終末革命ギア・フィーネ〜転生先が婚約破棄した聖女を追放してザマァされる悪役王子なんだが、破滅したくないので彼女と幸せになります!〜

古森きり

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二人の聖女と悪魔の亡霊編

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「は? そんなやついる?」
「ここにいるな」

 え? 俺特殊?
 ナルミさんが挙げた理由は心当たりしかないが、ファントムにとってはかなりおかしいらしい。
 ……俺、そんなに特殊なの?

「自力でギア上げしたことない? ……逆にどうして自力でギア上げせず生き残れたんだ?」
「千年前と環境が違うからねぇ。ヒューバートが前線に出て、ギア・フィーネで戦う必要があまりないんだよ。この子、一国の王子だし、最初からディアスとラウトが側にいるし」
「過保護してんじゃねーよ、チビ」
「身長は関係ないだろう! 殺すぞ!」

 あああああぁっ!
 せっかくナルミさんが穏やかに解説していたのにー!
 なぜそこで喧嘩を売るんだファントム!
 ラウトに身長のことは禁句で頼むー!

「ラウト、魔力漏れてる! 落ち着いて! 大丈夫、俺より高いじゃん!」
「喧しい! もうほとんど同じだろうが! 殺すぞ!」
「ヒューバート、それは火に油だよ!」

 あれぇ!?

「まあ、ヒューバートは成長期だしね。ところでその身長の話、子どもの体のヒューマノイドを使っているボクも当てはまるからやめない?」
「やめましょう!」

 ナルミさんも該当すんのぉ!
 もうやだ身長の話永遠に禁止でお願いします!

「今のはファントムが悪いよ。ちゃんと謝りなよ」
「自力でギア上げしてないこのガキが悪いんだろ」
「おおおう!?」

 責任と原因俺に丸投げぇ!?
 き、聞きしに勝る鬼畜! 邪悪! 悪魔!
 ミレルダ嬢が肘で軽く突いても無視!
 お、恐ろしいいぃ!
 デュレオより天上天下唯我独尊すぎないですか?
 デュレオの方がまだ多少の面倒臭さはあるものの、ツンデレのデレがありますが?
 なにこの人、一昔前の俺様系すぎないぃぃ!?
 怖ぁぁぁぁあっ!

「自力のギア上げはだ。それで少しずつ同調率を上げて、ギア上げを安定させていく。それをやらずにいきなり“歌い手”の歌でギアを上げれば、倒れるに決まっている」
「……っ」
「最初から“歌い手”の歌は“ブースター”だと聞いていたのだろう? ブースターばかり使っていれば同調率は上がるわけもない。次に“歌い手”の歌を聴いてギア上げしたら死ぬぞ、お前」
「う……」

 はっきりと、言われた。
 死ぬ。
 死ぬのは……死ぬのは、嫌だ。
 ——あの時、デュレオに言われたことは覚えてる。
 でも、俺は、まだ死にたく、ない!

「シャルロット・ユン・ルレーンは“歌い手”ではないのか?」
「才能はある。リリファとアベルトの子孫だからな」
「……ああ、やはりそうなのか……」

 自分で聞いておきながら、ラウトが視線を背ける。
 もしかして、睨むように見ていたのって、それを確認したかったからなのかな?

「あとこいつも」
「そう! ボクも“歌い手”の才能があるらしいよ! でもボクは三号機の登録者になるけどね!」
「ミレルダ嬢も?」

 へー、マジか!
 というか、やっぱり聖女はイコール“歌い手”の才能があるんだな。
 ……俺、結構ピンチなのでは?
 “歌い手”が増えると死の危険が増えるということなのでは?
 ワ、ワァ……。

「あ、でもジェラルドも適性があるって言ってませんでした?」
「ぼく?」
「ああ、ミレルダより同調率が高い。ミレルダが10%。ジェラルドは18%」
「俺より高いじゃん!?」
「は、はわわ……!」

 しょ、衝撃の事実!
 マジでジェラルドが俺よりギア・フィーネとの同調率が高い!
 そんなことある!?
 あるけど!

「ラウトは?」
「なんで俺の同調率を知りたがる?」
「面白そうじゃないか」

 そしてナルミさんは好奇心に負けた顔してる。
 なぜか巻き込まれるラウト。
 でも神鎧に至ったラウトの同調率は、ちょっと俺も気になる。

「搭乗時はさらに上がるだろうが、平時で90%だな」
「「たっっっっか!?」」
「へぇー、やっぱり面白いね。ファントム、キミ、ひと段落ついたらルオートニスに来てシズフも鑑定してよ。面白そうなデータがたくさん取れそう」
「さすが、自分に懸想している男相手にも容赦のないゲス発言だな加賀鳴海。お前のそういうところが本気で気持ち悪い」
「余計なこと言わないでくれるかなぁ!」

 …………。
 ん? 今なんかサラリと爆弾を投下されたような?

「え! シズフさんってナルミさんのこと好きだったんですか!?」
「拾わなくていいんだよ、ヒューバート!」
「趣味悪いよな。そもそも自分の兄の婚約者だろ? 二重に趣味が悪いよな」
「むしろシズフさんにそういう感情があったんだぁっていう」
「私とシズフの話は今関係ないだろう!」

 でもこんなに照れて焦っているナルミさんは見たことがない。
 つ、つまり…………マジ!
 うっわー、マジ!

「ぼくのご先祖様がみんなに『性格最悪』って言われていた意味が、今とてもよくわかるぅ……」
「ファントムは本当にすぐ人を怒らせるんだから! よくないよ、そういうの!」
「はん、知らねーな」

 子孫たちに叱られても響かないご先祖ぉ。

「えーと、つまり俺の症状改善には、自力のギア上げあるのみ?」
「そうだな」

 自力のギア上げかぁ……!
 そういえばラウトと戦うために、ディアスもギア上げを繰り返しやってたなぁ!
 そうか、アレのことか。

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