終末革命ギア・フィーネ〜転生先が婚約破棄した聖女を追放してザマァされる悪役王子なんだが、破滅したくないので彼女と幸せになります!〜

古森きり

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ハニュレオ編

運命の強制力?(2)

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 っていうかさぁぁぁぁ!
 俺まだ16歳ですけどぅぉぉぉおお!?
『ヒューバート・ルオートニス』が結晶化した大地クリステルエリアに呑まれて死ぬのは、18歳の時だろおおおおぉ!?
 なんでこんなに早く結晶化津波とか、死亡フラグが立ってんのおおおぉぉぉ!?
 俺がレナと仲良くして、破滅エンドを回避しようと色々変えたせいかなぁぁぁぁあ!?
 だとしたら運命の強制力ハンパなくねえええぇ!?
 泣くよ? ゲロ吐くよ?
 オエエエエエエエェッッッ!

「当然のようにこの俺とブレイクナイトゼロを戦力に数えるな」
「え? ダメなの?」

 ラウトが不満そう。
 さすがの俺もラウトが嫌というのなら、強制はできない。
 なぜならラウトの方が神様として偉いので。

「別に。ただチャージ100%を撃つのなら、お前の大好きな結晶魔石クリステルストーンは諦めろよ」
「ええぇ……」

 陸竜と陸帝竜ベヒモス結晶魔石クリステルストーンは、なんとか残していただけないでしょうか。

「ヒューバート・ルオートニス、俺とディプライヴも戦力に数えてくれて構わない」
「えっ、い、いいんですか?」
「晶魔獣というのはよくわからないが、その状態のお前が出るというのならよほど切羽詰まった状況なのだろう? それならば……お前より俺が出た方がましだろう」
「それは……そうですね」

 というか、めちゃくちゃ心強いですね。
 俺、多分役には立ちませんしね?
 棒立ちで魔法使って壁に徹しますよ?

「結晶化津波とやらが如何程のものか、楽しみだな」
「ラウトだけだよ」

 舌舐めずりまでしおってからに。

「デュレオ、お前はここで歌を歌え」
「はあ?」

 出入り口の扉に歩き出していたシズフさんが、立ち止まってデュレオにそう言った。
 忘れてたけど、そうか、そういえば——デュレオは千年前の“歌い手”なのだ。
 “歌い手”……ギア・フィーネのギア上げを手助けしてくれるブースター。

「なんでお前らのこと助けるようなことしなきゃならないわけー? 嫌でーす」
「死ねないのなら、俺が一緒に永遠を生きてやる」
「は?」

 振り返ったシズフさんが告げたのは、側から聞くとプロポーズ?
 なぜだかその声と言葉がとても静かに響いて聞こえてきた。
 まるで、この場にシズフさんとデュレオだけしかいないみたいだ。
 映画の中。
 俺たちは観客。
 みたいな……。

「……正気?」
「…………」

 聞き返したデュレオに答えることなく、部屋から出て行ってしまう。
 ラウトもキョトンとしてから、俺たちの顔を見て肩を竦めてあとを追う。
 残った俺たちと技術者たち、そしてデュレオ。
 ソファーに座ったままやる気のなさそうな顔をしていたデュレオは、また「正気じゃないよねぇ」と嘲笑を浮かべる。

「……俺たちも動き出そう。王都と技術者の人たちを頼むよ、レナ」
「わかりました。ソードリオ陛下にも許可をいただきます。……お側で歌わなくても、大丈夫なのでしょうか」
「どうせ俺は突っ立って王都に晶魔獣が抜けないよう、壁を作ってるだけだろうから大丈夫。むしろ、王都を守るにはレナの力が必要不可欠だよ。頼むね」
「はい! わかりました!」
「よし、ジェラルド、ランディ、行くぞ」
「は~い」
「はっ!」

 結晶化しないギア・フィーネと石晶巨兵クォーツドールで対応するのは、戦略的にも正しいはずだ。
 王都の守りはソードリオ王とハニュレオの騎士団に任せよう。

「「…………」」
「あ、さ、先に行ってて、いいよ……!」

 部屋から出ようとしているジェラルドとランディが、のろのろと起き上がった俺を振り返る。
 俺の体、今ほとんど自分の意思通りに動かないんですわ。
 ここは俺に任せて先に行け……なんてな……ふふ……。

「せ、先行いたしますね!」
「ゆっくり来ていいからね~」
「お、おーう……」

 気を遣わせてしまったが、ここからまた一時間ほどかけてイノセント・ゼロに向かう。
 その間にレナがソードリオ王に事態を伝え、俺と入れ違いで例の早馬が入ってきた。
 たくさん水飲んで安心して寝ててくれ。

「イノセント」
『レーダーで確認している。接近している物体が晶魔獣だな? これを倒す感じ?』
「ああ、俺は一番操縦が下手だから、できるだけ動かずに漏れたヤツの足止め役だ」
『了解。頑張ろうな』
「もちろん。——イノセント・ゼロ、行くぞ!」

 ロボアニメのように母艦から出撃!って感じじゃないから、城からよろよろ飛び立つ。
 ここから五キロほどのところで戦闘が既に始まっている。

「……そういえばシズフさんが、デュレオに『歌え』って言ってたけど、城に置いてきてよかったのかな?」
『デュレオ? デュレオ・ビドロ? “歌い手”が城にいるのか?』
「いるね」
『——それなら距離はあまり関係ない。“歌い手”の歌声も脳波に影響する波動だから』
「波動?」

 ポテモン?
 なんかそういうポテモンいたよね?
 あんな感じ?

「うわ……」

 見えてきた結晶化津波。
 白いもやを立てながら、巨大な“山”。
 雲を纏った、山が迫ってきている。

「……あはは……」

 笑っちまうわ、こんなの。
 横幅の距離が、ヤベェ。
 地平線すべてが晶魔獣なのか。
 これが、結晶化津波。
 これが、この世界でもっとも恐れられる自然災害。

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