365 / 385
世界再生編
“歓迎”パーティー(2)
しおりを挟む新たな隣国メルドレアのいくつかの貴族に至っては、「あ、また二年前みたいなデモンストレーションが始まるんだな」という悟りの表情である。
そこまで慣れられると、それはそれでなんかアレな気持ちになるんだが。
「やれやれ、宇宙連邦の方々は敗北を知らぬようだ」
父上が笑いながら言ったこのセリフ。
かなりパンチが効いている。
うちの守護神たちにフルボッコされて、一つも軍事作戦が成功していない宇宙連邦を揶揄したものだ。
本当だね。
負けを認めなければ負けじゃない理論らしいね、彼ら。
「空のグラスを下げてくれる?」
「え、は、はい」
近くにいたウエイターに、ワインを飲み干したグラスを渡す。
俺があまりに普通なので、ミレルダもなにやら察したらしく「ぼくは同じものがほしいな。葡萄ジュース」とリクエストをかます。
俺たちの様子に貴族たちも段々「余興かな?」という空気になっていく。
もちろん、宇宙連邦は絶賛脅迫実施中である。
ルオートニス王家全員に銃を向けるという、余興だとしてもありえないものだ。
けれど、まあ……そう思われてしまうぐらいにうちの王家はこういう目に遭いすぎてきた。
我が家可哀想。
「これはこれは。我らが引き金を引くことはないとでも?」
おっさん……えーと、オーガスタの最終通告。
なぜか父上に向かって問う。
父上たちを人質にすればデュレオが頷くとでも思ってる?
いやいや、あいつ父上たちに銃口向けても従わないよ?
人質にするの間違えてるよ、色んな意味で。
まあ、そもそもデュレオは誰を人質にしても自分が気に食わなければ見殺しにするだろうけれど。
「ああ、それともう一人おったな。王太子が」
「ヒューバート様っ」
「レナはシャルロット様と離れていて。大丈夫だから」
オーガスタ氏が俺の方を向くと、俺の真横にも兵が現れる。
そして、ライフル銃の銃口を俺の左顳顬におしつけてきた。
シャルロット様とミレルダがさすがに焦った顔をしたが、ジェラルドとランディが頷いてレナを左右からガードして俺から引き離してくれる。
俺もレナに害が及ばないよう、一歩、前へ出た。
一応俺だけが目標のようでよかった。
レナにまで銃口を向けるようなら、わかってんな?
て、いうか……ヤバ。
ラウトとディアスの表情が不機嫌そうになった。
宇宙連邦のお偉方よ、シャルロット様とミレルダにはガチで手を出してくれるなよ。
ファントムはマージで俺の言うことは一切聞かないからな。
「マフォルダ様! おやめください! 危険すぎます! アレらは千年前のギア・フィーネの登録者なのですよ!?」
「そうです! しかも人ならざる者になっております! お願いいたします! どうか刺激されぬよう!」
「メッス様、オルドンス様、クレバー様も本当におやめください! お命が危険すぎます! 兵をお退きください! 後生でございます!」
ルーファスたち『ストーリー』の懇願が必死すぎる。
クロンとアイランとソラウは土下座までして頼んでいるではないか。
まあ、彼らの忠告は正しい。
引き金を引こうもんならやつらは終わりだ。
「フン! 裏切り者どもが」
「さあ、デュレオ・ビドロ! 我らとともに来ると言え! この会場の人間を皆殺しにしても構わんのだぞ」
それは本当にやめた方がいい。
お勧めしない。
楽に死ねなくなるぞ、おっさんたち。
ああ、ほらそんなこと言うからラウトが完全に敵意じゃなくて興味のなさそうな表情になってるー!
あの表情はもう「殺す」という確定演出!
おっさんたち終了のお知らせ!
