上 下
174 / 375

コラボユニットライブ(2)

しおりを挟む

「あ~も~、千景くん可愛い~~~~」
 
 そしてもはや流れるように自然に千景を「可愛い」と言い放つ淳。
 マイクを握り締めて半泣きになる千景。
 騒つく在校生観覧席と、一般客観覧席。
 淳の呟きはしっかりマイクに乗っている。
 
「からかわないでください~!」
「からかってないよ。マジだよ」
「!? しまってください!?」
 
 すちゃ、とどこからともなく千景の名前が書いてある推しうちわを取り出す淳。
 ドッと会場が沸き立つ。
 音無淳のお家芸になりつつある。
 
「はい、ちょっと緊張も緩んだところでご紹介します。こちらが『勇士隊』二番隊所属、御上千景みかみちかげくんで~す」
「は、はひっ……! 初めまして、勇士隊二番隊所属、御上千景でじゅっ……」
 
 噛んだ。 
 一瞬で涙を滲ませる千景に、推しうちわを振る淳。
 その満面の笑みたるや。
 背景にお花が飛んでいる。
 嬉しそう。
 
「ううう……申し訳ありません、申し訳ありません……! 噛んで申し訳ありません!」
「ね、可愛いですよね」
 
 淳が客席に同意を求めると、大きな『可愛い~~~!』という返事が各所から聞こえてくる。
 なんなら在校生観覧席から勇士隊の一番隊メンバーから特に大きな「可愛い~~~」が聞こえてきた。
 先輩たち、普通にノリノリである。
 
「千景くんはすごいんですよ~。さっきも言ったんですけど、本日歌う楽曲『Stars born』も千景くんが作詞作曲したんです。それ以外にも、夏の陣で披露された勇士隊の新曲も、千景くんが手がけたんだよね」
「はひっ……あっ……ぐ、は、はい。僭越ながら……」
「どうやらIG冬の陣でも、勇士隊は千景くんの楽曲を披露する予定だとか」
「なんで知ってるんですか……!?」
「石動先輩に聞きました」
 
 バッ、と千景が勇士隊一番隊のいるところを見る。
 石動たちがによによと笑っていた。
 
「ちなみに石動先輩に『オフレコですか?』って聞いたら『勇士隊の宣伝になるから言っていいよ』と許可をいただいております」
「ぅぉん……」
 
 抜け目ない。
 さすが三年生。
 
「もう俺はそれを聞いた時から十二月上旬のIG冬の陣が楽しみで楽しみで仕方ありません! 十二月下旬には星光騎士団・魔王軍・勇士隊主催『聖魔勇祭』があるのでそれも楽しみで仕方ないです! 十二月二日から四日まで開催される『IG冬の陣』と十二月二十四日開催の『聖魔勇祭』をどうぞ皆様もお楽しみに!」
 
 ガッツリ宣伝する淳に尊敬の眼差しを向ける千景。
 ドルオタならば「うおー!」と歓声を上げるイベント目白押しである。
 この情報だけで、会場がわかりやすく盛り上がり始めていた。
 
「と、宣伝はこのくらいにして、そろそろコラボユニット、『Stars bornスターズ・ボーン』について説明いたしましょう! 本日のコラボユニット、『Stars bornスターズ・ボーン』はチームA、チームBの二つのチーム! この二つのチームで『決闘』を行います! 勝利したチームには、本日披露するコラボユニット限定曲『Stars born』を三年間権利を有することができるようになり、東雲学院芸能科公式ワイチューブチャンネルにてMV公開する権利を得ます! そして敗北したチームには――全員センブリ茶の刑です!」
 
 淳が「センブリ茶」と叫んだ瞬間が一番盛り上がった歓声が上がる。
 お客さんたちわかりやすすぎではあるまいか。
 いや、半分以上在校生観覧席だ。
 
「と、いうわけでチームメンバーに入場していただきましょう! なお、コラボユニットメンバーは所属グループ、クラスも考慮なしのランダムシャッフルにより決定いたしました! お気に入りのアイドルが見つかりましたら、名前だけでも覚えて帰ってあげてくださいねー! まずはチームA! 言わずと知れた東雲学院芸能科古参三大大手グループの一角、星光騎士団第二部隊所属、狗央周くおうあまね!」
 
 淳が高らかに名前を呼ぶと、周がステージに上がり、上手に立って笑顔で紳士的にお辞儀をする。
 きゃー、という歓声。
 流れるように「一年生だけの新進気鋭グループ『SAMURAIサムライ』所属、白戸天皚《しらとてんがい》! 孤独なアイドルだった『Egg Ballエッグボール』を受け継ぐ王子様! 北王子密きたおうじひそか! ライブを観た人に幸運を、という願いを込めた中堅グループ『Luckラック』所属、多賀城千乃たがじょうゆきの! 双子の一年生グループ『双陽月そうようげつ』の片割れ、ちなみにこっちがお兄ちゃん! 桜屋敷太陽さくらやしきたいよう!」とあっという間にチームAを紹介していく。
 ちゃんと口上まで考えておいたらしく、千景が「台本にないよぅ」と困惑。
 つけ加えるように「そして星光騎士団第二部隊隊長の音無淳と、勇士隊御上千景! 以上七人がチームAでーす!」と締め括る。
 
『そしてStars bornスターズ・ボーン』チームBメンバーの紹介に移ります! 最近ダンスが得意かも、と気がついた星光騎士団第二部隊所属、花房魁星はなぶさかいせい! 憂鬱な月曜日を楽しくしよう! 『Mondayマンデー』所属、駿河屋祝《するがやしゅく》! 一年生グループ『SAMURAIサムライ』から第二の刺客! 山原未空やまはらみそら! 『魔王軍』から唯一の参戦、日守風雅ひもりふうが! 『双陽月そうようげつ』の弟の方って言うとムッとされます! 桜屋敷月光さくらやしきでっこう! 『勇士隊』二番隊のリーダー格、熊田芳野くまだよしの! そして一年生グループSAMURAIサムライのリーダー兼チームBのリーダー! 芽黒那実めぐろなみー!」


しおりを挟む
感想 18

あなたにおすすめの小説

君の恋人

risashy
BL
朝賀千尋(あさか ちひろ)は一番の親友である茅野怜(かやの れい)に片思いをしていた。 伝えるつもりもなかった気持ちを思い余って告げてしまった朝賀。 もう終わりだ、友達でさえいられない、と思っていたのに、茅野は「付き合おう」と答えてくれて——。 不器用な二人がすれ違いながら心を通わせていくお話。

目が覚めたら囲まれてました

るんぱっぱ
BL
燈和(トウワ)は、いつも独りぼっちだった。 燈和の母は愛人で、すでに亡くなっている。愛人の子として虐げられてきた燈和は、ある日家から飛び出し街へ。でも、そこで不良とぶつかりボコボコにされてしまう。 そして、目が覚めると、3人の男が燈和を囲んでいて…話を聞くと、チカという男が燈和を拾ってくれたらしい。 チカに気に入られた燈和は3人と共に行動するようになる。 不思議な3人は、闇医者、若頭、ハッカー、と異色な人達で! 独りぼっちだった燈和が非日常な幸せを勝ち取る話。

4人の兄に溺愛されてます

まつも☆きらら
BL
中学1年生の梨夢は5人兄弟の末っ子。4人の兄にとにかく溺愛されている。兄たちが大好きな梨夢だが、心配性な兄たちは時に過保護になりすぎて。

転生したけど赤ちゃんの頃から運命に囲われてて鬱陶しい

翡翠飾
BL
普通に高校生として学校に通っていたはずだが、気が付いたら雨の中道端で動けなくなっていた。寒くて死にかけていたら、通りかかった馬車から降りてきた12歳くらいの美少年に拾われ、何やら大きい屋敷に連れていかれる。 それから温かいご飯食べさせてもらったり、お風呂に入れてもらったり、柔らかいベッドで寝かせてもらったり、撫でてもらったり、ボールとかもらったり、それを投げてもらったり───ん? 「え、俺何か、犬になってない?」 豹獣人の番大好き大公子(12)×ポメラニアン獣人転生者(1)の話。 ※どんどん年齢は上がっていきます。 ※設定が多く感じたのでオメガバースを無くしました。

地味で冴えない俺の最高なポディション。

どらやき
BL
前髪は目までかかり、身長は160cm台。 オマケに丸い伊達メガネ。 高校2年生になった今でも俺は立派な陰キャとしてクラスの片隅にいる。 そして、今日も相変わらずクラスのイケメン男子達は尊い。 あぁ。やばい。イケメン×イケメンって最高。 俺のポディションは片隅に限るな。

【BL】国民的アイドルグループ内でBLなんて勘弁してください。

白猫
BL
国民的アイドルグループ【kasis】のメンバーである、片桐悠真(18)は悩んでいた。 最近どうも自分がおかしい。まさに悪い夢のようだ。ノーマルだったはずのこの自分が。 (同じグループにいる王子様系アイドルに恋をしてしまったかもしれないなんて……!) (勘違いだよな? そうに決まってる!) 気のせいであることを確認しようとすればするほどドツボにハマっていき……。

愛され末っ子

西条ネア
BL
本サイトでの感想欄は感想のみでお願いします。全ての感想に返答します。 リクエストはTwitter(@NeaSaijou)にて受付中です。また、小説のストーリーに関するアンケートもTwitterにて行います。 (お知らせは本編で行います。) ******** 上園琉架(うえぞの るか)四男 理斗の双子の弟 虚弱 前髪は後々左に流し始めます。髪の毛の色はご想像にお任せします。深い赤みたいなのアースアイ 後々髪の毛を肩口くらいまで伸ばしてゆるく結びます。アレルギー多め。その他の設定は各話で出てきます! 上園理斗(うえぞの りと)三男 琉架の双子の兄 琉架が心配 琉架第一&大好き 前髪は後々右に流します。髪の毛の色はご想像にお任せします。深い緑みたいなアースアイ 髪型はずっと短いままです。 琉架の元気もお母さんのお腹の中で取っちゃった、、、 上園静矢 (うえぞの せいや)長男 普通にサラッとイケメン。なんでもできちゃうマン。でも弟(特に琉架)絡むと残念。弟達溺愛。深い青色の瞳。髪の毛の色はご想像にお任せします。 上園竜葵(うえぞの りゅうき)次男 ツンデレみたいな、考えと行動が一致しないマン。でも弟達大好きで奮闘して玉砕する。弟達傷つけられたら、、、 深い青色の瞳。兄貴(静矢)と一個差 ケンカ強い でも勉強できる。料理は壊滅的 上園理玖斗(うえぞの りくと)父 息子達大好き 藍羅(あいら・妻)も愛してる 家族傷つけるやつ許さんマジ 琉架の身体が弱すぎて心配 深い緑の瞳。普通にイケメン 上園藍羅(うえぞの あいら) 母 子供達、夫大好き 母は強し、の具現化版 美人さん 息子達(特に琉架)傷つけるやつ許さんマジ。 てか普通に上園家の皆さんは顔面偏差値馬鹿高いです。 (特に琉架)の部分は家族の中で順列ができているわけではなく、特に琉架になる場面が多いという意味です。 琉架の従者 遼(はる)琉架の10歳上 理斗の従者 蘭(らん)理斗の10歳上 その他の従者は後々出します。 虚弱体質な末っ子・琉架が家族からの寵愛、溺愛を受ける物語です。 前半、BL要素少なめです。 この作品は作者の前作と違い毎日更新(予定)です。 できないな、と悟ったらこの文は消します。 ※琉架はある一定の時期から体の成長(精神も若干)がなくなる設定です。詳しくはその時に補足します。 皆様にとって最高の作品になりますように。 ※作者の近況状況欄は要チェックです! 西条ネア

無自覚な

ネオン
BL
小さい頃に母が再婚した相手には連れ子がいた。 1つ上の義兄と1つ下の義弟、どちらも幼いながらに イケメンで運動もでき勉強もできる完璧な義兄弟だった。 それに比べて僕は周りの同級生や1つ下の義弟よりも小さくて いじめられやすく、母に教えられた料理や裁縫以外 何をやっても平凡だった。 そんな僕も花の高校2年生、1年生の頃と変わらず平和に過ごしてる それに比べて義兄弟達は学校で知らない人はいない そんな存在にまで上り積めていた。 こんな僕でも優しくしてくれる義兄と 僕のことを嫌ってる義弟。 でも最近みんなの様子が変で困ってます 無自覚美少年主人公が義兄弟や周りに愛される話です。

処理中です...