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第二章:
思いがけない戦闘と収穫③
しおりを挟むぶわあ!!!
「わ、うわわわわ……」
「こっち! イブこっち来て、つかまってて!」
見るからにお怒りの飛竜が、無事な両翼で力いっぱい羽ばたいた。凄まじい突風が巻き起こり、風圧に負けて転びかけたのをリラが助けてくれる。引っ張られて岩陰に避難し、どうにか一息つくことが出来た。
「……うーん、予定が狂ったなぁ」
「どうすんの? 明らかにご機嫌ナナメってるわよ、あいつ」
「ともかく、リラとイブマリー嬢は先に行ってくれ。この辺りは岩場が続く、物陰で風を防ぎながら距離を稼いでほしい」
「はーい。若旦那たちも無理しちゃダメだよ」
「心得た」
「おう。逃げ足は期待していいぞ」
「はいはい、てきとーにダメージ与えてくるわ。行くよエルド」
『くわっ』
さっと相談をまとめて飛び出していく前衛三人+α。こっそり岩陰から覗き込むと、男子二人が出来るだけ前に出て気を引こうとしているのが分かった。うん、さっき攻撃が当たったのってフィアメッタだけだもんな。火の鳥のエルドも突風をかいくぐって、攻撃しようと果敢に飛び回っている。
しかし、勝負自体はいい感じにこっちがペースを握ってるのに、なかなか決定的な一撃が決まらない。あっちは図体もデカいし、そんなに必死で避けてたり防いでたりするわけでもない。何でだろう。
(うーん。なんだかもやもやする)
なんだろう、これ。強いていうなら、ダンジョンでどうしても謎が解けなくて行き詰ってるときみたいな感じだ。そういうときって、なにか大事な要素を見落としてることが多いんだよな……
思い当たることを探してうんうん唸っていると、ふいに袖を引っ張られた。振り返ったら、とっても心配そうに眉を下げているリラの姿が。
「……大丈夫? ごめんね、怖いよね。すぐ終わると思うから」
どうやらあまりにもガン見しすぎて、怖さのあまり足がすくんでると思われたようだ。優しいこの子らしいフォローにちょっと和んで、強張っていた肩の力がふっと抜ける。出来るだけ気楽に笑って、ぱたぱた手を振ってみせた。
「ありがと、平気だよ。みんなの魔法すごいなぁって思って」
「うん、カッコいいよねえ。私もそう思う」
「リラは防御とか回復が得意なんだよね、やっぱり。神官だし」
「そうそう。そもそも生得魔法がそっち系だったから、この職業選んだの」
軽く胸を張ってそう言ってから、リラはなにか思いついたような顔をした。首をかしげて不思議そうに口を開く。
「そういえばイブ、生得魔法は使えた? あれって体質みたいなものだし、封印するのはちょっと難しいと思うんだけど」
「――あっ!!」
あっさりそういわれて、違和感の正体にようやく気付いた。そうか、そういえば試してなかった!
――エトワール・クロニクルの世界では、人間は誰でも必ずひとつ、そのひとにしか使えない魔法を持って生まれてくる。
これを生得魔法と呼んでいて、内容はとにかくさまざまだ。地水火風の属性で攻撃に使えそうなもの、防御回復など補助に適しているもの、もっと身近で生活の役に立ちそうなもの。使い方も役立て方もいろいろで、持ち主が自分で考えて付き合っていく。そう考えると、一種の適正とか才能ともいえるかもしれない。
ゲームのシステム上では、レベルアップで覚える普通の魔法とは威力がケタ違いだ。詠唱の時間も必要ないので、ターンを跨がずすぐに使える。ただし発動させるには、MPと別になっているギフトゲージというのを満タンにしなくてはならない。方法はいくつかあるんだけど――それはひとまずおいといて。
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