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18歳編
お疲れですよ
しおりを挟む「はぁ……」
「ヒューバート殿下、大丈夫ですか? 顔色があまりよろしくないようですが」
「いや、大丈夫だよ。ランディ。ちょっと忙しくて……」
「そ、そうですね」
はい、相変わらず忙しいです。
実はもうすぐ俺の誕生日——水無月の8日——なんだけど……その日は俺とレナの結婚式でもある。
デュレオから「レネエルにはジューンブライド、6月、あ、今の時代だと水無月? そうそう水無月の花嫁! っていうのが永遠の幸福になれるっていう験担ぎがあってね」と口を滑らせやがってな。
母上もレナもそれを聞いて「じゃあヒューバートの誕生日がある水無月で」とその気になってしまったのだ。
まあね。西方に行っている間に結婚式の準備を頼むよ、って言ってレナとデュレオを母上とシズフさんに丸投げしたのは俺だけどさ。
こうなるとは思わんだろう。
母上がデュレオと話せたことがよほど嬉しかったのか、かなり盛大なものになっていた。
なお、招待状などもすでに発送済み。
出席者名簿は見せられたけど、おつき合いしていく予定の国々から人を招いて国を挙げた大々的な結婚式になる予定。
そもそも、他国から要人を招くってこと事態数百年ぶりとなる。
まして西方諸国とハニュレオは、国交断絶して数百年ぶり。
再び国同士の国交ができるとあり、その立役者となった俺とレナの結婚式は下手したら世界規模の祝日になりかねない……。
実際ミドレとハニュレオからは、『水無月の8日を、英雄祝福祭の日として祝ってもよいでしょうか?』的な打診が来ているそうだ。
…………ナニソレ…………。
俺が震えながら父上に「え? なにこれ」と聞いたら父上は「他国に借りを作ると思いなさい」と承諾の意を表明する予定と聞いてちょっと泣いた。
いらんいらんいらん、そんなのカッコ悪い。
そう言ったけど、一応俺のそういう否定の意は添えて返答するとのこと。
多分覆らん。
はぁ。
……そんな感じで俺は結婚式の準備の他に他国から人を招くアレそれと、セドルコ帝国への石晶巨兵売り込みのタイミングやら宇宙の情報収集、拿捕した宇宙戦艦のアレそれからその乗組員の捕虜のアレそれまで、まあやることが多い多い。
加えて学院生活も残すところあと一年となり、ランディは今年の師走に卒業。
卒業後はルレーン国へ婿入りのために出国する予定なので、俺は新たな側近の選出と卒業後にジェラルドが治める予定の国境領地の視察、来年の卒業論文の制作などが重なることになった。泣く。
……そんな感じでまぁ、俺はランディとジェラルドの両側近を手放すことになるのだ。側近なのに側にいてもらえないので仕方ない。
最近めっきりおとなしい聖殿も、かなりしつこくマルティアを含めた聖女候補たちを俺の側室にとゴリ押ししていると聞くし。
懲りなさすぎでは?
レオナルドにも抑えられないとは困ったもんだよ、ほんと。
まあ、その方がその手の自分勝手な貴族の洗い出しがスムーズに進むのだけれど。
「あと、レナといよいよ結婚すると思うと、なんかこう……もっとレナと二人の将来のこととか話せばよかったなって、想っちゃうんだよ」
「二人の将来のこと、ですか?」
「そう。俺、忙しさにかまけてレナとあんまり二人で将来どうしたいからとか具体的な話はしてこなかったんだよね。今思うと『将来は王と聖女で王妃なレナと二人、国を守っていく』っていうふわっとした理想の話しかしてないんだわ。具体的に、俺は王になって政務をこなすから、レナには母上のように社交で情報を集めてほしい……とかさー。でもレナもそんなに社交が得意な方ではないから、政務の一部を手伝ってもらって二人で社交を頑張ろうね、とか。子どもを作るタイミングとか、子育てをどんなふうにしていくべきか、とか」
俺の前世の両親も、今世の両親も仲はいい。
けど、両親がどんなふうに話し合って円満な夫婦生活を送っていたのかわからない。
まあ、今世は家庭が特殊なので今世の両親に相談に乗ってもらえればいいんだろう。
しかしなー、俺とレナは最近本当にお互い忙しい。
すれ違って気持ちが冷めてしまったら?
俺は好きだけど、レナが他の男を好きになってしまうとかあるかもしれんし。
これからたくさん海外の人間が来るようになるし。
うううう。
「…………ランディ、なにをメモしてる?」
「あ、えーと……参考になりそうだと思いまして」
「そっかー」
立ったままメモ帳にやたらと真面目になんか書き残していると思ったら。
そ、そうだなー、うん、ランディの相手も王族だもんな。
……逆に考えるとランディに相談しやすくなるってことか!?
「一度レナ嬢とゆっくりお話しする時間を取られてはいかがですか?」
「学校が終わると分刻みスケジュールになっているんだ、最近」
「ほ、本当にお忙しいのですね」
「本当に忙しいよ。日曜日だけは無理矢理休むように言われているんだけど、レナが忙しいんだよね」
「セドルコ帝国付近の結界強化ですね」
「そう」
セドルコ帝国への牽制のため、レナと聖殿は北の国境に赴き結界強化に努めている。
父上が壁の建設を行い、さらに聖女と聖女候補による結界強化。
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