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目指せマイナス五キロ。人生初のパーティで恋愛イベントを成功させよ!

第2話!

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「御三家はこんなものね。……あれ、でも、ハーディバルって次男よね? 長男の人は参加しないのかしら?」

 話によると長男の人はフレデリック殿下とジョナサン殿下の執事。
 今回のパーティは騎士団やお城で働く士官の未婚の人も参加するらしいのに。

「エーデルフェル様はどうでしょうね……? なんでもお付き合いされている方と別れたり元サヤったりを繰り返しているという噂がありますから」
「そうなの? じゃあ好きな人がいるかもしれないのね」
「噂だと、そのお相手ってフレデリック殿下なんですよねぇ。殿下自らが主催のお見合いパーティに、殿下が参加させないって決めたらしいですよぅ」
「マジで!?」

 まさかここで王子様と御三家長男が攻略キャラ除外だとおおぉぉ!?
 いや、王子様半獣説が私の中で確立して以降、あまり乗り気になれてはいなかったんだけど……それじゃ完全にアウトじゃない!
 ……わ、私の中の王子様像にまた一つ崩壊の亀裂が……!

「あら、私は別の名士のご子息と聞いた事があるわよ」
「えぇ~!? 本当ですかぁレナメイド長!?」
「ええ。相手が一人っ子で、どうしても後継者を残さなければいけないから何度も別れているみたいだ、って」
「どちらにせよ男の人が相手なのね……」

 ハーディバルのお兄さんか……除外決定……に、しておこうかな。
 なんか男の人が好きな人っぽいし……………………あ、いや、待てよ……男好きっていうか、もしかしてオネェ系だったりして!?
 最近流行ってるしありかも、オネェ系!
 一応万が一って事もあるし、情報集めとくくらいはしといた方がいいんじゃない!?
 別なところで役立つかもしれないし!

「ま、まぁ、一応書き足しておきましょう。ドS騎士のお兄さんなのは間違いないもの、なにか情報が役立つ事もあるかもしれないわ」
「そうですね」
「はい」
「ですねぇ」

 決定。

 ……エーデルフェル・フェルベール氏。
 年齢は二十四歳。
 スヴェン・ヴォルガン氏と幼馴染の同級生であり、親友。
 弟と同じ薄紫の髪は長く、後ろで纏めている。銀眼。
 性格は不明だが、とりあえずお城で怒らせれてはいけないランキングぶっちぎり第一位。…………え、王様より……上だと?
 姉は『三剣聖』、弟が『魔法騎士隊長』なので埋もれがちがだが、二人の殿下の世話を一人でこなす時点で只者ではない上、当然ながら身体強化魔法の使い手であり、その実力は国内五本指に入る。
 得意属性も姉や弟同様複数あるらしく、やはり名士御三家の長男として恥じない実力者。
 ……彼を知る者の情報の全ては『エルメールさんは怒らせてはいけない』で集約されていた。

 …………………………フェルベール家、ヤバくないか。


「こ、こうして纏めると確かに色々と分かりやすいですね……フェルベール家の方々の怒らせてはいけない感とか……」
「は、はい……万が一パーティでハーディバル先生のお姉様やお兄様にお会いしても、これは怒らせてはいけないのだと思いました……!」
「ナ、ナージャはこの先一生会う機会はないと思いますけど~………………やっぱ御三家パネェですねぇ……」

 レナメイド長が怯えるほどってやっぱりフェルベール家がやばいな。

「……ほ、他にも情報集めとく? あ、王子様とか、ハクラとか!」
「え、王子様やハクラもですか? ………………ああ、でも、御三家の方々は元より王城の方々は王子様やハクラとも親しくされているそうですものね」
「確かに殿下たちやハクラ様の事なら、話題性として盛り上がりそうですね」
「むしろ城に住み込みの人は、殿下たちやハクラ様の方が話しやすいかもですねぇ」
「決まりね」

 と言うわけで半分私の攻略のために情報を提供して頂く事にした。
 どれどれ……まずは……。


 ハクラ・シンバルバ。
 年齢十八歳。
 白と黒の混色の髪と金の瞳を持つ美少年。
 アバロンの元奴隷であり、アバロンを救済した英雄。
 現在はアバロン大陸とバルニアン大陸を股にかけた冒険者。
 誰に対してもフレンドリーで人懐こく、人嫌いな幻獣族やドラゴン族とすら友好な関係を築く世界的にも無二の存在。
 しかしその事を鼻にかけるわけでもなく、自慢する事もない。
 彼の人柄はこの国の王族、アバロン大陸の王族、両方に好まれ、寵愛されている。
 称号は『アバロンの英雄』『バルニアンの寵児』『魔銃竜騎士』『調和の王』『自由の象徴』『改革の王』『銀翼の使者』。

