上 下
31 / 69
目指せマイナス五キロ。人生初のパーティで恋愛イベントを成功させよ!

第7話!

しおりを挟む


 ハクラと別れて湖のほとりにある広場へと進む。
 その広場はそこそこの人が集まっており、そのほとんどは今回のパーティの参加者へ意気込みをインタビューするメディアの人。
 うわぁ、めんどくさい。
 私たちも立ち所にロックオンされる。

「すみません、参加者の方々ですね!? 意気込みをお願いします!」
「申し訳ございません。目立つ事は控えたいのです。お許しください」
「あ、えっとでは、その後ろの!」
「す、すみません、急ぎますので!」
「わ、私も!」

 涼やかにインタビューを断るエルフィに付いて、マイクを避ける。
 広場の転移陣を発動させるエルフィ。
 次の瞬間、王城門前……城壁広場へとたどり着く。
 六つの城壁への転移陣が並んでいる。
 赤い転移陣、騎士のオブジェは『騎士団の城壁』。
 名の通り騎士団の詰所や宿舎や訓練所などがある。
 黄色い転移陣、本のオブジェは『歴史と知識の城壁』。
 通称『図書館』。この国の知識の宝庫。
 紫色の転移陣、女神のオブジェは『慈愛の庭の城壁』。
 城で働く士官や客、旅人などが泊まれる超大型ホテル町だ。
 青の転移陣、剣と盾のオブジェは『力と守りの城壁』。
 闘技場付きの健康ランドのような場所らしい。
 緑色の転移陣、花のオブジェは『国光の城壁』。
 国の研究施設や戸籍の管理など役所の中枢。ここはアイテムがないと入れない、一般人立ち入り禁止。
 白い転移陣、クリスタルのオブジェは『眠りの城壁』。
 衣類、食料、魔石などが保管された氷点下の貯蔵庫。一応施錠された扉はあるが、用がないのに立ち入ると下手したら誰にも気付かれず凍死する。
 普段なら多くの人が『図書館』や健康ランド……じゃなく『力と守りの城壁』に訪れる場所。
 その奥に、十メートルはありそうな城門がそびえている。
 普段は閉まっているその門が、今日はしっかり開いてお客を迎え入れていた。
 お、おお……すげぇ迫力……。

「参加者の受付は中になります! 参加者の方は奥へどうぞー」

 門番の衛騎士さんに促されて、ついに城門をくぐる。
 噴水と、左右に広大な庭。
 まあ、山頂なので緑は豊かだろうけどさ。
 噴水を過ぎていよいよ城内。
 また衛騎士さんたちが待機していて、こちらへ、と案内される。
 まあ、案内してもらえるのはいいんだけど。

「やばい……もう足が痛い……!」
「は、早いですわ、ミスズ様……!」
「だ、だってこんな高いヒール、そんなにすぐ履きなれないわよ~」

 足がガクガクなんだけど! つらい!
 愚痴る私をマーファリーが支えてくれるが、それで治るわけもなく!

「どうしました?」
「あ……」

 エルフィがサクサクと受付を済ませ、私が休める場所はないかと受付にいた衛騎士に聞いてくれた。
 しかし、その前に私とマーファリーに女性の声がかかる。
 振り返ると胸元が大きく開いたボディコンのような服に薄い肩掛けを纏った紫髪の美女。
 な、なんというグラマラス……! かつ、お色気!

「まあ、ミュエ先生! ごきげんよう」
「ごきげんよう、エルファリーフ」
「先生、どうしてこちらへ?」
「会場設営の手伝いよ。男ばかりでは華やかな飾り付けに欠けるでしょう? それから女性たちへのアドザイザーとして別室で講義をしていたの。あなたたちより前に到着している一般参加の子たちへ最低限のマナーとかをね」
「そうでしたの」

 ……あのミニスカボディコン風の服装はマナー的に大丈夫なんだろうか?
 非常に気になるんだが、そこは異世界。
 私の世界とは常識が違うのかも。

「……ですが、その……本日はまた、いつも以上に刺激的なお召し物ですわね……」
「この後旦那とデートなのよ~! うふふ! つい張り切って買っちゃった」

 既婚者!? 既婚者でそれ!?
 ひ、ひえええぇ!? 旦那さんいいもん食ってんなぁ!?

