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呪い前線異常アリ⑦
しおりを挟む「さっ、さささ佐倉理咲です!! あのっ初めまして、ごあいさつが遅くなってもっ、ももも申し訳ありません!!!」
「まあまあ。良いのよ、わたくしもずうっと休んでいたから。……ほらね、真面目な子はこうなるんだってば」
「いやぁ、前フリして連れてくると余計に緊張しそうだったんだもん。ね、イイ子でしょ? 小鳥ちゃん」
「それはそうだけど……」
どもりまくりながら大急ぎでお辞儀とあいさつを返す理咲に、陛下もといオパールの方はいたってのほほんとしたものだった。仲良しらしき魔導師殿とのやり取りは楽しそうだったが、今はちょっとそれを鑑賞するどころじゃない。
(やっぱり聞き間違いじゃなかった!! そういや殿下が王弟だ、って言ってたな!? ていうか女王様だったんだ、カッコいいな!?!)
自慢じゃないが佐倉家、由緒正しき庶民の家系である。そもそも現代社会で王侯貴族に謁見する、なんて機会はそうない。辛うじて要人、というのであれば、理咲が中学校の頃に超レアな毒キノコを見つけて通報して、それがきっかけで知事に表彰された祖母くらいなものだ。突然国王陛下の御前に放り込まれるとか、心臓に悪いを通り越して今すぐ止まりそうなんですが!
見よう見まねで頭を下げたまま冷や汗をかいていると、後ろからやって来た誰かがそっと背中をさすってくれた。大きな手と優しい触れ方は、まず間違いようがなくノルベルトのものだ。そろっと顔を上げて見上げたら、支えるように側に立つ姿があってホッとする。
「ラウラ殿。お気持ちは有り難いが、リサ殿の心的負担も鑑みていただきたい。――陛下、お久しゅうございます。お身体は大事ございませんか」
「ええ、ありがとう。『鷹』さんも元気そうで良かったわ、燐火蟹を誘導してくれたんでしょう? 今さっき『視た』けれど、みんなとても褒めていてよ」
「恐悦至極に存じます。が、その功績はこちらの賢者殿のものゆえ」
(その呼び方引っ張らないでノルベルトさーん!!)
「あら、まあ」
礼儀正しい挨拶からの、流れるが如き褒め殺しに心の中で悲鳴を上げる。だからそんなことないんですってば!! と頭を抱えているうちに、軽く首を傾げて目を瞬いているようだった陛下がぽん、と手を打った。相変わらずのんびりした調子で、
「ああ、やっぱり。召喚されてきた方なのね、知らない気配がするなぁって思っていたの」
「……見て分かるものなんですか? そういうの」
「うん、わたくしはね。ちょっと他人より目が良くて、いろいろと『視える』ことが多いの。ある程度なら自分で制御できるんだけど、――うーん、でも召喚の儀が行われたってことは、わたくしいよいよ拙いのかしら」
「まずい? って、そういえばお具合が悪いんですか? さっき身体の調子がどうとか」
「身体そのものじゃないんだけどね……うん、ちょっと見ててもらえる?」
少しの間、腕を組んで考えるそぶりをしていたオパールだったが、ひとつかぶりを振るとそう提案してきた。こちらが頷いたのを確認して、大きく息を吸って瞳を閉じる。
――ふわあ……
その直後だった。彼女の周りから、本人の雰囲気同様に柔らかな光の波動が沸き起こったのは。
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