274 / 430
鏡音んち
しおりを挟む(((ガチ勢やばすぎる……)))
変な汗をかく先輩たち。
なお、ミオのレベルは36。
ルカのレベルは41である。
もうシーナ以外の先輩たちのレベルを超えちゃった後輩。
「先輩方、お疲れ様です」
「おつー。ドカてん、じゃなかったマギ、レベル上げはそろそろいいよぉ?」
「え」
出会い頭でミオにそんなことを言われて、わかりやすくショックを受けるマギ。
そもそも、あっという間に現時点の到達限界点に達しそうになっているのだ。
これ以上鍛え上げられても、正直ライブをするという東雲学院芸能科プレイヤーの本来の目的を忘れられては困る。
本当はキャラクターアバターの種類を増やして、ステージにあげた方がいい。
「ええ……!? ライブするんですか!? い、今から!?」
「うん。っていうかそもそもSBOでキャラクターを作ったのはライブするためだからね?」
「アッ」
ものすごくいまの今まで忘れてたみたいな鳴き声出た。
「まあ、正体明かすつもりもないからそのままでもいいけれど、もう一つくらいアバター作ってお気に入りに入れておけば? アイドルじゃないライブ練習用のと、レベリング用で」
「そ……そうですね。そうします」
「じゃ、ファーストソングに行こうか~」
ミオに促されて、がっくり項垂れたマギを連れファーストソングに移動。
星光騎士団の拠点で“ライブ用”のアバターを作って、完成したのはロリ系美少女。
「…………………………どうしてこんなことに」
「周と鏡音くん男の子のアバターだとバレそうなんだもん。仕方ないよ……」
「現実と徹底的にかけ離れた、むしろ『ありきたりな女性アイドル』の方がいいよねぇ」
元々女性アバターのシーナとミオはともかく、周と鏡音はアバターも本人に性格が似ているので、わざわざ女性アバターにして名前も鏡音は『マナカ』に変更。
名前まで変えたのは「レベリング用と一緒にしたくないです」という頑ななものによる。
当然声も女性っぽく高く設定。
「というか、宇月先輩と音無先輩はそのままでいいんですか?」
「俺はレベリング用とライブ用にしたいとかのこだわりないし」
「僕も~」
元々女性アバターなのでまったく気にしない淳と宇月。
再び撃沈して肩を落とす周と鏡音。
「本当はナギーも連れてきたいところだけれど、マネさんにNG返されたんだよねぇ」
「怪我はなかったと聞いていますが」
「うーん、詳しく聞いてないけれどナギーのママさんの体調が悪いんだって。もしかしたらナギーが襲われて心労が祟っちゃったのかもね」
「ああ、あのストーカー、身内の方って言ってましたもんね」
いくら腹を括ったとはいえ、本当に息子が元義兄に襲われたと聞けば具合も悪くなるだろう。
明日はバトルオーディションではあるものの、元々お休みだったので柳にはしっかりとお母さんを支えてあげてほしいと思う。
「そういえばドカてんのご両親は今回のことなんか言ってたの?」
「うちは母が金と男大好きのクズ人間で、叔母が代わりに育ててくれているんですけど」
「え。ちょ、それ僕ら聞いていいの?」
「別に隠してないので。今時珍しくもないと思いますし」
「う……ま、まあ、それはそうだけれど……」
主に魁星の母とか。
まさかの同類母登場。
「叔母は支援なしで俺を育ててくれているんです。祖父母は叔母にとっていわゆる毒親だったそうで。俺を産んだ人には甘かったそうなんですけれど、妹の叔母は蔑ろにされて育ったとかで。なんか祖父母の家から『跡取りだからよこせ』と言われて、俺が自己判断できる年齢まで黙っていろ、口出したいなら先に金を出せ、と言ったらすっこんだそうで」
「「「………………」」」
芸能科、そこそこクソ毒親が多い。
こういう話は残念ながら『よくある話』なのだが、家庭環境がそれなりにいい宇月と家族仲激良しの淳は聞く度に胸が痛んでしまう。
そして叔母、強いな。
「で、今回の件、叔母に話したんですけど『柳くんが無事でよかったね』としか。叔母は行政書士なので、もし必要なら頼ってほしいって柳くんの保護者に紹介してくれてもいい、と営業までかけてくる始末でしたね」
「おぉう……」
行政書士はなんとなく高給取りの過酷職のようなイメージ。
どんなことをするのかわからないが、宇月が「ドカテンの叔母さん、忙しそうだね」と言うと「忙しいですね。生活費は困らなかったんですけど、いつも目の下にクマを作っていて健康面が心配です」とのこと。
二人暮らしなのになかなか帰ってこない叔母だが、趣味は料理。
ストレス発散のために、休みの日は異様なほどの食材を買ってきて一週間分、二人分の食事を作り置きしてしまうらしい。
しかも、叔母は普段一人きりにしてしまうからと作り置きの食事を作る時は「一緒に作ろう」と誘ってくれる。
一人の時間が多かったので「ゲームをしたいのですが」と控えめにお願いしたら「いいよー。独り時間ばっかりでごめんね」抱き締めてお願いを聞いてくれた。
そういう一人時間をFPSゲームで潰していたら、ゲーマーの才能を開花させてしまったらしい。
そしてゲーム仲間の一人に「上手いからゲーム配信したら? 登録者数増えれば家計の足しになるし」と誘われて、お金には困っていないが血の繋がらない叔母の世話になりっ放しになるのは申し訳がない、と叔母に相談しながら配信を開始した。
配信者をやるにあたり、行政書士の叔母に口を酸っぱくして炎上の防止方法、炎上した場合の対処、大人に対しての礼儀作法、暴言リスクなどを教わったとか。
(ああ、なるほど。それであの人生何周目ってくらいの完璧な対応……)
叔母の指導のおかげだった、ということのようだ。
実際、その効果は絶大。
鏡音の丁寧かつ完璧な対応は、ネットの大多数を味方にした。
今回の件も叔母に相談して、ソッコーで叔母が代理人を立てて対応してくれたそうな。
強い。
65
お気に入りに追加
194
あなたにおすすめの小説

