上 下
13 / 42

第13話ですわ!

しおりを挟む


 チュートリアル授業は『細剣』と『短剣』と『大剣』スキルが終わったところ。
 次はいよいよ、他の身分だと修得が遅れてしまう『魔法』スキルですわ!
 それを修得すればヒロインとハイル様の『一緒にお勉強』イベント!
 わたくしは二人が仲良くお勉強や訓練を行い、ハイル様が立ち去った後にヒロインに背後から魔法をぶつけて模擬戦と称し、多勢に無勢で襲いかかるのですわ。
 ふふふ、予習は完璧ですわね!
 ですが、ハイル様はきちんとエルミーさんとお勉強や訓練をしてくださるかしら?
 お食事のイベントがどうなったか分からないから、なんだか不安ですわ。

「キャリー、足下気をつけて」
「は、はい!」

 あ、いけませんわ。
 わたくしったら、ここは初心者向けとはいえダンジョン。
 気を抜いてはいけませんでしたわね。
 弱いですがモンスターも出ますし、うっかりレア物の鉱石を見逃すかもしれません。
 ハイル様が松明を持ち、お付きのNPCたちを入り口に残してわたくしの左手を掴む。

「!」
「行こうか」
「は、はい!」

 手を……繋いだままだなんて……。
 あ、あうう……!

「……あ、あの、ハイル様……わたくしちゃんと付いて行きますわ。だ、だから手は大丈夫です。モンスターが襲ってきたら、迎撃が遅れてしまいますわ」
「ん……そ、そう? 分かった。モンスターが現れたら俺の後ろで援護を頼む」
「はい! お任せください!」

 わたくし、これでも結構魔法を覚えてますのよ。
 炎の初級魔法、ファイヤーキューブと水の初級回復魔法、ファーストヒール、そして風の初級魔法、プラススピードと土の初級魔法、クレイブアップが使えるのです!
 ハイル様は剣をお持ちですから、剣で戦われるのですね。
 ゲームのNPCですが、プレイヤーさんに指南するほどなのです。
 ハイル様もきっとお強いのでしょう。
 ふふふ、不謹慎ですがワクワクして参りましたわ。
 早くモンスターと戦ってみたい、なんて……ちょっとはしたないでしょうか。

「あ! 採取ポイントですわ」
「本当だ。俺が見張っているから採取を頼む」
「はい! ありがとうございます、ハイル様」

 採取ポイントはダンジョンの一定間隔に点在しているのですわ。
 上級ダンジョンになりますと『採取』スキルに『薬草知識(高)』や『鉱物知識(高)』など別なスキルが必要になったりしますの。
 わたくしが持っている『採取』スキルはまだ初級のものですから、ここで取れるのはこのダンジョンで最高レアの『金』と『ルビー』が限界でしょう。
 それも『運(小)』のスキルや『鉱物知識(小)』があれば、の話ですわね。
 わたくし一応どちらもありますけれど、レア素材はそう簡単に出ませんからね~。
 あ、ちなみに『運』のスキルは善行を積めば上がりますわ。
 町などで困っているNPCの依頼をこなし続けると、依頼量が一定量で上昇しますの。
 学院内の善行悪行は影響しません。
 まだビギナーの扱いだからですわ。

「…………うーん、水晶[小]が二つと鉄[粗悪]が二つ……やはり難しいですわね」
「そうか。まあ、最初の採取ポイントだ。そんなものだろう。もう少し奥に行ってみるとしよう」
「はい」

『小さな洞窟』の攻略所要時間は十分程度。
 途中、やはりコウモリ型のモンスターが襲ってきましたがハイル様の剣技で一撃。
 すごいですわ、わたくし魔法で援護する間もございませんでした。
 それに、戦うハイル様も……とても格好いいです……!

「お、二つ目の採取ポイントだな」
「採取致しますわ」
「うん、頼む」

 頼むだなんて、ハイル様……。
 うふふ、なんだかハイル様に頼って頂けたみたいで嬉しいですわ。
 えーと、採取結果は……。

「むぅ……鉄[粗悪]と小石ですわ……」
「ははは! じゃあきっと奥にもっとすごいものがあるかもしれないな」
「……ハイル様ったら……」

 わたくしを慰めようとしてくださって……?
 ですが、二度あることは三度あるとも言います。
 多分、次の採取ポイントで終わりですわよね。
 一度採取した採取ポイントは、ダンジョンを出ないと回復しません。
 ここでもう一度採取するなら、この『小さな洞窟』を出なければ。
 そういえば……『小さな洞窟』にはこの後も潜るのでしょうか?
 それとも別なダンジョンに行くのでしょうか?
 この近くのダンジョンというと『花の森』と『スライムの森』と『川べりの森』ですわね。
 全てビギナー用ダンジョンで、『花の森』は植物系モンスターと植物のアイテムが採取できます。
『スライムの森』は名の通りスライムが大量発生する森ですわ。
 ここは主にスキルアップの為の練度を上げる事が目的のダンジョンですわね。
 スライムは倒すと『ポーションの素』を落としますから、ビギナーさんはひたすら入り浸りますわ。
 そして『川べりの森』は川が近くに流れているダンジョン。
 採取ポイントにからは水辺に関するアイテムが採取できるのですわ。
 主にポーションの素になる『水』や食材となる『川ワカメ』『イタメ貝』。
『綺麗な小石』や『丸い石』『虹色のかけら』などは『錬金術』のスキルをゲットした後、薬や道具の錬成の素材になったりします。
 皆さん、今のうちにたくさん採取しておけば良いですわ。
 それに、スタート時に身分を貴族ではなく『村人』や『暗殺者』や『孤児』などにしておくと最初から『釣り』のスキルが与えられますの。
『川べりの森』に行けば魚が釣れますのよ!
 わたくしもいつか『釣り』スキルをゲットしたいものですわ~。
 だって釣りってとても楽しそうではありませんか!




しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

【完結】悪役令嬢のトゥルーロマンスは断罪から☆

白雨 音
恋愛
『生まれ変る順番を待つか、断罪直前の悪役令嬢の人生を代わって生きるか』 女神に選択を迫られた時、迷わずに悪役令嬢の人生を選んだ。 それは、その世界が、前世のお気に入り乙女ゲームの世界観にあり、 愛すべき推し…ヒロインの義兄、イレールが居たからだ! 彼に会いたい一心で、途中転生させて貰った人生、あなたへの愛に生きます! 異世界に途中転生した悪役令嬢ヴィオレットがハッピーエンドを目指します☆  《完結しました》

【完結】名前もない悪役令嬢の従姉妹は、愛されエキストラでした

犬野きらり
恋愛
アーシャ・ドミルトンは、引越してきた屋敷の中で、初めて紹介された従姉妹の言動に思わず呟く『悪役令嬢みたい』と。 思い出したこの世界は、最終回まで私自身がアシスタントの1人として仕事をしていた漫画だった。自分自身の名前には全く覚えが無い。でも悪役令嬢の周りの人間は消えていく…はず。日に日に忘れる記憶を暗記して、物語のストーリー通りに進むのかと思いきや何故かちょこちょこと私、運良く!?偶然!?現場に居合わす。 何故、私いるのかしら?従姉妹ってだけなんだけど!悪役令嬢の取り巻きには絶対になりません。出来れば関わりたくはないけど、未来を知っているとついつい手を出して、余計なお喋りもしてしまう。気づけば私の周りは、主要キャラばかりになっているかも。何か変?は、私が変えてしまったストーリーだけど…

婚約破棄されたので王子様を憎むけど息子が可愛すぎて何がいけない?

tartan321
恋愛
「君との婚約を破棄する!!!!」 「ええ、どうぞ。そのかわり、私の大切な子供は引き取りますので……」 子供を溺愛する母親令嬢の物語です。明日に完結します。

村娘になった悪役令嬢

枝豆@敦騎
恋愛
父が連れてきた妹を名乗る少女に出会った時、公爵令嬢スザンナは自分の前世と妹がヒロインの乙女ゲームの存在を思い出す。 ゲームの知識を得たスザンナは自分が将来妹の殺害を企てる事や自分が父の実子でない事を知り、身分を捨て母の故郷で平民として暮らすことにした。 村娘になった少女が行き倒れを拾ったり、ヒロインに連れ戻されそうになったり、悪役として利用されそうになったりしながら最後には幸せになるお話です。 ※他サイトにも掲載しています。(他サイトに投稿したものと異なっている部分があります) アルファポリスのみ後日談投稿しております。

オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!

みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した! 転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!! 前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。 とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。 森で調合師して暮らすこと! ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが… 無理そうです…… 更に隣で笑う幼なじみが気になります… 完結済みです。 なろう様にも掲載しています。 副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。 エピローグで完結です。 番外編になります。 ※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。

悪役令嬢は攻略対象者を早く卒業させたい

砂山一座
恋愛
公爵令嬢イザベラは学園の風紀委員として君臨している。 風紀委員の隠された役割とは、生徒の共通の敵として立ちふさがること。 イザベラの敵は男爵令嬢、王子、宰相の息子、騎士に、魔術師。 一人で立ち向かうには荷が重いと国から貸し出された魔族とともに、悪役令嬢を務めあげる。 強欲悪役令嬢ストーリー(笑) 二万字くらいで六話完結。完結まで毎日更新です。

【完結】悪役令嬢の妹に転生しちゃったけど推しはお姉様だから全力で断罪破滅から守らせていただきます!

くま
恋愛
え?死ぬ間際に前世の記憶が戻った、マリア。 ここは前世でハマった乙女ゲームの世界だった。 マリアが一番好きなキャラクターは悪役令嬢のマリエ! 悪役令嬢マリエの妹として転生したマリアは、姉マリエを守ろうと空回り。王子や執事、騎士などはマリアにアプローチするものの、まったく鈍感でアホな主人公に周りは振り回されるばかり。 少しずつ成長をしていくなか、残念ヒロインちゃんが現る!! ほんの少しシリアスもある!かもです。 気ままに書いてますので誤字脱字ありましたら、すいませんっ。 月に一回、二回ほどゆっくりペースで更新です(*≧∀≦*)

【コミカライズ決定】地味令嬢は冤罪で処刑されて逆行転生したので、華麗な悪女を目指します!~目隠れ美形の天才王子に溺愛されまして~

胡蝶乃夢
恋愛
婚約者である王太子の望む通り『理想の淑女』として尽くしてきたにも関わらず、婚約破棄された挙句に冤罪で処刑されてしまった公爵令嬢ガーネット。 時間が遡り目覚めたガーネットは、二度と自分を犠牲にして尽くしたりしないと怒り、今度は自分勝手に生きる『華麗な悪女』になると決意する。 王太子の弟であるルベリウス王子にガーネットは留学をやめて傍にいて欲しいと願う。 処刑された時、留学中でいなかった彼がガーネットの傍にいることで運命は大きく変わっていく。 これは、不憫な地味令嬢が華麗な悪女へと変貌して周囲を魅了し、幼馴染の天才王子にも溺愛され、ざまぁして幸せになる物語です。

処理中です...