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二人の聖女と悪魔の亡霊編
待ち時間(3)
しおりを挟む「は? そんなやついる?」
「ここにいるな」
え? 俺特殊?
ナルミさんが挙げた理由は心当たりしかないが、ファントムにとってはかなりおかしいらしい。
……俺、そんなに特殊なの?
「自力でギア上げしたことない? ……逆にどうして自力でギア上げせず生き残れたんだ?」
「千年前と環境が違うからねぇ。ヒューバートが前線に出て、ギア・フィーネで戦う必要があまりないんだよ。この子、一国の王子だし、最初からディアスとラウトが側にいるし」
「過保護してんじゃねーよ、チビ」
「身長は関係ないだろう! 殺すぞ!」
あああああぁっ!
せっかくナルミさんが穏やかに解説していたのにー!
なぜそこで喧嘩を売るんだファントム!
ラウトに身長のことは禁句で頼むー!
「ラウト、魔力漏れてる! 落ち着いて! 大丈夫、俺より高いじゃん!」
「喧しい! もうほとんど同じだろうが! 殺すぞ!」
「ヒューバート、それは火に油だよ!」
あれぇ!?
「まあ、ヒューバートは成長期だしね。ところでその身長の話、子どもの体のヒューマノイドを使っているボクも当てはまるからやめない?」
「やめましょう!」
ナルミさんも該当すんのぉ!
もうやだ身長の話永遠に禁止でお願いします!
「今のはファントムが悪いよ。ちゃんと謝りなよ」
「自力でギア上げしてないこのガキが悪いんだろ」
「おおおう!?」
責任と原因俺に丸投げぇ!?
き、聞きしに勝る鬼畜! 邪悪! 悪魔!
ミレルダ嬢が肘で軽く突いても無視!
お、恐ろしいいぃ!
デュレオより天上天下唯我独尊すぎないですか?
デュレオの方がまだ多少の面倒臭さはあるものの、ツンデレのデレがありますが?
なにこの人、一昔前の俺様系すぎないぃぃ!?
怖ぁぁぁぁあっ!
「自力のギア上げはならしだ。それで少しずつ同調率を上げて、ギア上げを安定させていく。それをやらずにいきなり“歌い手”の歌でギアを上げれば、倒れるに決まっている」
「……っ」
「最初から“歌い手”の歌は“ブースター”だと聞いていたのだろう? ブースターばかり使っていれば同調率は上がるわけもない。次に“歌い手”の歌を聴いてギア上げしたら死ぬぞ、お前」
「う……」
はっきりと、言われた。
死ぬ。
死ぬのは……死ぬのは、嫌だ。
——あの時、デュレオに言われたことは覚えてる。
でも、俺は、まだ死にたく、ない!
「シャルロット・ユン・ルレーンは“歌い手”ではないのか?」
「才能はある。リリファとアベルトの子孫だからな」
「……ああ、やはりそうなのか……」
自分で聞いておきながら、ラウトが視線を背ける。
もしかして、睨むように見ていたのって、それを確認したかったからなのかな?
「あとこいつも」
「そう! ボクも“歌い手”の才能があるらしいよ! でもボクは三号機の登録者になるけどね!」
「ミレルダ嬢も?」
へー、マジか!
というか、やっぱり聖女はイコール“歌い手”の才能があるんだな。
……俺、結構ピンチなのでは?
“歌い手”が増えると死の危険が増えるということなのでは?
ワ、ワァ……。
「あ、でもジェラルドも適性があるって言ってませんでした?」
「ぼく?」
「ああ、ミレルダより同調率が高い。ミレルダが10%。ジェラルドは18%」
「俺より高いじゃん!?」
「は、はわわ……!」
しょ、衝撃の事実!
マジでジェラルドが俺よりギア・フィーネとの同調率が高い!
そんなことある!?
あるけど!
「ラウトは?」
「なんで俺の同調率を知りたがる?」
「面白そうじゃないか」
そしてナルミさんは好奇心に負けた顔してる。
なぜか巻き込まれるラウト。
でも神鎧に至ったラウトの同調率は、ちょっと俺も気になる。
「搭乗時はさらに上がるだろうが、平時で90%だな」
「「たっっっっか!?」」
「へぇー、やっぱり面白いね。ファントム、キミ、ひと段落ついたらルオートニスに来てシズフも鑑定してよ。面白そうなデータがたくさん取れそう」
「さすが、自分に懸想している男相手にも容赦のないゲス発言だな加賀鳴海。お前のそういうところが本気で気持ち悪い」
「余計なこと言わないでくれるかなぁ!」
…………。
ん? 今なんかサラリと爆弾を投下されたような?
「え! シズフさんってナルミさんのこと好きだったんですか!?」
「拾わなくていいんだよ、ヒューバート!」
「趣味悪いよな。そもそも自分の兄の婚約者だろ? 二重に趣味が悪いよな」
「むしろシズフさんにそういう感情があったんだぁっていう」
「私とシズフの話は今関係ないだろう!」
でもこんなに照れて焦っているナルミさんは見たことがない。
つ、つまり…………マジ!
うっわー、マジ!
「ぼくのご先祖様がみんなに『性格最悪』って言われていた意味が、今とてもよくわかるぅ……」
「ファントムは本当にすぐ人を怒らせるんだから! よくないよ、そういうの!」
「はん、知らねーな」
子孫たちに叱られても響かないご先祖ぉ。
「えーと、つまり俺の症状改善には、自力のギア上げあるのみ?」
「そうだな」
自力のギア上げかぁ……!
そういえばラウトと戦うために、ディアスもギア上げを繰り返しやってたなぁ!
そうか、アレのことか。
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