「今年はうちの末弟がパーティに参加するでしょ? 少し覗いて様子を見てから待ち合わせ場所に行くつもりなんだけど……エルファリーフ、ハリィがなにか失礼な事を言ったら容赦なくぶん殴って注意してくれていいからね」
「と、とんでもございませんわ! ハーディバル様には先日も我が町に出現した魔獣を退治していただきましたし……。わたくしの誕生日プレゼントで頂いた魔石のネックレスも、攻撃無効化の魔法が封じてあり、守ってくださいましたもの。本日は改めて御礼申し上げねばと思っておりますの」
「……まあ! なんてダサい……」
「そ、そんな事はございませんわ! このネックレスのお陰でわたくし命拾いいたしましたのよ」

 テンション高めのお姉さん……いやお姉様はエルフィの手にあるネックレスを見るなりテンションが下がり声も下がった。
 うーん、それには同意する。
 効果は抜群だったけどなにぶんダサい。
 まさか今日もそのダサいネックレスを大切そうに首に下げているとは思わず、私とマーファリーの肩が一瞬強張った。
 あのドレスに、あのダサいネックレスを合わせてきた!?
 正気の沙汰とは思えないわよ!?

「だとしてももう少しセンスのいい物があったと思うんだけれど……? ……あいつ、うちに帰ったらゲンコツね」
「ミュエ先生……!」
「ところで、そちらのお嬢さん大丈夫? あなたのお連れ?」
「あ、はい」

 エルフィとの会話を打ち切り、私に向き直るお色気ムンムン美女。
 そこでエルフィが「ミュエベール・フェルベール先生です。わたくしが以前通っていた魔法学校の先生ですの」と紹介してくれた。
 あれ、フェルベールって……。

「愚弟がいつも迷惑をかけてるわね?」
「い、いいえ」

 や、やっぱりドS騎士のお姉さん!?
 女性初の『剣聖』の、あの!?
 ひえーー!? こんな若くて美人でお色気ムンムンな人が『剣聖』~~!?
 しかも魅惑の女教師!? なんて盛りだくさんなの!?

「こちらは我が家の客人ミスズ様と、我が家のメイドのマーファリーですわ」
「ミスズ……? もしかして、異界から事故でいらしたという?」
「……あ、は、はい……」
「そう、あなたが……。魔法の事故に巻き込まれるなんて災難だったわね……」
「……そ、それは、はい……まあ……。でも、特に不便もなく手厚くもてなしてもらっているので不満はないです」

 これは本当だ。
 エルフィは可愛いし、ユスフィーナさんも忙しいながらちゃんと私に気を遣ってくれる。
 マーファリーなんてトイレやお風呂の時に必ずお世話になるし……。
 本当、有り難い限り。
 もし言葉も通じず、放り出されていたら世界を呪いながら死んでる自信があるわ。

「それならいいのだけれど……。今現在困っているようだったわよ?」
「あ、はい……ヒールが履きなれなくて、踵が……」

 実際足もかなりクタクタ。
 踵は皮が剥けて血がストッキングにどろりとついている。
 マーファリーとエルフィが「きゃあ……っ」と痛そうに声を上げるが、実際痛い私は声もあげられないし足もこれ以上動かない。
 プルプル立ち竦むのみだ。

「わ、わたくしの治癒魔法で……」
「いけません、お嬢様! このような廊下の真ん中で……!」
「ですが……」

 しゃがみ込もうとするエルフィをマーファリーが制する。
 確かに、ロングドレスのエルフィがしゃがむのは少しお行儀が悪い。
 私もドレスの裾をまくらないといけないから、少し恥ずかしいし。

「私も得意属性は『火属性』と『雷属性』で治癒魔法は使えないのよね」

 ……わ、わおう、お姉様、なんて攻撃的な属性……!

