終末革命ギア・フィーネ〜転生先が婚約破棄した聖女を追放してザマァされる悪役王子なんだが、破滅したくないので彼女と幸せになります!〜

古森きり

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18歳編

目に見えぬ邪悪

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「まあ、目玉ぐらいなら移植を手伝うぞ。完璧に治してやろう」
「じゃあ右目でいいわ」
「待って待って、ダメだってば!」
「ヒューバートがダメというからダメだな」
「手のひら返すの早すぎだろクソか」

 ディアスが優しくてよかった。
 ハラハラしてしまった。
 しかし、ここで終わるディアスではない。

「そうだ、せっかくファントムとナルミがいるのだから『ハッキング』で“連結”して演算を手伝ってほしい」
「「は?」」
「特効薬の構成はだいたい決まっているのだが、治療薬となると話は些か変わってくる。俺の持つ薬学とお前たちの持つ機械科学とノーティスのデータを照らし合わせ、特効薬に使う薬の種類を特定しようかと」
「「あー……」」

 きょとーん、としたファントムとナルミさんだが、ディアスの説明を聞いてから謎に納得した。
 俺にはあんまり、そこまでの納得に至った理由がわからない。

「そうか、この間俺も“連結”に加われたし、ヒューマノイドもできるのか」
「ギアンもある意味ヒューマノイドだし、ヒューマノイドなら参加できるんでしょ。なるほど、興味深いわね。いいわよ、私のことも使って」

 にやり、と笑ってナルミさんもファントムも“連結”するのは構わないと言い出す。
 それはいいんだが、いいのかな、ここ地下牢だし患者結晶病で拘束されたままなのだが。

「あの、ディアス……なにもここでやらなくてもいいんじゃないですか?」
「いや、患者に薬の製作過程を見せて安全性を証明しておきたい」

 あー、なるほど。
 地下牢だけど、っていうことよりも患者——ギア・マレディツィオーネのパイロットに安全性を直に確認させる方が重要ってことか。
 ……表情はそれどころではなさそうだけどなぁ。

「デュレオ様は参加されないんですか?」
「は?」
「デュレオ様もヒューマノイドだとうかがったことがありますから……」

 と、レナが提案する。
 そういえばそうだねぇ。
 しかし、レナがデュレオの名前を呼んだ時、ギア・マレディツィオーネのパイロットの目線がデュレオを向く。
 その表情に必死さが加わる。
 だよねぇ、そちらの最終目的はデュレオを捕らえて研究材料にすること。
 それが目の前にいるんだもんねぇ。
 デュレオは宇宙側のその目的を知って、今わざと目の前に現れている。
 それを知ったら悔しがりそうだなぁ。

「……まあ、別に参加してもいいけど」
「デュレオ・ビドロの不老不死は医学的観点からも興味深い。情報提供感謝する」
「でも、俺より俺の研究データを保管してるナルミの方が俺の体に詳しいと思うよ」
「ほう、そうなのか」
「ノーティスとヒューマノイドの研究データ、廃棄分も全部閲覧して構わないよ。検索と選別、ノーティスナノマシン系のデータはファントムが担当するといいわ」
「では医学系、薬品系と遺伝学系全般は俺が担当しよう。デュレオ・ビドロは統括管理を頼む」
「一番難しいところを俺に丸投げしないでほしいなぁ! そういうの五号機の坊やにやらせなよー!」
「俺まで巻き込むな。俺が手伝えるわけないだろう……!」

 当然俺も役に立たなさそうなので全力で拒否ります。
 聞いてるだけで難しそう。
 無理。

「では開始する」

 ディアスの右目が白銀の電子模様に変化する。
 サルヴェイションのギアが上がると、機体に浮かぶ電子模様の色と同じ白銀。
 イケメンは、なにをやっても、イケメンだ。
 作、ヒューバート・ルオートニス。

「————」

 ガクン、とファントムとナルミさんが肩を落として俯いてしまう。
 デュレオはそんなことないけど、デュレオの両目も赤く光っている。
 ナルミさんも目が青く光り、ファントムのゴーグルも白く点滅していた。
 これがヒューマノイドが行う“連結”か。

「あれ、なん……? ノイズが入るね?」
「ファントムだな?」
「……ああ、あのクソクズゲス野郎、覗き見してたの。キッショ。ナルミとファントムでは切れないね?」
「俺が試してみよう」
「「?」」

 レナと顔を見合わせる。
 思わずラウトを見ると、急にラウトの右目も黄色に光り輝く。
 “連結”に加わったらしい。

「いい、ノイズは俺がやる。お前たちは薬作りでもなんでもやれ」
「助かる」
「じゃあノイズの発生源へのアクセスは俺がサポートするわ」
「わかった」

 サクサクと話が進む。
 デュレオはファントムとナルミさんよりは自我が残ってる、って感じなのか?
 五分ほどやり取りが続くと、最初にラウトが溜息を吐きながら頭を掻く。
 瞳の色も元に戻った。

「ファントム、どうかしたの?」
「デュレオ・ビドロがクソクズゲス野郎と呼んでいた野郎が、本物のクソクズゲス野郎だっただけだ。ファントムの人格データに寄生して情報を共有していたらしい」
「ど、どなたですか?」
「……ああ、王苑寺ギアン」

 俺は彼らが共通で「マジ、クソ」と断言する人間には一人しか心当たりがない。
 全世界共通のクソ野郎、王苑寺ギアンである。
 ファントムといえば元々王苑寺ギアンの人格データがオリジナルだ。
 そこから環境で『ザード・コアブロシア』となっているが、ベースが王苑寺ギアンなので『ザード・コアブロシア』の人格データにも自身の一部を潜ませていたのだろう。
 そこから現世の状況を覗き見ていた、と思ったら……お察しだよ。
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