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呪い前線異常アリ①
しおりを挟むなんだか賑やかだ。ふとそう感じて、ふわふわ漂っていた意識が戻ってきた。
(……ラウラが戻ってきた、のかな)
そっと目を開けると、いつもと変わらない自室の風景だ。カーテン越しに差し込む日の光は、明るさと角度からするともう夕方が近い。そんなに眠っていたのかと、我ながら少々驚いた。
(南の視察はどうだったかな。私がこんなだから、いつも代わりに行ってもらって……)
本当は、どんなに多忙であっても自分自身で赴かねばならない職務だ。このグランフェルト王国は東西北の三方を山に囲まれ、堅牢な護りを誇っているが、南方に広がる海が唯一の気がかりだった。細く伸びた半島と、そこからつながる島嶼部の領主達とは、緊密に連絡と協議を行っていかねばならない。それなのに。
いつものくせで考えが悪い方へ向かいそうになって、急いで打ち消す。この短期間でなすべき事を終えてきたのであれば、滞りなく視察が済んだということだ。ままならない自身を嘆くより、先に優秀な補佐たちが支えてくれることに感謝するべきだろう。
それに、今気がついたけれど――
(なんだか、知らない気配がする。誰かな、女の子がふたり……?)
城内は厳重に結界が張られていて、自分の特性を持ってしても全てを把握するのは難しい。幾重にも重なったベール越しに透かし見ているようなイメージだ。生身の方の目まで一緒に眇めてみるが、詳しいことはわからなかった。
今し方までいなかったとはいえ、ラウラは情報通だ。あとで顔を出したときにでも、最近の出来事を聞いてみるとしよう。そう決めたら、なんだか少しわくわくしてきた。日々静かに過ごすことを求められる身としては、あまり褒められたものではないのだけれど。
(早く来てくれないかな……)
それだけをそっと言葉にして、細く静かに息をついた。
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