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IG夏の陣、三日目(3)
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三日目、三回戦目。
残っているのは昨年三位の『Success』、『Blossom』、星光騎士団、勇士隊。
なんと今年の五月デビューの超大型新人と学生セミプロが二グループという、とんだ大番狂せに特番と会場の盛り上がりはガンガン上昇中。
どこが優勝しても初優勝。
中でもBlossomは初出場初優勝がかかっており、『いいね!』の数は期待の高さからすでにダントツ。
しかし準々決勝と準決勝、決勝は『CRYWN』や協賛事務所社長数名による投票も関わってきて、ファンや視聴者だけの投票ではないので覆りやすい。
とはいえ、ここまできて昨年三位のSuccessが勝利すると思う者は少ないだろう。
むしろ、初出場初優勝が見たい。
そんな視聴者の期待が視聴率にも反映されている。
『さあ、いよいよ今年のIG夏の陣も佳境に入ってまいりました!』
『抽選の結果、一回目の準決勝は星光騎士団! VS! Success!』
『二回目の準決勝対戦カードはBlossom! VS! 勇士隊! となりました! さあ、どちらが決勝にコマを進めるのでしょうかー!』
司会のCRYWNがマイクを片手にステージの上から進行を行う。
それを部隊袖で見ていた星光騎士団、一年生組――。
「魁星、周、顔死んでるけど大丈夫?」
「え、や、いやぁ……うん……」
「体力的にも精神的にもしんどくはなっています。もちろん、頑張りますけれど……」
「わかる~。正直ここまで来れると思ってなかったもんねぇ。僕も久しぶりに吐きそう~……」
「……(コクコク)」
体力的、技術的、経験的にも魁星と周の疲弊は激しい。
正直もう限界を超えている。
二年生の宇月と後藤もこの大舞台での連続ライブに疲労の蓄積が激しい。
かく言う花崗も正直つらそうだ。
度々抜ける綾城の代わりに、リーダー代行としてやってきているのだから無理もない。
「お待たせ! みんな、相手が決まったね。あれ、大丈夫かな?」
「あ、綾城先輩……」
しかし、自分たちの倍、戦っている綾城が披露を見せずに駆けつけて笑顔で「あと二回勝てば優勝だよ!」と言うと「疲れた」なんて絶対に言えない。
なんかもう、限界をとうに超えて逆にテンションが上がっている時のアレだ。
花崗の顔が完全に不安げである。
「珀ちゃん、ほんまに大丈夫かいな? 顔、ちょっと白いで?」
「大丈夫! 倒れる時は全部終わってからにするよ!」
「あかん、あかんてぇ……」
「ひまりちゃんと美桜ちゃんとこたちゃんには明日からアミューズメントパークのライブに行ってもらわなきゃいけないけれど、ここで優勝を諦めてしまうのは違うと思う。強制はしたくないけれど、もう一踏ん張りしてほしい。僕とひまりちゃんは夏の陣が終わったら団長と副団長を引退する。どうせならなにも思い残すことのない形で引き継ぎしたいんだ。……お願い」
真顔での頼みに、疲れ果てていた一、二年も真顔になる。
三年生二人は星光騎士団を辞めるわけではない。
けれど、彼らが団長と副団長を引き継いで、今までの努力の集大成なのだ。
それを聞いて宇月も「もちろんですよぉ」と笑顔を作る。
「それにそれにー、今日優勝したら次期団長と副団長の僕とごとちゃんに箔がつくってモンですよ~! 精も根も尽き果ててでも優勝もぎ取っちゃいましょ~! んねー、ごとちゃん!」
「うん……」
「ははは……。もー、ほんま無茶言うわ。一年坊主ども、あと二回や。気張っていけるかいな?」
「や、やります!」
「俺も! もー、限界の一つや二つ超えてみせますよ!」
「ええ、ここで気張れなければ、入団から頑張ってきた意味がありませんよね……!」
「ありがとう……!」
拳を突き出し合い、全員で拳を繋いで「おー」と気合を入れ直してスタッフに呼ばれ、ステージに上がる。
歌う曲は『before it scatters』と『A flower of love patterned with stars』。
二年生、三年生中心に歌って一年生はバックダンスに注力。
MCは全員で行う。
しかし、相手は昨年夏の陣三位。
ここで学生セミプロに負けるつもりはないとばかりに圧倒的な歌唱力を見せつけてきた。
あとは祈るしかないが、淳たちも出せるものは全部出せたので後悔はない。
「綾城先輩と花崗先輩のハモリがほんっと何回聞いても超綺麗でした~! 後ろから見てても宇月先輩のソロ部分可愛さとかっこよさは最高でしたし、後藤先輩のソロパートの伸びとパフォーマンス、特に歌詞後半の振り返る瞬間は後ろから見てドキッとしちゃいました~! ステップもキレがあって、入れ替わりのスムーズさにも見惚れちゃいましたよねぇ。特に綾城先輩と宇月先輩の前後が斜めに入れ替わる瞬間とかタイミング完璧でしたし、二曲目の洋剣の扱いが紳士的で手首の動きとか見てるとポーズの決めている時の持ち方がこう、色っぽくってドキドキしちゃうっていうか~。はあ~~~~、やっぱり客席から見たかったなぁー! いや、真後ろから見られるなんてそれはそれで贅沢なんですけど~」
「「「「元気すぎない?」」」」
舞台袖に戻るなり、ドルオタは水を一口飲んだあとノンストップで感想を述べる。
なんかもう最近一切隠さなくなってきている気がするんだが。
さすがに疲れ果ててげっそりとしている花崗と宇月と魁星と周に、ドン引きされている。
なお、綾城は速攻で隣のステージに移動して行った。
Successがパフォーマンスをしている間に、Blossomの綾城珀に返信しなければならない。
そしてその間、結果待ちの星光騎士団で淳は先程のステージの感想を熱弁する。
なぜか手には星光騎士団メンバー全員の推しうちわ。
使わないのに持ち歩くドルオタ。
残っているのは昨年三位の『Success』、『Blossom』、星光騎士団、勇士隊。
なんと今年の五月デビューの超大型新人と学生セミプロが二グループという、とんだ大番狂せに特番と会場の盛り上がりはガンガン上昇中。
どこが優勝しても初優勝。
中でもBlossomは初出場初優勝がかかっており、『いいね!』の数は期待の高さからすでにダントツ。
しかし準々決勝と準決勝、決勝は『CRYWN』や協賛事務所社長数名による投票も関わってきて、ファンや視聴者だけの投票ではないので覆りやすい。
とはいえ、ここまできて昨年三位のSuccessが勝利すると思う者は少ないだろう。
むしろ、初出場初優勝が見たい。
そんな視聴者の期待が視聴率にも反映されている。
『さあ、いよいよ今年のIG夏の陣も佳境に入ってまいりました!』
『抽選の結果、一回目の準決勝は星光騎士団! VS! Success!』
『二回目の準決勝対戦カードはBlossom! VS! 勇士隊! となりました! さあ、どちらが決勝にコマを進めるのでしょうかー!』
司会のCRYWNがマイクを片手にステージの上から進行を行う。
それを部隊袖で見ていた星光騎士団、一年生組――。
「魁星、周、顔死んでるけど大丈夫?」
「え、や、いやぁ……うん……」
「体力的にも精神的にもしんどくはなっています。もちろん、頑張りますけれど……」
「わかる~。正直ここまで来れると思ってなかったもんねぇ。僕も久しぶりに吐きそう~……」
「……(コクコク)」
体力的、技術的、経験的にも魁星と周の疲弊は激しい。
正直もう限界を超えている。
二年生の宇月と後藤もこの大舞台での連続ライブに疲労の蓄積が激しい。
かく言う花崗も正直つらそうだ。
度々抜ける綾城の代わりに、リーダー代行としてやってきているのだから無理もない。
「お待たせ! みんな、相手が決まったね。あれ、大丈夫かな?」
「あ、綾城先輩……」
しかし、自分たちの倍、戦っている綾城が披露を見せずに駆けつけて笑顔で「あと二回勝てば優勝だよ!」と言うと「疲れた」なんて絶対に言えない。
なんかもう、限界をとうに超えて逆にテンションが上がっている時のアレだ。
花崗の顔が完全に不安げである。
「珀ちゃん、ほんまに大丈夫かいな? 顔、ちょっと白いで?」
「大丈夫! 倒れる時は全部終わってからにするよ!」
「あかん、あかんてぇ……」
「ひまりちゃんと美桜ちゃんとこたちゃんには明日からアミューズメントパークのライブに行ってもらわなきゃいけないけれど、ここで優勝を諦めてしまうのは違うと思う。強制はしたくないけれど、もう一踏ん張りしてほしい。僕とひまりちゃんは夏の陣が終わったら団長と副団長を引退する。どうせならなにも思い残すことのない形で引き継ぎしたいんだ。……お願い」
真顔での頼みに、疲れ果てていた一、二年も真顔になる。
三年生二人は星光騎士団を辞めるわけではない。
けれど、彼らが団長と副団長を引き継いで、今までの努力の集大成なのだ。
それを聞いて宇月も「もちろんですよぉ」と笑顔を作る。
「それにそれにー、今日優勝したら次期団長と副団長の僕とごとちゃんに箔がつくってモンですよ~! 精も根も尽き果ててでも優勝もぎ取っちゃいましょ~! んねー、ごとちゃん!」
「うん……」
「ははは……。もー、ほんま無茶言うわ。一年坊主ども、あと二回や。気張っていけるかいな?」
「や、やります!」
「俺も! もー、限界の一つや二つ超えてみせますよ!」
「ええ、ここで気張れなければ、入団から頑張ってきた意味がありませんよね……!」
「ありがとう……!」
拳を突き出し合い、全員で拳を繋いで「おー」と気合を入れ直してスタッフに呼ばれ、ステージに上がる。
歌う曲は『before it scatters』と『A flower of love patterned with stars』。
二年生、三年生中心に歌って一年生はバックダンスに注力。
MCは全員で行う。
しかし、相手は昨年夏の陣三位。
ここで学生セミプロに負けるつもりはないとばかりに圧倒的な歌唱力を見せつけてきた。
あとは祈るしかないが、淳たちも出せるものは全部出せたので後悔はない。
「綾城先輩と花崗先輩のハモリがほんっと何回聞いても超綺麗でした~! 後ろから見てても宇月先輩のソロ部分可愛さとかっこよさは最高でしたし、後藤先輩のソロパートの伸びとパフォーマンス、特に歌詞後半の振り返る瞬間は後ろから見てドキッとしちゃいました~! ステップもキレがあって、入れ替わりのスムーズさにも見惚れちゃいましたよねぇ。特に綾城先輩と宇月先輩の前後が斜めに入れ替わる瞬間とかタイミング完璧でしたし、二曲目の洋剣の扱いが紳士的で手首の動きとか見てるとポーズの決めている時の持ち方がこう、色っぽくってドキドキしちゃうっていうか~。はあ~~~~、やっぱり客席から見たかったなぁー! いや、真後ろから見られるなんてそれはそれで贅沢なんですけど~」
「「「「元気すぎない?」」」」
舞台袖に戻るなり、ドルオタは水を一口飲んだあとノンストップで感想を述べる。
なんかもう最近一切隠さなくなってきている気がするんだが。
さすがに疲れ果ててげっそりとしている花崗と宇月と魁星と周に、ドン引きされている。
なお、綾城は速攻で隣のステージに移動して行った。
Successがパフォーマンスをしている間に、Blossomの綾城珀に返信しなければならない。
そしてその間、結果待ちの星光騎士団で淳は先程のステージの感想を熱弁する。
なぜか手には星光騎士団メンバー全員の推しうちわ。
使わないのに持ち歩くドルオタ。
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