 フレデリック・アルバニス
 年齢は不明。二千歳は超えているとの事。
 黒髪黒眼。人外の両親を持つ為彼自身も人外。なので素晴らしい美貌らしい。
 隠居ぎみの国王に代わり国政を担っており、為政者としての手腕は見事なもの。
 地方領主、城の中で働く者や騎士団からも信頼が厚く、まさにカリスマの塊。
 どんな問題もたちどころに解決してしまう。
 王子然とした立ち居振る舞いも完璧で国内での人気は国王のアルバート陛下より高くファンクラブもある。
 幻獣族のみが扱える黒い炎……黒炎こくえんを扱え、その炎は炎でありながら氷の力を有する。

 ジョナサン・アルバニス
 年齢は不明。フレデリック王子とは双子。因みにジョナサン殿下が弟。
 黒髪黒眼。フレデリック王子よりも大柄らしいが、ほとんど表に出る事はなく、幻獣族の血を強く引いているため人嫌いなのではないかと思われる。
 あまりにも表に出てこられないので、情報はこのくらいだ。


 こうして見ると、ハクラの方がある意味ヤバい気がするのは何故かしら。
 というか! なにこの称号……!
 あいつまるで王族気取りじゃない!

「え? そうですよ。ハクラはアルバート陛下に敗北した国の王族の末裔だといわれていますから」

 と、漏らした私にマーファリーがさらりと告げる。
 ……マジで王族……?

「でも、元王族って結構多いですからねぇ。御三家もそうですし、地方領主……この家、ユスフィアーデ家もそうですよぅ」
「あ、そ、そう言えばそうなんだったっけ」

 あまり珍しいものではないんだっけ。
 まあ、でもそれにしてもハクラって本当に語り継がれるレベルの事した奴なのね……。
 そんなオーラないのに……。

「……さて、他にも情報集めるべき人居るかしら?」
「あ、ラッセル・フリューゲル隊長も調べておいた方が良いかもですよ~」
「誰……って、隊長って事は騎士団の人ね」

 ナージャが言うので、再びペンを取る。
 私の文字も日々の練習でだいぶマシになったわねぇ、としみじみ思う。
 まあ、それはさておき……


 ラッセル・フリューゲル氏。
 年齢は二十七歳。
 海竜騎士隊の隊長。
 海南の町の出身で、肌が黒く、濃緑の髪と青い瞳を持つ。
 生真面目な人種の多い騎士の中でやたらと女性に声をかける。チャラいためかなり目立つ……無論悪い意味で。
 あまりにホイホイ女子を取っ替え引っ替えしているのでお見合いパーティへの参加は不要と判断されたのだろう……うん、そうね……。
 ほぼ海の中で魔獣討伐を行なっているので、あまり王都には居ない。
 趣味は相棒のドラゴンと海乗り。好みの女性は軽く遊べる可愛い子。好きな食べ物はもちろん、可愛い女の子。嫌いな食べ物は醜いおっさん。
 初めてでも優しくするよ、とマーファリーから借りた通信端末で調べた情報にあった彼のプロフィールに書いてある。
 いや、なんでこいつだけ個人的にプロフィール開設してるの?
 は? 遊びたい子はここにメール送ってねハートときたもんだぜこれ。

「なにかしら、もう途中から『死ね』って思えてきた」
「こいつ本当に騎士なんですかねぇ~」
「……本当に必要だったのでしょうか……」
「ま、まあ、御三家の方々からすれば同僚の方ですし……」

 レナメイド長の疑問をマーファリーがフォローする。
 まあ、それもそうよね。
 チャラ男はどの世界にもいる、のね。
 いやまさか騎士団の、しかも隊長にいるとは思わなかったけど。
 うーん、こいつ攻略対象になりえるのかしら?
 乙女ゲームにチャラ男はよくいるけど……正直ゲームならシナリオがあるから安心して挑めるのであってリアルだと避けて通りたいかも。
 可愛いエルフィやマーファリーをこんなチャラ男に……?
 はっ、ねぇわ!
 除外決定よ!

「なんか他にましな男いないの? 宰相の息子! とか」
「この国には宰相様は居ないんです。フレデリック殿下が政治を取り仕切っておられますから」
「え、そ、そうなんだ」

 改めて王子様凄いわね。
 えーと、宰相って私の国で言うところの総理大臣的な存在ってゲームに説明があった気がするから……王様が一番偉くて、王子様が総理大臣的な役目を担っているから宰相はいない……。
 あれ、私の思っていた王子様より遥かに仕事してる。
 というか、乙女ゲームの王子様ってそれなりに忙しそうなイメージだけどこの世界の王子様ガチで忙しそう。

「そうですね、御三家の方以外でそれなりの立場の殿方でお年頃の方というと、左大臣のご子息でしょうか」

 あ、大臣はいるのね。
 レナメイド長の話だと、この国の権威は王、王子に続き左右大臣と騎士団が並列。
 その下に副大臣、事務官が上位官、中位官、下位官と続く。
 騎士団が大臣と同等の地位にあるのは、それだけこの国で魔獣が日常的に現れ危険視されているからだ。
 ランスロット団長と副団長の人はつまり、そのくらい偉いって事。
 マジか、思ってた以上だぜ。

「右大臣は領地の統括責任者。そのご子息がスヴェン隊長ですから……左大臣ヴォルフ・グロウリー様のご子息、ハイネル・グロウリー様が……確か今年衛騎士隊から魔法騎士隊に転属されたと情報が」
「何歳?」
「十九歳と」

 真顔でやりとりする私とレナメイド長。
 ……レナメイド長……この人、やりおるわ。
 さすが、エルフィの旦那候補になりえる人物を調べている……!
 アイコンタクトでキュピーンとなって、謎の頷き。

「この人はなかなか狙い目そうね」
「はい。パーティ参加者の名簿にお名前がありますので、無理に御三家の方々に拘らずともよろしいかと」

 なるほど。
 やはり御三家という撒き餌さだけに目を向けていては攻略対象に辿り着かないかもしれないわね。
 ……待てよ……?

「ねぇ、レナメイド長……そのパーティ参加者の名簿って」
「こちらです」
「さすがだわ」

 手渡された名簿には名前の他に年齢と職業が軽く記載してあった。
 これだけではどこ繋がりのどなた、というところまでは分からない。
 あと、顔や性格も。
 その辺りは年齢を中心に絞り込み、関係各所を整理していく事にした。
 今更だけど、ようやく攻略対象を絞り込めるわね。
 ハーディバルやハクラはBとL疑惑がないにしてもなんだか高望み……否、恋愛対象として何か欠点を感じるから少し様子を見ようかな。
 ほらあれよ、ゲームではすぐ会いに行ける、が出来ないっていうか?
 王子様たちもイマイチ私が思っていたのと違うし……毛的なものが。
 なので改めて整理してみると……そうね……。

「ランスロット団長やスヴェン隊長、それと、このハイネルさんって人はいいかもね」

 今度のパーティが出会いのイベントと仮定すると。
 でもあと一人くらい、候補がいてもいいかも。
 誰かいないかな、とレナメイド長に聞くと一人の人物の名前を指差される。

「カミル・クレシャル様はいかがでしょう」
「え、カミルですか?」
「ん? マーファリーの知り合い?」
「はい、同じアバロン出身の亡命者です」
「え、亡命者の人?」

 これには驚いた。
 勿論、私だけでなくマーファリーとナージャも。
 だってエルフィの旦那候補に亡命者の人って……。
 てっきりお金と地位のある人が候補に入ってくるかと……。

「エルファリーフお嬢様もですが、マーファリー、貴方にもこのカミル・クレシャル様はお似合いだと思いますよ」
「わたし!? いえいえ、わたしはお嬢様たちの付き人として……」
「お黙りなさい。早く結婚相手を見つけなければ私のように行き遅れますよ!?」
「メイド長!?」

 説得の仕方が重ーーーい!

「勿論、ミスズお嬢様もです! この機会にお相手を探しておいでなさい!」
「私!? いやいや、私はこの世界の人間ではないし……」
「そんな事言って現実から逃げていると私のように行き遅れますよ」
「うぐっ」

 説得力がパネェェェ……!


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