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間章
魔法の始まり
しおりを挟む「体内にシズフが魔石をぶち込んだんでしょう? もう少し時間が経って霊魂体化したら、あの濃度の結晶魔石が体内で霊魂体の結晶化して聖女と同じ体質になるよ」
「聖女の魔法を、デュレオも使えるってことですか!?」
「俺の体作り替えられてんの!?」
「…………」
い、言い方ァ。
でもナルミさんの言い方だと確かにその通りですねえ!
え、可哀想。
「でもその理屈で言うと、例えば俺がシズフさんの吐いた結晶魔石を飲み込んでも、レナと同じことができるようになるってことでは……」
「それはやらない方がお利口さん。結晶魔石……もとい魔石って千年前には存在しなかった鉱物なんだよね。だから、色々調べてみたんですよ。そうしたら、これは鉱物というより猛毒の結晶っぽいの」
「え」
も、猛毒の結晶?
思わずドン引きしてしまった。
「触れる部分は薄いけど頑丈な膜。割るのにもかなりの力が必要だけど、その中身は人体には有害。そもそも霊魂体化自体が意味のわからない現象なんだけど、多分これは分解物質だねぇ。聖女のDNAを調べてみないとなんとも言えないけど、多分なんらかの条件を遺伝子に持つ“女性”でなければ、この有毒物質を霊魂体に取り込み一体化することができるないんだと思いますよ。調べてみないとわかりませんけど。……調べてみたいよね?」
「い、いいえ、今は別に……」
「チッ」
舌打ちされた!?
だってナルミさん目が怖いんだもん!?
「まず魔法がわかんないよね。いつからこの世界で使えるようになったんだろう?」
「それなんだよね。千年前には存在せず、現代では必要不可欠なあって当たり前のもの。結晶病自体は、千年前にラウトの覚醒と暴走で発生が確認されているけれど……」
「なんかないの? 王子サマ。歴史とかでさぁ、語り継がれてるとかさぁ」
「そ、そう言われると……」
デュレオとナルミさんの質問に、頭を抱えてしまう。
歴史の授業でやったっけか?
ついリーンズ先輩の方を見てしまう。
リーンズ先輩は、なにかご存知ありませんかぁ!?
「そうですね……およそ七百年前に、魔王が現れたと言われていますね」
「は? 魔王? ゲームかよ」
「美の神の言うゲームはわかりかねますが、魔法を授けに魔王が現れたそうです。杖と、そして知識。晶魔獣の結晶魔石の使い方、そして杖の素材となる魔樹。この四つを当時残っていた国々に授けて、消えたといいます。わたくしめは魔樹の歴史を調べていて、古い文献の記述を読んだだけなので、それ以上はわかりませんが」
へぇ、そんな文献があるのか。
さすがリーンズ先輩、魔樹のためにそこまで古い文献を探し当てるとは。
……しかし、よくよく考えると確かに奇妙な話かもしれない。
魔法がない世界に、魔法が生まれて今は日常的に使われる。
その始まり、かぁ。
「七百年前って俺が結晶化した大地で自殺してみようと思った頃じゃん」
「なにしてんの」
「だってこれならイケるかもって思ったんだもん。無駄だったけど」
デュレオって本当に死にたがりだったんだなぁ。
「ロス家の坊ちゃんは結晶化した大地に取り込まれたことないんでしょ? あいつなにか知ってんじゃないの?」
「彷徨ってた頃のことは記憶が曖昧って言ってたからなぁ」
「……? そういえばなんでロス家の坊ちゃんだけ結晶化した大地に取り込まれなかったの? 詳しく聞いてないけど、彷徨ってたってことは結晶化した大地を聖女よろしく歩き回ってたってことでしょ?」
「え? ……あ」
そういえば……!
デュレオの言う通り、ディアスは目覚めてから結晶化した大地を彷徨っていたって言ってた。
確かに、どうしてだ?
多分同じ“感染者”のシズフさんは結晶の中に閉じ込められて眠っていたのに、デュレオは結晶化した大地の上を歩いていた。
そのあと魔法を独学で覚えた、みたいなことを前に言っていたけど……。
それに、魔王。
『救国聖女は浮気王子に捨てられる~私を拾ったのは呪われてデュラハンになっていた魔王様でした~』——でも、魔王がタイトルに入っている。
魔王ってディアスのことのはずだ。
だって、元デュラハンだし。
漫画でレナが身を寄せる死者の村も、魔王デュラハンが作った村。
じゃあ、やっぱりディアスが魔王?
ディアスに“医神”だけじゃなく古の魔王の肩書きも追加か!?
「ザード・コアブロシアのことではないのか?」
と、そこで口を挟んできたのはシズフさん。
ザード・コアブロシアはギア・フィーネシリーズ三号機の登録者。
けど七百年は、さすがにお亡くなりになってるのでは?
「……確かにあいつ俺から見ても性格最悪の悪魔だけどね」
「魔王と言われると確かに性格は魔王そのものですよね」
この知ってる人たちの言い様よ……。
デュレオとナルミさんにまで言われるって相当だよ、本当。
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