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第二章:

拾うは恥だが役に立つ②

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 「――やあ、皆もう揃っていたか。待たせて済まなんだ」

 さくさくと草を踏む音がして、木立の向こうからショウさんが現れた。手には長い木の枝と、ツル草の茎で縛ってまとめた魚をたくさん持っている。

 「ううん、全然。いま採集組が戻って来て手伝ってくれてたとこよ」

 「若旦那お疲れ! きょうも大漁だね、さっすがー」

 「ちょうど川を遡上してくる群れがいたのでな。こちら側で焼いても構わぬか?」

 「いーわよ、その辺にある細い枝使っちゃって。余った野菜もテキトーにお願い」

 「心得た」

 「あ、わたしもやりまーす」

 フィアメッタから許可と依頼を受けて反対側に腰を下ろすと、ツルから外した魚にどんどん枝を刺していく。十匹以上いてなかなか大変そうだ。急いで寄っていって、残りのお野菜の方を手伝うことにした。

 あ、お芋とかトウモロコシもある。キャンプでやったバーベキューを思い出すな、これ。

 「お芋は焦げないようにちょっと離しといた方がいいかな。こっちはちょっと近くして焦げ目つけよっと」

 「かたじけない、助かります。お疲れではありませんか」

 「いえ、全然! 飛竜からあとは何もなかったし、みんなゆっくり進んでくれたので」

 「それは良かった。……しかし」

 相変わらず穏やかに労ってくれる相手が、ふと表情を曇らせた。串に刺した魚を火の周りに並べ終えて手を止めると、私の背後に視線を滑らせる。

 「起きませんな。あれから数時間は経つというのに」

 「……ですねえ」

 その先にはもちろん、日中に返り討ちにされた飛竜……ではなく、姿を借りていたらしき小さなモフモフが横たわっていた。

 わたしも作業がひと段落ついたので、改めて観察してみる。

 大きさは小型の犬くらいで、金色というか淡いタマゴ色のふわふわした毛。体格は犬より猫に近くてしなやかな印象があるけど、動き回ったらまたイメージが変わるかもしれない。尻尾がとても長くてふさふさで、全長よりもちょっと長そうだ。

 実はあの後、完全に気を失っていたこの子をその場に残していくのが忍びなくて、みなさんに頼み込んで連れてきてしまったのだ。冷やしたらまずいと思って移動中ずっと抱えてたんだけど、一向に起きる気配がなかったりする。ふわふわのお腹がゆっくり上下してるので、生きてるのは確かなのだが……

 「こういう動物はみんな見たことがないっていうし、なに食べるかもわかんないし……いっそお話とか出来ればいいんだけど」

 「案外人語を解するやもしれません。ああいった幻術の類いを扱うには、相応の修行が必要ゆえ。
 己に必要なものを判断する知性がなければ、習得には至りますまい」

 「ああ、なるほど」

 わかりやすい解説にぽふんと手を叩く。よいしょと体をひねって、背後に寝かせていた小動物をよしよしなでてあげた。うん、やっぱりステキにもふもふで気持ちいい。

 「早く起きないかなぁ。どこから来たとか、好きなものとか、教えてくれるかな」

 元のライバルはどうだったのかわからないが、少なくともわたしは動物は好きな方だ。さっき力いっぱい叩きのめしてしまったので、まずはその辺を謝らなくちゃいけないけど。……あんまり怒ってないといいな。
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