学園の俺様と、辺境地の僕
そらうみ
BL
この国の三大貴族の一つであるルーン・ホワイトが、何故か僕に構ってくる。学園生活を平穏に過ごしたいだけなのに、ルーンのせいで僕は皆の注目の的となってしまった。卒業すれば関わることもなくなるのに、ルーンは一体…何を考えているんだ?
【全12話になります。よろしくお願いします。】
日本一のイケメン俳優に惚れられてしまったんですが
五右衛門
BL
月井晴彦は過去のトラウマから自信を失い、人と距離を置きながら高校生活を送っていた。ある日、帰り道で少女が複数の男子からナンパされている場面に遭遇する。普段は関わりを避ける晴彦だが、僅かばかりの勇気を出して、手が震えながらも必死に少女を助けた。
しかし、その少女は実は美男子俳優の白銀玲央だった。彼は日本一有名な高校生俳優で、高い演技力と美しすぎる美貌も相まって多くの賞を受賞している天才である。玲央は何かお礼がしたいと言うも、晴彦は動揺してしまい逃げるように立ち去る。しかし数日後、体育館に集まった全校生徒の前で現れたのは、あの時の青年だった──

顔だけが取り柄の俺、それさえもひたすら隠し通してみせる!!
彩ノ華
BL
顔だけが取り柄の俺だけど…
…平凡に暮らしたいので隠し通してみせる!!
登場人物×恋には無自覚な主人公
※溺愛
❀気ままに投稿
❀ゆるゆる更新
❀文字数が多い時もあれば少ない時もある、それが人生や。知らんけど。

繋がれた絆はどこまでも
mahiro
BL
生存率の低いベイリー家。
そんな家に生まれたライトは、次期当主はお前であるのだと父親である国王は言った。
ただし、それは公表せず表では双子の弟であるメイソンが次期当主であるのだと公表するのだという。
当主交代となるそのとき、正式にライトが当主であるのだと公表するのだとか。
それまでは国を離れ、当主となるべく教育を受けてくるようにと指示をされ、国を出ることになったライト。
次期当主が発表される数週間前、ライトはお忍びで国を訪れ、屋敷を訪れた。
そこは昔と大きく異なり、明るく温かな空気が流れていた。
その事に疑問を抱きつつも中へ中へと突き進めば、メイソンと従者であるイザヤが突然抱き合ったのだ。
それを見たライトは、ある決意をし……?

主人公のライバルポジにいるようなので、主人公のカッコ可愛さを特等席で愛でたいと思います。
小鷹けい
BL
以前、なろうサイトさまに途中まであげて、結局書きかけのまま放置していたものになります(アカウントごと削除済み)タイトルさえもうろ覚え。
そのうち続きを書くぞ、の意気込みついでに数話分投稿させていただきます。
先輩×後輩
攻略キャラ×当て馬キャラ
総受けではありません。
嫌われ→からの溺愛。こちらも面倒くさい拗らせ攻めです。
ある日、目が覚めたら大好きだったBLゲームの当て馬キャラになっていた。死んだ覚えはないが、そのキャラクターとして生きてきた期間の記憶もある。
だけど、ここでひとつ問題が……。『おれ』の推し、『僕』が今まで嫌がらせし続けてきた、このゲームの主人公キャラなんだよね……。
え、イジめなきゃダメなの??死ぬほど嫌なんだけど。絶対嫌でしょ……。
でも、主人公が攻略キャラとBLしてるところはなんとしても見たい!!ひっそりと。なんなら近くで見たい!!
……って、なったライバルポジとして生きることになった『おれ(僕)』が、主人公と仲良くしつつ、攻略キャラを巻き込んでひっそり推し活する……みたいな話です。
本来なら当て馬キャラとして冷たくあしらわれ、手酷くフラれるはずの『ハルカ先輩』から、バグなのかなんなのか徐々に距離を詰めてこられて戸惑いまくる当て馬の話。
こちらは、ゆるゆる不定期更新になります。

VR『異世界』より
キリコ
BL
急速な高齢化が進む中、それに急かされるように開発が先行されていた、医療用VR技術の一般転用がされ始め早数年。
大手シェアのゲーム機メーカーが、ライバル社の幾つかと手を組み共同開発したVRゲームが、ついにお披露目されることになった。
その名も『異世界』。
世界中の名だたる頭脳によって作られたゲーム世界の神、AIユグドラシルの主張により、購入予約の権利は脳波測定を併用したテストをクリアした者を優先するとされた。後から公開されたその基準は、悪でもなく過ぎた善でもない者。毒にも薬にもならない、選りすぐりの『普通の人』。
ゲームができると思えば合格したのは嬉しい事なのに、条件に当てはまったと言われると嬉しくない。そんな微妙な気持ちながら、ついにログインできる日が来たのだった。

信じて送り出した養い子が、魔王の首を手柄に俺へ迫ってくるんだが……
鳥羽ミワ
BL
ミルはとある貴族の家で使用人として働いていた。そこの末息子・レオンは、不吉な赤目や強い黒魔力を持つことで忌み嫌われている。それを見かねたミルは、レオンを離れへ隔離するという名目で、彼の面倒を見ていた。
そんなある日、魔王復活の知らせが届く。レオンは勇者候補として戦地へ向かうこととなった。心配でたまらないミルだが、レオンはあっさり魔王を討ち取った。
これでレオンの将来は安泰だ! と喜んだのも束の間、レオンはミルに求婚する。
「俺はずっと、ミルのことが好きだった」
そんなこと聞いてないが!? だけどうるうるの瞳(※ミル視点)で迫るレオンを、ミルは拒み切れなくて……。
お人よしでほだされやすい鈍感使用人と、彼をずっと恋い慕い続けた令息。長年の執着の粘り勝ちを見届けろ!
※エブリスタ様、カクヨム様、pixiv様にも掲載しています

BLドラマの主演同士で写真を上げたら匂わせ判定されたけど、断じて俺たちは付き合ってない!
京香
BL
ダンサー×子役上がり俳優
初めてBLドラマに出演することになり張り切っている上渡梨央。ダブル主演の初演技挑戦な三吉修斗とも仲良くなりたいけど、何やら冷たい対応。
そんな中、主演同士で撮った写真や三吉の自宅でのオフショットが匂わせだとファンの間で持ち切りに。
さらに梨央が幼い頃に会った少女だという相馬も現れて──。
しゅうりおがトレンドに上がる平和な世界のハッピー現代BLです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる