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第四章:
ぎゃわずの如き凹むもの⑦
しおりを挟む思わずうわあ、と口に出そうになって慌てて呑み込んだ。魔王再臨なんて未曽有のピンチに見舞われたばっかりなのに、息つく暇もなくこれだ。ランヴィエルも大概トラブルの宝庫だったけど、こっちの国も負けてないな、これは。
「そりゃマックスさんが自分で叔父さんにお手紙届に来ますよね……こないだ急に呼び戻されたのって、もしかしなくてもこの案件なんじゃ」
「時期とタイミング的に、十中八九そうだと思うよ。今現在、宮廷魔導師と冒険者ギルドの中枢部が場所の特定にてんやわんやだって。……で、これだけですんだらよかったんだけど」
「えっうそ、まだあるの!?」
すでにけっこうかなり大事だと思うんですが!? という心の声がうっかり外に出た。いや、絶対叫びたいのは走り回ってるグローアライヒの皆さんの方だと思うんだけど、それにしたってあなた!
「あるんだよ、これが。養蜂場から蜂が失踪した事件を調査してただろう? ――まあ何やかんやあって、その主犯格ご本人がここに引っ立てられてるわけだけど」
「返す返すも申し訳ない……!!」
「すみません、でもこれには事情が……っていたたたた」
ちらっとジト目で見やったリックに、恐縮しまくりで頭を下げるショウさん、およびスガルさんである。お兄さんの方は未だに洗濯板から下ろしてもらってなくて、身動きするたびにこっそり呻いてたりする。……あれって凍傷になったりしないだろうな。
「……とにかく、蜂がいなくなって困るのは蜜の採取だけじゃない。商会の女将から聞いてない? 蝋が足りないから、とりあえず木蝋で代用するって」
「うん、フィアメッタを経由してだけど。……って、あれ、まさか」
「そのまさか。蝋人形に使ってあったのは蜜蝋で、しかもその成分からアスフォデルの花粉としか思えないものが出た。スガルさん、念のために聞くけど、例の幽世からは何一つ持ち出してないんでしょう? 誓って」
「そりゃ勿論。あくまでフリだったし、あの花の魔力って現世側の生き物にとっては強すぎるから。巣はこっちで用意して、極力蜜だけに触るようにしてもらってた」
「ですよね。――ってことは」
「別動隊がいたってことか。それも大勢」
「お邸一つ分の蝋人形を作ろうと思ったら、もっとうんと前から準備してなきゃ間に合いませんよね……」
「ええ。しかし、アスフォデルも植物。花が咲く時期は毎年、グローアライヒで言えば春の始めと決まっています。――ひと月ばかりの時間で、そのように大量の資材を集められるものなのでしょうか」
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