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第六章:
竜(+α)は無慈悲な夜の女王②
しおりを挟む……なーんて、ついつい格好つけてしまったんですが。
「アニキ大丈夫? 見失ってないー?」
「んー、今んとこ平気。石壁はそこまで厚くないし、妙な防護がかかってる気配もないから。たぶんさっき使ってた鍵みたいなヤツの効果だな」
「ダンジョンの自己防衛システム発動を抑え込む道具、か。そのようなものが存在しているとは」
「イブマリーが勉強家で良かったわよねー、ホント」
『ご主人すごーい!』
「い、いやー、たまたま知ってただけだから……ははは」
真っ暗闇の中、先を進む人を追いかけながらの会話である。そのメンバーがさっき再集結した『紫陽花』のみんなで、話し声にはもれなく『ひそひそ』って効果音付きで、ついでに抜き足差し足しながらだというのは言うまでもない。
……で、わたしの知ってた魔法道具の知識が、ゲームをやり込みまくったせいで丸暗記してしまったものだというのも、もはや説明する必要がないくらい明確な事実なわけで……ホントごめんなさい皆さん、この居たたまれなさの埋め合わせは何かで必ず……!!
《盛り上がってるとこ悪いんだが、あんま油断するなよ? どんなご面相だか知らねぇが、そいつは少なくともひと月以上は冒険者ギルトの情報網を掻い潜って人、じゃない、魔法生物さらいを続けてたんだろ》
《こちらと合流するまで、どうぞくれぐれもお気をつけて》
「あ、はい、わかってます。一部ですけど、現場の状況もちゃんと見てきてますから」
さっき出発前に貸してもらった、グラディオーレ商会女将謹製の魔法道具である耳飾りから、すっかり聞きなれた年長者コンビの声がする。それにやっぱりひそひそ声で答えつつ、わたしはほんの数時間前のことを思い出していた。
フィアメッタから伝言を預かったエルドくんがギルドに付くのと、山盛りの書類と格闘していたメンバーがそれらしい情報を掴んだのは、驚いたことにほぼ同時だったらしい。その足ですぐさま離宮の地下に駆け付けてくれたのである。
……何とか元の地点まで戻ってきたわたしとりっくんと小動物コンビを見て、合流メンバーが一斉に安堵のため息をついたのにもびっくりしたが。みんながいろいろ気を遣ってくれてるのは分かるが、そんなに危なっかしいかな、わたし。
「というわけで、現時点での配置と地下空間の間取りはこんな感じ。ここのダンジョンの仕様からすると、出入りのたびに変化してるって可能性も高いけど……」
「早速ご苦労さん。万能だよなぁ、お前さんの相方」
「いやまあ、それほどでもあるけど」
『お褒めにあずかり恐縮ですッ』
すでに戻ってきて報告を済ませていた風霊くんが、またもやビシッと敬礼を返した。そしてやっぱり特に謙遜するわけでもないりっくんに、怒らず騒がず『へいへい』と苦笑で返したアルバスさんはホント大人である。いい加減こういうやり取りに慣れてるだけかもしれないけど。
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