痛そう過ぎる。
絶対、絶対、バックレてやる~!!
テラスのテーブルに突っ伏して、重い溜め息をつく俺。前世は日本のサラリーマン。25歳、独身。嫁無し、彼女無し。
あ、彼女がいなかったのは、仕事漬けでまともにLINE も返さなかったから振られただけです。ゲイではありません。念のため。
で、今はどっかの異世界で貴族の三男坊やってます。はっきり言って美形です。大人になったらすっげえイケメンになります。細めですが、鍛えてます。
きっと美女にモテモテです。可愛い彼女をゲットしてリア充爆発します。
なのに......
それなのに......
この世界には女の子がいませんっ!
もう一度言います。
女の子がいないんですっ!!
「お茶のお代わり、お持ちしましょうか?」
俺の頭上でにっこり微笑むメイドのマルタ。ちょっと年上だけど、すっごい可愛い。栗色のおさげ髪に榛色の丸っこい眼がくりくりしてて、ピンクの唇がちょこっとアヒルっぽくて、ふっくら艶々な頬っぺたは、ついつい突っつきたくなる。
なのに...。
女の子じゃないんです。
男の娘なんです。泣き。
そりゃあ胸無いな~とは思ったけど、年頃の乙女にそんな失礼なことは言えないし、元々、貧乳(失礼)、嫌いじゃないからさ。
グラマーなフェロモンむんむんな美人より、スカッとマニッシュな女の子のほうが好みだった。元カノもそういうタイプだった。けど......。
ー余計なもんまで付いてなくて良かったのに......ー
ーーーーーーーーーー
俺がその驚愕の事実を知ったのは昨夜のこと。学園の入学を前に、第二王子との件を確かめておきたかったから。
夜半に父の書斎のドアをノックした時、俺にはまだ希望があった。
まず、婚約自体しなければ、婚約破棄も無い。断罪もあり得ない。
だが、その最初の希望は打ち砕かれた。
『あの......僕、アントーレ殿下と婚約したくないんですけど.....』
おずおずと言う俺に父、サイラス公爵は、これでもかというほど、デカい声で笑った。
『ラフィ、困った子だ。本当に忘れてしまったのかい?アントーレ殿下とお前はずっと前に婚約してるんだよ』
『え、ずっと前って......?』
イヤな予感しかしなかった。
『お前が三歳の時に、アントーレ殿下が一目惚れされてな、是非、配偶者にしたいと仰せになった。私達は喜んで婚約をお受けしたんだ』
三歳?......まるっきり記憶にありません。てか、それ子どもの人権侵害じゃないですか!本人の意志も確かめずに婚約だなんて。前世にいた世界では、百年以上前に滅んでいる風習ですよ。訴えられますよ。
そして俺は食い下がった。
『でもほら、もしかしたら殿下には他に好きな方が出来ていらっしゃるかもしれませんよ。学園には可愛い女の子もいっぱいいるでしょうし......』
そう、それは俺のささやかな希望でもあった。バカ王子無視して、可愛い女の子とお友達になる。で、学園生活を楽しむ予定だった。
正直なところ、なんで男がヒロインなのか、その時まではまだ深く考えていなかった。だって男女両性いても、男同士でくっつく話も普通にあったから......。
そしたら、父は思い切り不思議そうに、怪訝な眼差しで俺の顔を覗き込んだ。
『女の子?......それはなんだ?』
『なんだ、って......え~と僕達と身体の造りの違う人間です。胸が大きくて、お尻が丸くて。赤ちゃんを産んでくれる人達です』
『そんな人間は知らないな。みんな身体の造りは一緒だろう?』
父の言葉に俺は愕然となった。
『じゃあ赤ちゃんは......』
『配偶者となった者同士が性交を行って生まれるんだ』
あ、そこは一緒なんだ。木に成るわけじゃないんだ。
『その前に、婚儀の時にどちらが子を宿す役割をするか決めないといけないが。そうだな、アントーレ殿下はお前が産むことを望まれるだろうな』
ち、ちょっと待て......。それって、俺が妊娠する側ってこと?無理だろ、俺には.....。
『え、だって身体の造りは同じなんでしょ?』
『大丈夫だ。結婚すれば、子を宿す機能が出来る儀式を行うから。まあ、詳しいことは後で母さんに聞きなさい』
『はい......』
俺は頭を下げて大人く父の部屋を退出した。それ以上聞けない、いや聞きたくなかった。
子どもの出来るシステムの詳細は聞けなかったけど、聞かなくても同じだ。
この世界には女の子はいない。
俺を産んだ母親も、男。
胸がぺったらなのは、貧乳じゃなくて男だから......。
母がマニッシュなパンツスーツなのは、当たり前に動きやすいから。
マルタ達がいわゆるメイド服でスカートなのは、単なる趣味......というか好み?
まあ、性別で服装を決めつけたりすると、前世の某団体から抗議デモされそうだから、言わない。
まあ、それはいい。諦める。
男の娘だって可愛いものは可愛い。
友達にはなれる。彼女は無理だけど。
でも......。
俺は子どもは産みたくない。
痛そう過ぎる。
絶対、絶対、バックレてやる~!!
2
お気に入りに追加
2,832
あなたにおすすめの小説
気づいて欲しいんだけど、バレたくはない!
甘蜜 蜜華
BL
僕は、平凡で、平穏な学園生活を送って........................居たかった、でも無理だよね。だって昔の仲間が目の前にいるんだよ?そりゃぁ喋りたくて、気づいてほしくてメール送りますよね??突然失踪した族の総長として!!
※作者は豆腐メンタルです。※作者は語彙力皆無なんだなァァ!※1ヶ月は開けないようにします。※R15は保険ですが、もしかしたらR18に変わるかもしれません。
悪役令息に転生したけど…俺…嫌われすぎ?
「ARIA」
BL
階段から落ちた衝撃であっけなく死んでしまった主人公はとある乙女ゲームの悪役令息に転生したが...主人公は乙女ゲームの家族から甘やかされて育ったというのを無視して存在を抹消されていた。
王道じゃないですけど王道です(何言ってんだ?)どちらかと言うとファンタジー寄り
更新頻度=適当
俺は北国の王子の失脚を狙う悪の側近に転生したらしいが、寒いのは苦手なのでトンズラします
椿谷あずる
BL
ここはとある北の国。綺麗な金髪碧眼のイケメン王子様の側近に転生した俺は、どうやら彼を失脚させようと陰謀を張り巡らせていたらしい……。いやいや一切興味がないし!寒いところ嫌いだし!よし、やめよう!
こうして俺は逃亡することに決めた。
配信ボタン切り忘れて…苦手だった歌い手に囲われました!?お、俺は彼女が欲しいかな!!
ふわりんしず。
BL
晒し系配信者が配信ボタンを切り忘れて
素の性格がリスナー全員にバレてしまう
しかも苦手な歌い手に外堀を埋められて…
■
□
■
歌い手配信者(中身は腹黒)
×
晒し系配信者(中身は不憫系男子)
保険でR15付けてます
涙の悪役令息〜君の涙の理由が知りたい〜
ミクリ21
BL
悪役令息のルミナス・アルベラ。
彼は酷い言葉と行動で、皆を困らせていた。
誰もが嫌う悪役令息………しかし、主人公タナトス・リエリルは思う。
君は、どうしていつも泣いているのと………。
ルミナスは、悪行をする時に笑顔なのに涙を流す。
表情は楽しそうなのに、流れ続ける涙。
タナトスは、ルミナスのことが気になって仕方なかった。
そして………タナトスはみてしまった。
自殺をしようとするルミナスの姿を………。
【父親視点】悪役令息の弟に転生した俺は今まで愛を知らなかった悪役令息をとことん甘やかします!
匿名希望ショタ
BL
悪役令息の弟に転生した俺は今まで愛を知らなかった悪役令息をとことん甘やかします!の父親視点です。
本編を読んでない方はそちらをご覧になってからの方より楽しめるようになっています。
主人公の兄になったなんて知らない
さつき
BL
レインは知らない弟があるゲームの主人公だったという事を
レインは知らないゲームでは自分が登場しなかった事を
レインは知らない自分が神に愛されている事を
表紙イラストは マサキさんの「キミの世界メーカー」で作成してお借りしています⬇ https://picrew.me/image_maker/54346
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる