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コラボユニットライブ(5)
しおりを挟む笑顔を一切崩さずに「それはなによりです」と言い放つ。
……普通に喧嘩売ってくるじゃん。
チームBのメンバーがハラハラとし始める。
日守の横の魁星も笑顔のままこめかみに青筋が浮かび上がった。
笑顔を浮かべたまま、すぐさま言い返そうとしないあたり、だいぶ大人になったもんだ。
「では、最後に……お名前は」
「星光騎士団第二部隊、花房魁星だぜー! みんなー、今日は遊びに来てくれてありがとうなー!」
わー、と客席から歓声が上がる。
そんな客席に両手で大きく手を振る魁星は、完全に“今までの花房魁星”ではない。
このようなことをすることはなかった。
ファンサービスに分厚い星光騎士団だが、魁星と周は今までやはり、どこか一歩引いた感じだったのだ。
だが、たったの一つのステージ。
それで自分から身振り手振りで客席に対して一歩歩み寄ったり、お客一人一人の顔を眺めたり、隙あらばウインクを送ったりとこの短期間で別人のようになっている。
淳も驚く変貌。
(アイドルだ)
日守の時も思ったが、先輩たちのファンサービスを見てきた魁星だからこそ、ファンサービスにも明確な差がある。
困惑してしまうけれど、このステージだけで花房魁星が“覚醒”した。
日守風雅という“ライバル”の出現で、一気にレベルアップしたのだ。
「超~楽しかった~! 今まで教わることばっかりでさー、俺なんかでも誰かに教えることができるっていう喜びとかさ。でも、教えることで『俺ってこれ、まだできないんだ』とか『これとか俺もまだ苦手だし教える立場じゃないのにな』とか、考えながらやってて、先輩たちの凄さを改めて感じたって感じ!」
「わかる」
強めに頷く淳と周。
先輩――主に宇月と花崗は教え方が上手いのだと思う。
その人が『なにができない』『なにが得意』『なにを伸ばせばいいか』『早急になにを克服すべきか』などを見極めて、レッスンメニューを組んでいく。
実際に”教える側”に回るとその見極め、難しさを実感する。
「今度は俺がコラボユニット企画したい! そのくらい面白かった! こんな機会を与えてくれたジュンジュンとみかみんにはごっつ感謝!」
満面の笑みでそう言って、千景にも手を振る。
ドルオタ千景がわかりやすく瞳を潤ませて「ひええええ……! 花びゅさ魁星くんのファンサ……」と噛み噛みになって顔を伏せた。
わかりみが深い。
「さあ、あっという間に投票時間が終わります! 残り一分! まだ投票が終わっていない方はお急ぎください!」
淳と周がステージとカメラ越しのネットリスナーに呼びかける。
一分は呼びかけているとあっという間。
「投票締め切りました~! 集計に入ります! さて、集計中に千景くんから今回のまで教わることばっかりでさー、俺なんかでも誰かに教えることができるっていう喜びとかさ。でも、教えることで『俺ってこれ、まだできないんだ』とか『これとか俺もまだ苦手だし教える立場じゃないのにな』とか、考えながらやってて、先輩たちの凄さを改めて感じたって感じ!」
「わかる」
強めに頷く淳と周。
先輩――主に宇月と花崗は教え方が上手いのだと思う。
その人が『なにができない』『なにが得意』『なにを伸ばせばいいか』『早急になにを克服すべきか』などを見極めて、レッスンメニューを組んでいく。
実際に”教える側”に回るとその見極め、難しさを実感する。
「今度は俺がコラボユニット企画したい! そのくらい面白かった! こんな機会を与えてくれたジュンジュンとみかみんにはごっつ感謝!」
満面の笑みでそう言って、千景にも手を振る。
ドルオタ千景がわかりやすく瞳を潤ませて「ひええええ……! 花びゅさ魁星くんのファンサ……」と噛み噛みになって顔を伏せた。
わかりみが深い。
「さあ、あっという間に投票時間が終わります! 残り一分! まだ投票が終わっていない方はお急ぎください!」
淳と周がステージとカメラ越しのネットリスナーに呼びかける。
一分は呼びかけているとあっという間。
「投票締め切りました~! 集計に入ります! さて、集計中に千景くんから今回の『Stars born』についてお聞きしましょう。どんなイメージで作りましたか?」
「え、っと、ええと……だ、大好きなアイドルがキラキラ輝けるように……色んなアイドルに歌ってもらいたくて……。で、で楽譜だけだった、です……。お、音無くんが、コラボユニットを提案してくれなければ……楽曲にもならなかったですし、ステージでアイドルに歌っていただけることも、ななかったの、で……」
「千景くん」
言ってて感極まってしまったのか、じわじわ涙を溜めていく千景。
そんな千景にハンカチを差し出す淳。
衣装には一応ズボンにだけポケットがついていた。
千景が思ったよりもどもらず謝らず土下座もせず比較的まともに喋ってくれたので、安心はしたのだが……まさか泣くとは。
しかも、見たことがない泣き方。
ちょんちょん、と滲んだ涙を拭いてあげると「優しいぃぃ……音無くん、優しいぃぃ、好きです~~~……」と最近よく言われることもマイクに乗ってしまう。
客席からなんともいえない空気を感じてチラリと見てみると半笑いの女性客。
あれだ、腐ってる系のナマモノオーケータイプの方々だ。
意図せず大量に釣れてしまった。
いるのは知っていたし、偏見はないのだが、これは実際大量に存在を確認すると確かに怖いものがある。
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