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第二章:

思いがけない戦闘と収穫②

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 道は上り坂で、だいぶ先で空に続くみたいに途切れて見える。つまりそこが一番高くて、あとは下りになっているはずだ。

 ひとまずそちらを目指して『せーの』で走り始めたとたん、うんと上の方から岩が崩れる派手な音がした。ついでに、豪快に風を切って飛ぶような音も。

 「――ちょっと待って! あれホントに小さいの!?」

 「でっかいのだとあの二、三倍はあるわよ! ほら、ちゃんと前見て!!」

 「うえええええ?!」

 つい振り返ってフィアメッタに叱られてしまったけど、これはもう叫ばざるを得ないと思う。なんせくだんの飛竜、こっちとの距離から考えて、おそらくヘリコプターくらいはあるはずなんだから。

 (おのれ、画面上だと正確なスケールが分かりづらいから油断してたー!)

 しかも、思ってた以上に飛ぶのが速い。たった今山のてっぺんを飛び立ったのに、すでに目と鼻の先まで迫っているのだ。やばい、追いつかれる!

 「フィア、行っけー!!」

 「はいよ! 『緋鳥乱舞カーディナル』ッ」
 
 ごわあああああああああっ!!!

 『ぎゃふあっ!!』

 元気いっぱいの掛け声と同時に、フィアメッタの目の前に真っ赤な炎が噴き出した。その勢いのまま飛竜にぶち当たると、どごーん! と派手な音がしてタテ回転で吹っ飛ばされる。

 「イブマリーは初めて見るよね、この子があたしの相棒。はいエルド、ご挨拶!」

 『きゅわー!』

 差し出した腕にふわっと舞い降りた炎は、大きな鳥の姿をしていた。全体的にタカとかワシに似たフォルムで、長い尾羽がきれいだ。目の前で燃えているはずなのに、熱く感じないのが不思議だった。

 「わあっ、カッコいいね! とっても賢そう」

 「んっふっふ、でしょ? 実際に頭良いわよ、あたしが指示し損ねてもどんどんフォローしてくれるし」

 『くわっ、くわー!!』

 「え、もう復活してきた? しゃーないわねぇ」

 ばたばた羽根を動かすエルドの訴えに振り返ると、ついさっき派手にやられたはずの飛竜が戻って来るところだった。そういやこいつ、レベル上げのサンドバッグになるだけあって結構しぶといんだよな……

 「――あ、ふたりとも待って! 大丈夫そう」
 
 駆け足を再開しようとしたとき、リラが引き留めてきた。ほら、と指さした方を見ると、うんと上の山肌に陣取っている影が二つ。

 「左翼を狙え、まずはどちらかだけでも落とす!」

 「了解!」

 言うまでもない、さっきから姿が見えなかった男子コンビだ。

 先行して飛び出したショウさん、すでに武器を準備済みだった。波を思わせる刃紋を持ったそれは、どこからどう見ても日本刀そのものだ。

 「『波濤千変テンペスト』!」

 ざあっと涼やかな音が立つ。落ちてくるリーダーの周りを取り巻くように、どこからともなく大量の水の帯が出現した。構えた刀に収束して、一瞬で元の倍以上ある刀身を作り出す。そのまま放つ横薙ぎの一撃に、飛竜の翼が断ち切られる――

 かと、思ったんだけど。
 
 すかっ。

 「、は!?」

 「「「ええええええ!?!」」」

 よし決まった、と思った瞬間、水の刀が思いっきり空振りした。見てたわたしたちも盛大に叫んだけど、もっと驚いたのは当の本人だろう。

 「今、何がどうなった!?」

 「わかんねえけどこっちも当たらなかった! 外したんじゃない、ぞ!!」

 こっちはこっちで、短剣を使って斬り付けたらしいディアスさんが舌打ちしている。そんな動揺しまくりの状態でも、両方ともきちんと着地を決めているのが流石だ。
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