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世界再生編

“歓迎”パーティー(2)

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 新たな隣国メルドレアのいくつかの貴族に至っては、「あ、また二年前みたいなデモンストレーションが始まるんだな」という悟りの表情である。
 そこまで慣れられると、それはそれでなんかアレな気持ちになるんだが。
 
「やれやれ、宇宙連邦の方々は敗北を知らぬようだ」
 
 父上が笑いながら言ったこのセリフ。
 かなりパンチが効いている。
 うちの守護神たちにフルボッコされて、一つも軍事作戦が成功していない宇宙連邦を揶揄したものだ。
 本当だね。
 負けを認めなければ負けじゃない理論らしいね、彼ら。
 
「空のグラスを下げてくれる?」
「え、は、はい」
 
 近くにいたウエイターに、ワインを飲み干したグラスを渡す。
 俺があまりに普通なので、ミレルダもなにやら察したらしく「ぼくは同じものがほしいな。葡萄ジュース」とリクエストをかます。
 俺たちの様子に貴族たちも段々「余興かな?」という空気になっていく。
 もちろん、宇宙連邦は絶賛脅迫実施中である。
 ルオートニス王家全員に銃を向けるという、余興だとしてもありえないものだ。
 けれど、まあ……そう思われてしまうぐらいにうちの王家はこういう目に
 我が家可哀想。
 
「これはこれは。我らが引き金を引くことはないとでも?」
 
 おっさん……えーと、オーガスタの最終通告。
 なぜか父上に向かって問う。
 父上たちを人質にすればデュレオが頷くとでも思ってる?
 いやいや、あいつ父上たちに銃口向けても従わないよ?
 人質にするの間違えてるよ、色んな意味で。
 まあ、そもそもデュレオは誰を人質にしても自分が気に食わなければ見殺しにするだろうけれど。
 
「ああ、それともう一人おったな。王太子が」
「ヒューバート様っ」
「レナはシャルロット様と離れていて。大丈夫だから」
 
 オーガスタ氏が俺の方を向くと、俺の真横にも兵が現れる。
 そして、ライフル銃の銃口を俺の左顳顬こめかみにおしつけてきた。
 シャルロット様とミレルダがさすがに焦った顔をしたが、ジェラルドとランディが頷いてレナを左右からガードして俺から引き離してくれる。
 俺もレナに害が及ばないよう、一歩、前へ出た。
 一応俺だけが目標のようでよかった。
 レナにまで銃口を向けるようなら、わかってんな?
 て、いうか……ヤバ。
 ラウトとディアスの表情が不機嫌そうになった。
 宇宙連邦のお偉方よ、シャルロット様とミレルダにはガチで手を出してくれるなよ。
 ファントムはマージで俺の言うことは一切聞かないからな。
 
「マフォルダ様! おやめください! 危険すぎます! アレらは千年前のギア・フィーネの登録者なのですよ!?」
「そうです! しかも人ならざる者になっております! お願いいたします! どうか刺激されぬよう!」
「メッス様、オルドンス様、クレバー様も本当におやめください! お命が危険すぎます! 兵をお退きください! 後生でございます!」
 
 ルーファスたち『ストーリー』の懇願が必死すぎる。
 クロンとアイランとソラウは土下座までして頼んでいるではないか。
 まあ、彼らの忠告は正しい。
 引き金を引こうもんならやつらは終わりだ。
 
「フン! 裏切り者どもが」
「さあ、デュレオ・ビドロ! 我らとともに来ると言え! この会場の人間を皆殺しにしても構わんのだぞ」
 
 それは本当にやめた方がいい。
 お勧めしない。
 楽に死ねなくなるぞ、おっさんたち。
 ああ、ほらそんなこと言うからラウトが完全に敵意じゃなくて興味のなさそうな表情になってるー!
 あの表情はもう「殺す」という確定演出!
 おっさんたち終了のお知らせ!
 
「くっふひひひひひひひ……いいね、いいねぇ。俺、アンタたちみたいな誰も信じてない馬鹿は大好きだよぅ。身近な誰かのふりをして、ちょっと殺しかけただけでどんどん周りを疑い続けて、勝手に自滅していってくれるからねぇ」
「……!?」
「懐かしいなぁ、千年前もそうしてミシアはお偉方が疑心暗鬼で自分の周囲を処刑しまくって、国としての体をなさなくなったんだよ。アンタたちが宇宙の頭なら同じことが簡単にできそうだ。くひひひひひ」
 
 わあ。邪悪な笑み。
 今まで多くの悪い顔を見てきたけれど、その中でもトップクラスの邪神顔である。
 
「残念だが貴様は拘束して、二度と表には出られぬ」
「ミシアのお偉方も同じことを言って俺を拘束したことがあるけど、俺は研究破棄されて出されてるんだよねぇ。つまり研究するところがもうないの。わかる? それに俺の擬態は外側からの干渉でどうにかできるものじゃないよ。ほら、たとえばこんなふうに——」
「ひっ!」
「なっ! ま、マルシャ!?」
 
 デュレオが突然オレンジ色の女性もののドレスを身に纏い、赤みがかったオレンジの長い髪色に変化した。
 その顔を見たおっさんの一人——マーズノーティスのオーズ・オルドンスが驚愕に慄く。
 知り合いの女の人にでも化けられたのだろう。
 
「あ、ああ……そ、そんな、マルシャ……ありえぬ! マルシャは三年前に……!」
「亡くなったそうだねぇ? こんな感じで俺は簡単に擬態できる。クスクス……他にも会いたい人がいるなら、会わせてあげようか?」

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