75 / 430
SBOのライブ前
しおりを挟む「今年の前期トップ4、出ましたね!!」
「あ~、あれもう出たんかぁ。まあ、三年はクリスマスまで時間あらへんしな。どうせ去年と同じやろ」
「「トップ4?」」
「「今言う?」」
八月一日。
今日から夏休み、という日の夜に、星光騎士団の面々はSBOにログインしていた。
綾城が仕事の都合で遅くなるので、早めにログインして少し狩りに来ていたのだが、開口一番ウキウキの淳ことシーナが「綾城先輩がやっぱり一位でしたよ!」と告げる。
本気でわからんという表情の魁星ことセイと、周ことルカ。
ああ、知らないんだねぇ、と薄目になるミオと琥太郎ことルーヴァ。
「っていうか入学してもう半年以上経ってんでしょぉ? 逆になんで知らないのぉ? お昼に『イースト・ホーム』トップにお知らせ出てたじゃん。さてはナッシー以外チェックしてなかったなぁ!?」
「「「う」」」
「一年生はわかるんですけど、みか……ヒナ先輩も見てないんですか」
二年生ズに叱られて渋めな表情になるダメな一年生と三年生。
速攻で話を逸らすべく、セイがシーナに「それなに?」と聞き返した。
「もお、授業でやったのに。まあいいや。トップ4は半年に一度発表される東雲学院芸能科のアイドル売り上げ順位上位四名の通称だよ。東雲学院芸能科アイドルの人気を売り上げという形で数値化、順位付けすることでお客さんに『このアイドルを推せばまず間違いないよ』っていう入口にしたり、各芸能事務所にアピールもしているんだ。まあ、事務所アピールは主にまだ事務所が決まっていない生徒向けではあるんだけれど。ちなみに、なんで五人じゃなく上位四人なのかというと三大大手グループで固められがちなのと五人より四人の方がスケジュール合わせやすいかららしいよ。三人だと年末の一番大きなライブなのにこじんまりとして見えるし、四人がちょうどいいってコトみたい。で、後期のランキング上位四人は所属グループ無関係に臨時ユニットを組んで冬の陣のあとの東雲学院芸能科定期ライブの大型版、三大大手グループ主催『聖魔勇祭』でライブするんだよ。今年の前期に発表された総合ランキングの結果は後期になってもほとんど動かないから、実質その四人で臨時ユニットを組むことになるだろうってファンの間では有名なんだ! ちなみに学年別もあるよ。一年生、二年生のランキング上位四名も『聖魔勇祭』で臨時ユニットを組んでトップ4の前座ライブをやることになるから、ちゃんとチェックしておいた方がいいと思うな」
「「へ~~~」」
「へ~……って……なんで他人事みたいな声出してるの? セイは二位、ルカは三位だよ? 一年生は順位変動しやすいから気は抜けないけれど、今のまま頑張れば三人で『聖魔勇祭』でユニットを組めるんだからもっと喜んでもいいと思うんだけど」
「「え?」」
素っ頓狂な声で聞き返すセイとルカ。
しかしミオも謎のドヤ顔で「そうそう、ほんとだよ。まあ、僕らが指導したんだから当然の結果だよね」と胸を張る。
その言い方は、まるで――
「シーナが一位なんですね?」
「うん! 本当に嬉しい! 定期ライブで今まで一緒に応援していたドルオタ仲間がすごく応援してくれたおかげみたい。でも、ドルオタ仲間だからってグッズを買ってくれていたみたいだけど、ここからはそうもいかないから気を引き締めないとだめだよね。前期は俺、結局SBO内のライブでしか歌を歌えなかった。歌ってないのにランキングに載るなんて前代未聞だけど、正直全然実力じゃないから実力で選ばれた二人に負けないように頑張るよ」
「うわあ、真面目くんやなぁ。まあでも実際一年の前期から二年の前期までは上位も結構入れ替わるし、気ぃ抜かん方がええのは本当やね。ちなみにわしは何位やったん?」
「花崗先輩……じゃなくて、ヒナ先輩は総合五位でしたよ。売上も二千円差で、本当に惜しかったです。やっぱり大久保先輩は強いですね」
「ああ、大久保ちゃん相手にそんな僅差なら上出来やね。去年は八万円差ぁつけられとって、ああ、これ以上上は無理やなぁって思っとったから。ほんま、校内売り上げだけやなくてお仕事の報酬加わったら負ける気はせぇへんけど……ルールやししゃーないね」
なんて言葉自体は悔しそうなのに、腕を組んで肩を揺らしながら笑っている。
実際ヒナはすでに読者モデルではなく事務所所属のプロのモデル。
ランキングは「東雲学院芸能科公式グッズ売り上げ順位」で決まる。
外部依頼の仕事の報酬を足せば、このランキングは大きく変動するだろう。
あくまで外向け。
まだ事務所の決っていない生徒を、各事務所で精査する意味が大きいので仕事の報酬は含まれない。
仕事の報酬が含まれるランキングも存在するにはするが、校内向けに年度末に発表される。
だから余裕の笑みなのだろう。
「そ、そっか……淳ちゃんしかうちわ見たことなかったけど……俺らも一応応援してもらってるんだな。へへ、そう考えるとマジやる気出るね! ちなみに一年の四位って誰だったの?」
「B組の日守風雅くん。魔王軍東の四天王麻野ルイがリーダーを務める魔王軍東軍所属! 身長172センチ、体重58キロ、京都出身でお好み焼きとお祭り好き。趣味はお好み焼きソース作り、特技は弦楽器一般。魁星もカッコいいけど、B組の風雅くんと御上千景くんは飛び向けて顔がいいよ~。魁星と風雅くんと千景くんを並べてチェキ撮りたい!」
(((((ドルオタ出てるなぁ)))))
一年生のデータも頭に入っているのだろう。
恐ろしい。
しかし、セイがじわりと変な顔をする。
「俺、顔カッコいい?」
「え? うん! 魁星、顔カッコいいよ!」
「その――風雅くんと千景君とどっちがカッコいい?」
「へ?」
それはもう、ずいぶん変な顔で聞き返したと思う。
セイが唇を尖らせて聞くので、若干困惑しながら答える。
「タイプが違うから、三人の誰が一番って決めるのはなんか違うっていうか……?」
「…………」
「なんで怒るの!?」
「別にぃ……」
「じゃあ、シーナちゃんは誰が一番好みなん?」
ヒナの質問にハッ、と顔を上げるシーナとセイ。
三者三様の美形の、どれが一番とは決められない。
だが、好みなら本人に決められるだろう。
セイがガバっとシーナの方を期待に満ちた目で見る。
「好みで言ったら千景くん! すっごいダウナー美人系! 歌も上手いし、ダンスが苦手なところが栄治様にも似通っていてマジ推したい! 勇士隊に入隊したって言ってたし、きっと来年には一番隊になるよね~」
「………………」
「あれ? セイ、なんでさっきより怒ってるの!?」
「まあ、好みの話しやし……これはしゃーなしやん? でもなんかごめん」
無慈悲が過ぎる。
救いのつもりがトドメだった。
ヒナがセイの肩を叩き、小さな声で謝るがもう遅い。
「美人系が好みなんだぁ? ヒナ先輩とバアル先輩の顔面ならどっちが好み?」
「顔だけですか? ヒナ先輩もバアル先輩もすごい美人系ですし甲乙つけがたいですね」
「じゃあ、セイくんとルカくんの顔面なら?」
「ルイくんですね!」
「ミオちゃん、ルーヴァちゃん、やめてあげてぇな」
「ふ、ふーん……魁星よりも、自分なんですか……そうですか……ふーん……」
わかりやすく嬉しそうなルイを、セイが嫉妬を隠すことなく睨みつける。
ヒナが小さく「罪な男やねぇ……」と呟く。
その「罪な男」っぷりが本領発揮されるのを彼らが思い知るのは、このあとである。
37
お気に入りに追加
194
あなたにおすすめの小説