「あ、ちょうどいいところにちょうどいい奴が……ランスロット!」

 突然お姉様が私の向こう側に声を掛ける。
 そこには右肩に鎧を付けた赤いマントの騎士がいた。
 黄土色の髪と瞳の大柄な人物は「これはミュエベール殿!」とまるで大型犬のように駆け寄ってくる。
 彼の横に立っていたプラチナブロンドの髪と緑の瞳の優しげな超イケメンも、彼に続いて近づいてきた。
 同じく肩に軽微な鎧をつけた薄い水色のマントの騎士服の男性。

「こんばんは、ミュエベール様」
「どうかなされたのかな!?」
「……ランスロット団長、少し声量をお控えくださいと申し上げたばかりですよ」
「おっとすまんすまん!」

 ……全然声量が下がる気配のない大柄な人物……。
 ……ランスロット、団長……!
 それって……!

「ま、まあ……エーデファー団長様……! ご、ごきげんよう……」
「ん! こちらはユスフィアーデ家の! ご無沙汰している! お元気であるかな!?」
「は、はい。姉共々……」
「それはなによ、り!?」

 挨拶もそこそこに、ランスロット団長の側頭部をミュエ先生がチョップでぶん殴る。
 な、なぜに!?

「声量を下げなさい! パーティ会場でもその声量だったらつまみ出すわよ!」
「……はっはっはっ! また怒られてしまったよスヴェンくん!」
「……そうでしょうね」

 ランスロット団長の横にゆっくり歩いてきた超イケメンも笑顔で頷く。
 というか、やっぱり……この甘いマスクの超イケメンさんが……!

「ご無沙汰しております、ユスフィアーデ嬢。大きくなられましたね」
「ごきげんよう……お久しぶりですわ、ヴォルガン様」
「お姉様はお元気ですか? 領主となられたそうで」
「はい。日々忙しそうにしておりますが……」
「先日は大変でしたね……ハーディバル隊長が数十年ぶりのレベル3と対峙したと言っていましたが……町の被害は……」
「幸い、もうお一方手練れの者がおりましたので町や民の被害は最小限に済みました。御心配ありがとうございます」
「ふむ、我々も駆けつければよかったのだが……」
「ストップ! 仕事の話はそれまで!」

 がすっ!
 またもランスロット団長の側頭部にミュエ先生のチョップが入る。
 ……結構痛そうな音がしているのに、ランスロット団長全然平気そうだな。

「ランスロット、こちらのお嬢さん、足をくじかれたようなの。別室に運んであげて」
「なんと! それはお辛いな! では少々失礼させていただこう!」
「へ!」

 どーん! と胸を叩いたランスロット団長に、まるで小型犬か猫のようにひょいと担がれる。
 いわゆるお姫様抱っこで。
 状況は分かるが頭が追いつかない。
 え? 待って、ちょっと待って。
 お姫様抱っこって、そんな、え、これはちょ……このシチュエーションは……!

「こっちよ。休憩用の部屋が用意してあるからパーティが始まる前に治療しましょう」
「わたくしが!」
「では私が……」

 ミュエ先生が案内してくれた部屋に軽々運ばれる私を治療する役目に、エルフィとスヴェン隊長が名乗りをあげる。
 が、正直それどころじゃないし、出来ればエルフィにお願いしたい。
 だって、ランスロット団長ってっ……そんな、私が想像してたより全然色気たっぷりの大人の男じゃない!?
 ななななななによこの人のこの色気!?
 性格は全然お色気担当っぽくないのに!
 いい匂いするし、あったかいし、胸板厚いし逞しいし……っ!
 包容力? これがマーファリーの言ってた包容力なの!?

「大丈夫か?」
「……は、はひぃっ」
「心配ない、パーティが始まる前には治る。スヴェンくんは治癒魔法のエキスパートだからな! ははは!」

 ……スヴェン隊長決定?
 いやいや、それより顔の近くで喋んないで!
 私、こんな、男の人にこんなに近くで喋られた事もなければこんな密着した事もないしですね!?
 お姫様抱っこなんてゲームや漫画の中で見てキャーキャー言ってるだけの……あれです、喪女というやつなんですよ!!
 免疫ゼロ! 経験どころか免疫がないんですぅ! ゆるしてぇぇぇ!

「大丈夫?」
「…………………………」

 別室に連れていかれ、豪華な部屋を見回す余裕すらなく、俯いて椅子に座らせられた私。
 先ほどの熱い胸や腕の感触に凍りついたというか熱で茹でたというか。
 頭が混乱から抜け出せない!


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

やり直すなら、貴方とは結婚しません

わらびもち
恋愛
「君となんて結婚しなければよかったよ」 「は…………?」  夫からの辛辣な言葉に、私は一瞬息をするのも忘れてしまった。

私、異世界で監禁されました!?

星宮歌
恋愛
ただただ、苦しかった。 暴力をふるわれ、いじめられる毎日。それでも過ぎていく日常。けれど、ある日、いじめっ子グループに突き飛ばされ、トラックに轢かれたことで全てが変わる。 『ここ、どこ?』 声にならない声、見たこともない豪奢な部屋。混乱する私にもたらされるのは、幸せか、不幸せか。 今、全ての歯車が動き出す。 片翼シリーズ第一弾の作品です。 続編は『わたくし、異世界で婚約破棄されました!?』ですので、そちらもどうぞ! 溺愛は結構後半です。 なろうでも公開してます。

【完結】婚約者に忘れられていた私

稲垣桜
恋愛
「やっぱり帰ってきてた」  「そのようだね。あれが問題の彼女?アシュリーの方が綺麗なのにな」  私は夜会の会場で、間違うことなく自身の婚約者が、栗毛の令嬢を愛しそうな瞳で見つめながら腰を抱き寄せて、それはそれは親しそうに見つめ合ってダンスをする姿を視線の先にとらえていた。  エスコートを申し出てくれた令息は私の横に立って、そんな冗談を口にしながら二人に視線を向けていた。  ここはベイモント侯爵家の夜会の会場。  私はとある方から国境の騎士団に所属している婚約者が『もう二か月前に帰ってきてる』という話を聞いて、ちょっとは驚いたけど「やっぱりか」と思った。  あれだけ出し続けた手紙の返事がないんだもん。そう思っても仕方ないよでしょ?    まあ、帰ってきているのはいいけど、女も一緒?  誰?  あれ?  せめて婚約者の私に『もうすぐ戻れる』とか、『もう帰ってきた』の一言ぐらいあってもいいんじゃない?  もうあなたなんてポイよポイッ。  ※ゆる~い設定です。  ※ご都合主義です。そんなものかと思ってください。  ※視点が一話一話変わる場面もあります。

一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!

当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。 しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。 彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。 このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。 しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。 好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。 ※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*) ※他のサイトにも重複投稿しています。

私はただ一度の暴言が許せない

ちくわぶ(まるどらむぎ)
恋愛
厳かな結婚式だった。 花婿が花嫁のベールを上げるまでは。 ベールを上げ、その日初めて花嫁の顔を見た花婿マティアスは暴言を吐いた。 「私の花嫁は花のようなスカーレットだ!お前ではない!」と。 そして花嫁の父に向かって怒鳴った。 「騙したな!スカーレットではなく別人をよこすとは! この婚姻はなしだ!訴えてやるから覚悟しろ!」と。 そこから始まる物語。 作者独自の世界観です。 短編予定。 のちのち、ちょこちょこ続編を書くかもしれません。 話が進むにつれ、ヒロイン・スカーレットの印象が変わっていくと思いますが。 楽しんでいただけると嬉しいです。 ※9/10 13話公開後、ミスに気づいて何度か文を訂正、追加しました。申し訳ありません。 ※9/20 最終回予定でしたが、訂正終わりませんでした!すみません!明日最終です! ※9/21 本編完結いたしました。ヒロインの夢がどうなったか、のところまでです。 ヒロインが誰を選んだのか?は読者の皆様に想像していただく終わり方となっております。 今後、番外編として別視点から見た物語など数話ののち、 ヒロインが誰と、どうしているかまでを書いたエピローグを公開する予定です。 よろしくお願いします。 ※9/27 番外編を公開させていただきました。 ※10/3 お話の一部(暴言部分1話、4話、6話)を訂正させていただきました。 ※10/23 お話の一部(14話、番外編11ー1話)を訂正させていただきました。 ※10/25 完結しました。 ここまでお読みくださった皆様。導いてくださった皆様にお礼申し上げます。 たくさんの方から感想をいただきました。 ありがとうございます。 様々なご意見、真摯に受け止めさせていただきたいと思います。 ただ、皆様に楽しんでいただける場であって欲しいと思いますので、 今後はいただいた感想をを非承認とさせていただく場合がございます。 申し訳ありませんが、どうかご了承くださいませ。 もちろん、私は全て読ませていただきます。

異世界は『一妻多夫制』!?溺愛にすら免疫がない私にたくさんの夫は無理です!?

すずなり。
恋愛
ひょんなことから異世界で赤ちゃんに生まれ変わった私。 一人の男の人に拾われて育ててもらうけど・・・成人するくらいから回りがなんだかおかしなことに・・・。 「俺とデートしない?」 「僕と一緒にいようよ。」 「俺だけがお前を守れる。」 (なんでそんなことを私にばっかり言うの!?) そんなことを思ってる時、父親である『シャガ』が口を開いた。 「何言ってんだ?この世界は男が多くて女が少ない。たくさん子供を産んでもらうために、何人とでも結婚していいんだぞ?」 「・・・・へ!?」 『一妻多夫制』の世界で私はどうなるの!? ※お話は全て想像の世界になります。現実世界とはなんの関係もありません。 ※誤字脱字・表現不足は重々承知しております。日々精進いたしますのでご容赦ください。 ただただ暇つぶしに楽しんでいただけると幸いです。すずなり。

側妃、で御座いますか?承知いたしました、ただし条件があります。

とうや
恋愛
「私はシャーロットを妻にしようと思う。君は側妃になってくれ」 成婚の儀を迎える半年前。王太子セオドアは、15年も婚約者だったエマにそう言った。微笑んだままのエマ・シーグローブ公爵令嬢と、驚きの余り硬直する近衛騎士ケイレブ・シェパード。幼馴染だった3人の関係は、シャーロットという少女によって崩れた。 「側妃、で御座いますか?承知いたしました、ただし条件があります」 ********************************************        ATTENTION ******************************************** *世界軸は『側近候補を外されて覚醒したら〜』あたりの、なんちゃってヨーロッパ風。魔法はあるけれど魔王もいないし神様も遠い存在。そんなご都合主義で設定うすうすの世界です。 *いつものような残酷な表現はありませんが、倫理観に難ありで軽い胸糞です。タグを良くご覧ください。 *R-15は保険です。

懐妊を告げずに家を出ます。最愛のあなた、どうかお幸せに。

梅雨の人
恋愛
最愛の夫、ブラッド。 あなたと共に、人生が終わるその時まで互いに慈しみ、愛情に溢れる時を過ごしていけると信じていた。 その時までは。 どうか、幸せになってね。 愛しい人。 さようなら。

処理中です...