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第三章:
失われた蜂を求めて①
しおりを挟む養蜂場というのは、だいたい街の郊外の方に作られている。その方がミツバチにストレスがないし、ハチミツの原料になる草花の種類も豊富だからだ。
「まああえて街中でやってる人もいるけど、全体からすると少数派よね。量も少なくなっちゃうし。――あ、でもうちの王都に有名なやつがあったっけ」
『知ってる、ボダイジュの蜜でしょう? もうちょっとしたら花が咲き始めるんじゃないかな』
「お、さすがに詳しいわね。そーなの、リンデンブルク(ボダイジュの城)って名前だから街路樹として山ほど植わってて、花の時期はミツバチやら花蜂やら飛び回ってすごいんだって。叔父さんちでも売ってるし、運が良ければうちでも扱うから、楽しみにしてて」
『わーいっ』
さっき利きハチミツで無双状態だったエラちゃんがはい、と元気よく手を挙げて発言すると、こっちもなにげに詳しかったフィアメッタが軽くなでてあげている。なんだかすっかり馴染んだな、妖精さん。
お邸を失礼していろいろ準備を整え、『あんまり遅くならないようにね』とシェーラさんに見送ってもらって、再び出かけることにしたわたしたち『紫陽花』メンバーである。目的はもちろん、例のミツバチ失踪事件を調査することだ。
時刻は三時を少しすぎたところで、良く晴れた空に白い雲がまぶしい。相変わらず海からの風が気持ちいいので、いくらでも歩けそうだ。
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