主人公のライバルポジにいるようなので、主人公のカッコ可愛さを特等席で愛でたいと思います。
小鷹けい
BL
以前、なろうサイトさまに途中まであげて、結局書きかけのまま放置していたものになります(アカウントごと削除済み)タイトルさえもうろ覚え。
そのうち続きを書くぞ、の意気込みついでに数話分投稿させていただきます。
先輩×後輩
攻略キャラ×当て馬キャラ
総受けではありません。
嫌われ→からの溺愛。こちらも面倒くさい拗らせ攻めです。
ある日、目が覚めたら大好きだったBLゲームの当て馬キャラになっていた。死んだ覚えはないが、そのキャラクターとして生きてきた期間の記憶もある。
だけど、ここでひとつ問題が……。『おれ』の推し、『僕』が今まで嫌がらせし続けてきた、このゲームの主人公キャラなんだよね……。
え、イジめなきゃダメなの??死ぬほど嫌なんだけど。絶対嫌でしょ……。
でも、主人公が攻略キャラとBLしてるところはなんとしても見たい!!ひっそりと。なんなら近くで見たい!!
……って、なったライバルポジとして生きることになった『おれ(僕)』が、主人公と仲良くしつつ、攻略キャラを巻き込んでひっそり推し活する……みたいな話です。
本来なら当て馬キャラとして冷たくあしらわれ、手酷くフラれるはずの『ハルカ先輩』から、バグなのかなんなのか徐々に距離を詰めてこられて戸惑いまくる当て馬の話。
こちらは、ゆるゆる不定期更新になります。