「くっふひひひひひひひ……いいね、いいねぇ。俺、アンタたちみたいな誰も信じてない馬鹿は大好きだよぅ。身近な誰かのふりをして、ちょっと殺しかけただけでどんどん周りを疑い続けて、勝手に自滅していってくれるからねぇ」
「……!?」
「懐かしいなぁ、千年前もそうしてミシアはお偉方が疑心暗鬼で自分の周囲を処刑しまくって、国としての体をなさなくなったんだよ。アンタたちが宇宙の頭なら同じことが簡単にできそうだ。くひひひひひ」
わあ。邪悪な笑み。
今まで多くの悪い顔を見てきたけれど、その中でもトップクラスの邪神顔である。
「残念だが貴様は拘束して、二度と表には出られぬ」
「ミシアのお偉方も同じことを言って俺を拘束したことがあるけど、俺は研究破棄されて出されてるんだよねぇ。つまり研究するところがもうないの。わかる? それに俺の擬態は外側からの干渉でどうにかできるものじゃないよ。ほら、たとえばこんなふうに——」
「ひっ!」
「なっ! ま、マルシャ!?」
デュレオが突然オレンジ色の女性もののドレスを身に纏い、赤みがかったオレンジの長い髪色に変化した。
その顔を見たおっさんの一人——マーズノーティスのオーズ・オルドンスが驚愕に慄く。
知り合いの女の人にでも化けられたのだろう。
「あ、ああ……そ、そんな、マルシャ……ありえぬ! マルシャは三年前に……!」
「亡くなったそうだねぇ? こんな感じで俺は簡単に擬態できる。クスクス……他にも会いたい人がいるなら、会わせてあげようか?」
0
お気に入りに追加
75
あなたにおすすめの小説
忘却の艦隊
KeyBow
SF
新設された超弩級砲艦を旗艦とし新造艦と老朽艦の入れ替え任務に就いていたが、駐留基地に入るには数が多く、月の1つにて物資と人員の入れ替えを行っていた。
大型輸送艦は工作艦を兼ねた。
総勢250艦の航宙艦は退役艦が110艦、入れ替え用が同数。
残り30艦は増強に伴い新規配備される艦だった。
輸送任務の最先任士官は大佐。
新造砲艦の設計にも関わり、旗艦の引き渡しのついでに他の艦の指揮も執り行っていた。
本来艦隊の指揮は少将以上だが、輸送任務の為、設計に関わった大佐が任命された。
他に星系防衛の指揮官として少将と、退役間近の大将とその副官や副長が視察の為便乗していた。
公安に近い監査だった。
しかし、この2名とその側近はこの艦隊及び駐留艦隊の指揮系統から外れている。
そんな人員の載せ替えが半分ほど行われた時に中緊急警報が鳴り、ライナン星系第3惑星より緊急の救援要請が入る。
機転を利かせ砲艦で敵の大半を仕留めるも、苦し紛れに敵は主系列星を人口ブラックホールにしてしまった。
完全にブラックホールに成長し、その重力から逃れられないようになるまで数分しか猶予が無かった。
意図しない戦闘の影響から士気はだだ下がり。そのブラックホールから逃れる為、禁止されている重力ジャンプを敢行する。
恒星から近い距離では禁止されているし、システム的にも不可だった。
なんとか制限内に解除し、重力ジャンプを敢行した。
しかし、禁止されているその理由通りの状況に陥った。
艦隊ごとセットした座標からズレ、恒星から数光年離れた所にジャンプし【ワープのような架空の移動方法】、再び重力ジャンプ可能な所まで移動するのに33年程掛かる。
そんな中忘れ去られた艦隊が33年の月日の後、本星へと帰還を目指す。
果たして彼らは帰還できるのか?
帰還出来たとして彼らに待ち受ける運命は?
銀河戦国記ノヴァルナ 第3章:銀河布武
潮崎 晶
SF
最大の宿敵であるスルガルム/トーミ宙域星大名、ギィゲルト・ジヴ=イマーガラを討ち果たしたノヴァルナ・ダン=ウォーダは、いよいよシグシーマ銀河系の覇権獲得へ動き出す。だがその先に待ち受けるは数々の敵対勢力。果たしてノヴァルナの運命は?
日本列島、時震により転移す!
黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
法術装甲隊ダグフェロン 永遠に続く世紀末の国で 『修羅の国』での死闘
橋本 直
SF
その文明は出会うべきではなかった
その人との出会いは歓迎すべきものではなかった
これは悲しい『出会い』の物語
『特殊な部隊』と出会うことで青年にはある『宿命』がせおわされることになる
法術装甲隊ダグフェロン 第三部
遼州人の青年『神前誠(しんぜんまこと)』は法術の新たな可能性を追求する司法局の要請により『05式広域制圧砲』と言う新兵器の実験に駆り出される。その兵器は法術の特性を生かして敵を殺傷せずにその意識を奪うと言う兵器で、対ゲリラ戦等の『特殊な部隊』と呼ばれる司法局実働部隊に適した兵器だった。
一方、遼州系第二惑星の大国『甲武』では、国家の意思決定最高機関『殿上会』が開かれようとしていた。それに出席するために殿上貴族である『特殊な部隊』の部隊長、嵯峨惟基は甲武へと向かった。
その間隙を縫ったかのように『修羅の国』と呼ばれる紛争の巣窟、ベルルカン大陸のバルキスタン共和国で行われる予定だった選挙合意を反政府勢力が破棄し機動兵器を使った大規模攻勢に打って出て停戦合意が破綻したとの報が『特殊な部隊』に届く。
この停戦合意の破棄を理由に甲武とアメリカは合同で介入を企てようとしていた。その阻止のため、神前誠以下『特殊な部隊』の面々は輸送機でバルキスタン共和国へ向かった。切り札は『05式広域鎮圧砲』とそれを操る誠。『特殊な部隊』の制式シュツルム・パンツァー05式の機動性の無さが作戦を難しいものに変える。
そんな時間との戦いの中、『特殊な部隊』を見守る影があった。
『廃帝ハド』、『ビッグブラザー』、そしてネオナチ。
誠は反政府勢力の攻勢を『05式広域鎮圧砲』を使用して止めることが出来るのか?それとも……。
SFお仕事ギャグロマン小説。
【VRMMO】イースターエッグ・オンライン【RPG】
一樹
SF
ちょっと色々あって、オンラインゲームを始めることとなった主人公。
しかし、オンラインゲームのことなんてほとんど知らない主人公は、スレ立てをしてオススメのオンラインゲームを、スレ民に聞くのだった。
ゲーム初心者の活字中毒高校生が、オンラインゲームをする話です。
以前投稿した短編
【緩募】ゲーム初心者にもオススメのオンラインゲーム教えて
の連載版です。
連載するにあたり、短編は削除しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる