377 / 385
世界再生編
儀式の前に(1)
しおりを挟む「では、儀式についてご説明します」
と、言い出したのはレオナルドだ。
ジェラルドが神格化してから三日後、俺たちはルレーン国に来ていた。
城の一室を借り、明日の朝に実行される儀式についての最終確認を行う。
会議室には初期ギア・フィーネシリーズの登録者、後続機シリーズのパイロット、ルーファス、ランディ、トニスのおっさん。
“歌い手”であるレナ、シャルロット様、ミレルダ、そしてデュレオ。
『神代の大穴』の依代で、サポートを行なってくれるナルミさんとファントム。
巻き込まれて連れてこられたリーンズ先輩。なんで? って顔されてるけど俺からはすみません、としか。
「本日より、各機は登録者及びパイロットとともに指定の地点に移動していていただきます。移動に一日。明後日午後六時に儀式実行です」
儀式は世界中の成層圏に定間隔で八機のギア・フィーネを配置する。
惑星に輪を作るように六機。
南極と北極に一機ずつ。
そうしてエネルギーを生み出す概念の範囲を定める。
その状態で八機の“連結”を行い、“歌い手”たちのブースターでギアを最大限に上げていく。
初期シリーズはギア5まで。
後続機シリーズはギア4まで上げられれば十分。
ルレーン国の依代で創世神の誕生を促し制御し、人格データの融合を行って発生した神を依代に受け止めて地核に送る。
その時、俺たちも“連結”で一つに半融合状態。
地核でクレアを迎え、どうせ覗き見しているギアンに釘を刺して創世神の神格を切り離し霊魂体の神として確立させてクレアと交代してもらう。
地上に戻ったら創世神が安定するまでギア・フィーネは成層圏に置き去り。
俺たちは魔法で地上まで戻ってくる。
無事に地上に帰ってこれたら——成功だ。
ちなみに魔法の使えないルーファスは、宇宙のパイロットスーツで成層圏から降下するのは難しくないと言い張ったのでお任せすることにしたよ。
風に流されて結晶化した大地に落ちないことを祈るばかりだが、ディアスが「転移して助けておく」とこっそり言っていたので助けてもらえ。
「以上ですが、質問はありますか」
「ないなー」
「すや……」
「では、準備に入る」
「そうだな」
「すやすや……」
「………………」
ちなみにシズフさんとそれなりにハードスケジュールのジェラルドは爆睡中である。
ディアスとラウトはさっさと移動を開始してしまうつもりらしい。
まあ、二人は南極と北極。
早く移動しないといけないよな。
「あ。すまない、レオナルド、俺も少し用がある。ナルミさん、レナを頼みます」
「はい! 了解しました兄上! あとはお任せください!」
「了解だよ。レナ、少し休もうか」
「あ、は、はい」
レオナルドに任せて、ディアスとラウトを追いかける。
二人が向かったのはやはりエアーフリートのドック。
「どうかしたのか?」
「えーと……多分これが、最後だと思うので……サルヴェイションにお別れ言っておきたくて」
「ああ……それはいいな。俺もそうしようと思っていた」
ディアスが柔らかく微笑む。
サルヴェイションの前に立つ。
俺とレナが初めて遭遇したギア・フィーネ。
俺たちがあの場で助かったのはサルヴェイションのおかげだし、サルヴェイションのおかげで今がある。
人を救うこと。
俺にディアスの信念を教えてくれて、ありがとう。
「サルヴェイションは——元々インクリミネイト、というあまりよくない意味の名を冠る機体だった」
人を罪に陥れる者、みたいな意味だっけ。
ディアスの語りに見上げた黒い機体。
これが夜中に現れて、町を一つ無差別に攻撃したと思うとそりゃあ悪魔のようだっただろう。
それでも、その時の事情を知ってしまうとただ悪とは言い切れない。
「前の登録者二人とも、罪を犯した。この機体で引き起こされた悲劇だと思う。それでも俺はこの機体の登録者になれてよかったと思う。今こうして本来の役目を果たすところまで、お前を連れてこれた。ここまでこれたのもお前の助力あってこそ。……ありがとう」
「い、いや、そんなの俺の方こそですよ」
突然俺に向かってそんなことを言うディアス。
とんでもない。
俺の方こそ、ディアスには本当に何度も何度も何度も……何度も……。
「えっと、本当に、何度もお世話をさせてしまいまして」
「ああ、まあ、同調障害は仕方ない」
なんかある度に同調障害でぶっ倒れてディアスにご面倒をおかけしていたような気がします。
「そういえば……ディアスは最初から言ってましたよね。王苑寺ギアンがギア・フィーネを造ったのは、人類にギア・フィーネを捨てさせるためだって」
「ああ。最初から“こう”するつもりだったのだと思う」
「……やっぱりディアスはすごいですね」
「そんなことはない。俺ならきっと別の方法を考えていた。直す方にばかり囚われて、新たに生み出すという考えには至らなかった。おそらくそこが俺とギアンの違いだろう」
「いやいや、絶対それだけじゃないですよ。ナルミさんも言ってましたけど、ディアスは善性でギアンは悪性です」
「そう言ってやるな。それでも、あの男はあの男なりにこの世界を愛しているよ」
「…………」
0
お気に入りに追加
75
あなたにおすすめの小説
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

びるどあっぷ ふり〜と!
高鉢 健太
SF
オンライン海戦ゲームをやっていて自称神さまを名乗る老人に過去へと飛ばされてしまった。
どうやらふと頭に浮かんだとおりに戦前海軍の艦艇設計に関わることになってしまったらしい。
ライバルはあの譲らない有名人。そんな場所で満足いく艦艇ツリーを構築して現世へと戻ることが今の使命となった訳だが、歴史を弄ると予期せぬアクシデントも起こるもので、史実に存在しなかった事態が起こって歴史自体も大幅改変不可避の情勢。これ、本当に帰れるんだよね?
※すでになろうで完結済みの小説です。

【完結】ポーションが不味すぎるので、美味しいポーションを作ったら
七鳳
ファンタジー
※毎日8時と18時に更新中!
※いいねやお気に入り登録して頂けると励みになります!
気付いたら異世界に転生していた主人公。
赤ん坊から15歳まで成長する中で、異世界の常識を学んでいくが、その中で気付いたことがひとつ。
「ポーションが不味すぎる」
必需品だが、みんなが嫌な顔をして買っていく姿を見て、「美味しいポーションを作ったらバカ売れするのでは?」
と考え、試行錯誤をしていく…


日本列島、時震により転移す!
黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する
高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。
手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。

僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた
黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。
その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。
曖昧なのには理由があった。
『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。
どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。
※小説家になろうにも随時転載中。
レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。
それでも皆はレンが勇者だと思っていた。
突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。
はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。
ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。
※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる