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第七章:
独白⑧
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星が囁いた。それを確かに感じ取り、ずっと伏せていた瞳を開く。小さいけれど、何かが確実に変わりつつある合図だ。
元から特別な素質が備わっていたわけではない。空の星を通して、人や国の命運を知る力。静かに暮らしていた自分のもとに、口に出すのも畏れ多いひとから御使いがやって来て授けてくれたものだった。
(あのときは、ほんとに驚いたなぁ)
村での生活は平穏だったが、家族のいない自分にとっては孤独な日々でもあった。まわりの人達は温かかったけれど、その思いやりに触れるたびにどうしても心の片隅が暗く翳る。何故、わたしはこの想いを受け取る側にしかなれないんだろう、と。
(……だから、嬉しかった。みんなと出会って仲良くなって、役に立てたの)
お前がいて良かったと、仲間が言ってくれるたびに胸が熱くなった。いつもありがとう、貴女に会えたことが嬉しい、なんて、身に余るほどの優しい言葉に涙がこぼれた。皆は助かったと言うけれど、救われていたのはこちらの方だ。
なのに。
『……ごめんなさい』
口にした言葉が奇妙にこだました。のろのろと周りに視線を巡らせる。
ぼんやりと、朝焼けのような薄紅色の光が漂う場所だった。ここに囚われてからずっと変わらない。時折微妙に明暗がうつろって、どうにか昼夜の区別がつく程度だ。
恐らくだが、ここに時間という概念はない。空腹も眠気も感じないし、なにより、
(きれいねって、言ってくれたのになぁ……)
顔の右側に手をやると、ざんばらになった髪が触れた。あれからずっと無残に切られたままで、伸びてくる気配は全くない。旅の間、いつも丁寧に梳いてくれた友人を思って、また目裏が熱くなる。
――許してくれなくて構わない。二度と会えなくたって、自分が身代わりになったっていい。だから、どうか、
『みんなを助けて……!』
決して外には聞こえない訴えが、薄紅の霞に呑まれて消えた。
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