VR『異世界』より
キリコ
BL
急速な高齢化が進む中、それに急かされるように開発が先行されていた、医療用VR技術の一般転用がされ始め早数年。
大手シェアのゲーム機メーカーが、ライバル社の幾つかと手を組み共同開発したVRゲームが、ついにお披露目されることになった。
その名も『異世界』。
世界中の名だたる頭脳によって作られたゲーム世界の神、AIユグドラシルの主張により、購入予約の権利は脳波測定を併用したテストをクリアした者を優先するとされた。後から公開されたその基準は、悪でもなく過ぎた善でもない者。毒にも薬にもならない、選りすぐりの『普通の人』。
ゲームができると思えば合格したのは嬉しい事なのに、条件に当てはまったと言われると嬉しくない。そんな微妙な気持ちながら、ついにログインできる日が来たのだった。

顔だけが取り柄の俺、それさえもひたすら隠し通してみせる!!
彩ノ華
BL
顔だけが取り柄の俺だけど…
…平凡に暮らしたいので隠し通してみせる!!
登場人物×恋には無自覚な主人公
※溺愛
❀気ままに投稿
❀ゆるゆる更新
❀文字数が多い時もあれば少ない時もある、それが人生や。知らんけど。
日本一のイケメン俳優に惚れられてしまったんですが
五右衛門
BL
月井晴彦は過去のトラウマから自信を失い、人と距離を置きながら高校生活を送っていた。ある日、帰り道で少女が複数の男子からナンパされている場面に遭遇する。普段は関わりを避ける晴彦だが、僅かばかりの勇気を出して、手が震えながらも必死に少女を助けた。
しかし、その少女は実は美男子俳優の白銀玲央だった。彼は日本一有名な高校生俳優で、高い演技力と美しすぎる美貌も相まって多くの賞を受賞している天才である。玲央は何かお礼がしたいと言うも、晴彦は動揺してしまい逃げるように立ち去る。しかし数日後、体育館に集まった全校生徒の前で現れたのは、あの時の青年だった──

学園の俺様と、辺境地の僕
そらうみ
BL
この国の三大貴族の一つであるルーン・ホワイトが、何故か僕に構ってくる。学園生活を平穏に過ごしたいだけなのに、ルーンのせいで僕は皆の注目の的となってしまった。卒業すれば関わることもなくなるのに、ルーンは一体…何を考えているんだ?
【全12話になります。よろしくお願いします。】

なんで俺の周りはイケメン高身長が多いんだ!!!!
柑橘
BL
王道詰め合わせ。
ジャンルをお確かめの上お進み下さい。
7/7以降、サブストーリー(土谷虹の隣は決まってる!!!!)を公開しました!!読んでいただけると嬉しいです!
※目線が度々変わります。
※登場人物の紹介が途中から増えるかもです。
※火曜日20:00
金曜日19:00
日曜日17:00更新

BLドラマの主演同士で写真を上げたら匂わせ判定されたけど、断じて俺たちは付き合ってない!
京香
BL
ダンサー×子役上がり俳優
初めてBLドラマに出演することになり張り切っている上渡梨央。ダブル主演の初演技挑戦な三吉修斗とも仲良くなりたいけど、何やら冷たい対応。
そんな中、主演同士で撮った写真や三吉の自宅でのオフショットが匂わせだとファンの間で持ち切りに。
さらに梨央が幼い頃に会った少女だという相馬も現れて──。
しゅうりおがトレンドに上がる平和な世界のハッピー現代BLです。

言い逃げしたら5年後捕まった件について。
なるせ
BL
「ずっと、好きだよ。」
…長年ずっと一緒にいた幼馴染に告白をした。
もちろん、アイツがオレをそういう目で見てないのは百も承知だし、返事なんて求めてない。
ただ、これからはもう一緒にいないから…想いを伝えるぐらい、許してくれ。
そう思って告白したのが高校三年生の最後の登校日。……あれから5年経ったんだけど…
なんでアイツに馬乗りにされてるわけ!?
ーーーーー
美形×平凡っていいですよね、、、、
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる