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新グループ発表
しおりを挟む『SBO』内で行われた情報イベントの五日後、春日芸能事務所のツブヤキッターに張りついていると昼の十二時に動画が投稿された。
ちょうど昼休み。
教室で魁星、周、天皚とご飯を食べ始めたところ音量最大で再生する。
『花開く。アイドル界に新たな星がその輝きを放つ! 新グループBlossom――本日デビュー!』
という文句と共にメンバーが公表された。
動画にいたのはやはり綾城珀。
煽り文句は『東雲学院芸能科、新進気鋭“星光騎士団”団長』。
次に甘夏拳志郎。
「「「「誰……?」」」」
あとで検索しよう、ということで一致。
煽り文句は『西雲学園芸能科、落ちこぼれと呼ばれた蕾が今花開く』。
さらに公表済みの神野栄治、鶴城一晴が続いた。
栄治の流し目に射抜かれて、思わず天を仰ぐ淳。
(今夜『SBO』にログインして、オンリーライブの追加情報が出てないか確認しなければ)
それはもはやファンとして、追っかけとしての決定事項である。
イケメンすぎて、美しすぎて再度再生を行いそのシーンだけスクショを撮りまくった。
これはしばらく待ち受け決定だ。
「ああああぁ……栄治様かっこいい、美しい、もう永遠に見てられるうぅ」
「淳くん、本当に神野栄治好きだなぁ。まあ、モデルだけあってイケメンなのは認めるかどさー。歌とか歌えんの? この人」
「はぁ!? 白戸、知らねーの!? 神野栄治、元星光騎士団団長だぜ?」
「え!?」
「そうそう、歌も踊りも完璧で有名。司会進行もできるし、星光騎士団のワイチューブチャンネルを開設したのも栄治様! 料理番組まで始めて、星光騎士団のワイチューブチャンネルでは今も一ヶ月に一本料理動画があげられているんだ! 見る? 見る? ワイチューブチャンネルに今も栄治様現役時代の動画残ってるよ! 見る? 見ようか!」
「い、いい! いいよ! 大丈夫! ガチ勢すぎない!?」
天皚が引くほどグイグイ食い気味にワイチューブチャンネルの動画を差し出す淳。
神野栄治括りの再生リストが五種ほどある。
アイドル現役時代の神野栄治。
神野栄治の料理関連。
モデル関連の神野栄治。
神野栄治関係の切り抜き。
その他、神野栄治関係のもの。
ツルカミコンビ括り。
「あ、再生リスト六種類だった」
「「「ガチ勢すぎない……?」」」
「ガチ勢ですが?」
妹の智子はもっと細かくカテゴライズしているかもしれない。
しかし、三周目の告知動画を見ながら改めて思う。
「この甘夏拳志郎って人、検索したら出てくるかな?」
「そういえば西雲学園芸能科の人っぽいよね。ワイチューブに動画あるかな?」
スマホをぽちぽちしていると、他のクラスメイトが「なに見てんの?」と話しかけてきた。
天皚が自分のスマートフォンから先程の動画を見せると、クラスメイトが目を丸くして「え、この日付……」と呟く。
それに天皚もようやく日付がライブオーディションの日だと気がついた。
「え、本当だ。この人たちの初ライブ、これ、ライブオーディションの日……」
「ああ、俺ら――東雲と西雲の新入生対決ライブはは“前座”ですよ」
しれっとクラスメイトに暴露したのは周。
それを聞いて、他のクラスメイトもこちらを凝視した。
天皚を含め、淳たち以外は初めてそれを知ったのでショックを受けた表情。
「し、知ってたのか!?」
「公式発表までは喋るな、って綾城先輩に言われていたからな」
「それでも事務所に所属できる好機であることには変わりない。春日芸能事務所は綾城先輩たち『 Blossom』を皮切りに、アイドルに力を入れていくつもりなのでしょう。ならば、この機会を我が物とするべきです。今所属しておけば卒業後の活動にも安心感が生まれますからね」
と、周がドヤ顔で魁星につけ加える。
それを聞いて、ようやくクラスメイトたちが顔を見合わせて「確かに」と納得した。
そう、しょせん自分たちは“前座”だ。
けれど、チャンスであることに変わりはないのだ。
淳は歌えないけれど、ダンスをもっと練習して、練度を上げれば見てもらえるかもしれない。
春日芸能事務所に、入所できたなら――
(そうだ。神野栄治様と、直接会える。いや、推しに認知されるのはちょっとどうかと思うけれど……。それに、春日芸能事務所には俳優が鶴城さんしかいなかったはずだし俺にもチャンスはある……よね?)
鶴城一晴も最近は2.5次元に積極的に出ている。
歌も踊りも殺陣もできる時代劇出身の超イケメン。
それはもう重宝されている。
ミュージカル俳優志望の淳にも、そういうジャンルへの出演は可能性があるはず。
「あ、この人かな」
「甘夏って人?」
「うん。ワイチューブに映像はなかったんだけど、春日芸能事務所の公式ホームページにプロフィールが載ってるよ」
甘夏拳志郎、十七歳。西雲学園普通科二年生。身長177センチ、AB型。
「「「ふ、普通科!?」」」
「芸能科じゃないの!?」
驚愕すぎて放課後、綾城に聞いてみることにした。
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