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第六章:
私を夜明けへ連れてって⑲
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なんだか、やたらと手が痛い。そっと視線を向けたら、いつの間にか集合していた女子コンビにがっちり握りしめられていた。というか、しがみ付かれていた。二人ともさっきまでの激怒っぷりが嘘のように顔面蒼白だし、リラなんて涙目で細かく震えていたりする。
いや、うん、わかるよ。ここは目を逸らしちゃいけないと思ってしっかり見届けたけど、正直わたしもめっっっっちゃ怖かったし。こっそり目だけ向けた背後の男性陣も似たような感じだし。ノリと勢いで始まった大乱闘の末に、待ってたのがホラーチックな落ちだなんて誰も思わないだろう。
元々涼しかった《妖精の道》の森だけど、一瞬でも冥界寄りの幽世とつながったせいで一気に気温が下がった。吐く息がうっすら白いし、腕や首筋に鳥肌が立っているのがわかる。やっぱり寒いのか、それともユーリさんたちの剣幕と恐ろしい光景におびえたのか、うちの霊獣さんたちが足元にぴったり寄り添ってくれてるのがありがたい。ドゥーさんの羽根がもっふもふだ。ティノくんがいたら、首にもくるっと巻き付いて温めてくれるんだけどなぁ。
『――ごしゅじーん!』
あ、やばい、寒すぎるのか幻聴が。いや、疲れたから半分寝てるのかも……
《ちょっとちょっと、イブマリー。あと少しだから頑張ってちょうだい? 幻覚でも何でもなくってよ、ほら》
「ふぁい??」
こっそり現実逃避していたところ、ガワの人から至極冷静なツッコミをいただいてしまった。思わず口に出して返事したとき、
『わーっごしゅじんだー!! あいたかった~~~~』
『ふぃーふぃ~~~』
『きゃ~~ん!!』
「うわあ!?!」
さっきユーリさんが登場した一つ目の門から、小さくてふわふわした影がすごい勢いで飛び込んできて、頭をはじめとするわたしの全身にくっ付いた。
「あ、あったかいけどちょっと息苦し……、はっ!? ティノくんたち!?」
『ふぃっ!』
『そうだよ、ぼくたち!! あのエルフのおねーさんにね、おてつだいしてってたのまれたの!』
『こんこんっ』
「そ、そっか、ユーリさんが……、あれ?」
飛びついた位置の上から順番にお返事してくれた小動物さんたちに、とりあえず納得した。薄々分かってたけどオズさん共々、だいぶお世話になったんだなぁ、と振り返った……
ら、何故かそーっと森の奥の方に移動しようとしている、当のエルフさんの姿があった。一連のアレコレとティノくんたちの登場で、誰もそっちに気付いていないようだ。
というかこの感じ、なにげにこっそり帰ろうとしてないか。心当たりは……うん、あった。めちゃくちゃあるな。
(……えーっと、どうしよう。ここは黙って一回お別れするべき? いやでも、せっかくリュシーに会わせてあげるチャンスだし。いやいやわたしは聞いちゃいけないヤツだったしアレ!!)
《――これ、ユリアナ殿。黙って消えようとするでない。せっかく役者が揃っておるというのに》
「あああ、オズさーん!?!」
『なんで今話しかけちゃうのオズヴァルドさんー!?』
わたしがいろいろ気を回して悩んでいた間に、未だにどこから声がするのかわからないオズさんがオープンチャンネルのままツッコミを入れてしまった。揃って悲鳴を上げたのはしょうがないと思う。ただでさえややこしい事情がありそうなのに!!
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