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4章 王族騎士、一緒に成長を誓う
アウモの変化(1)
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父には反対されない。
むしろ推奨、という感じだ。
降って湧いたような俺の存在は、父にとっても最悪切り捨てても仕方ないってことなのかもしれない。
いや、体調のよくないセアリア夫人を最優先にするのは当たり前か。
「よし! 明日、フェリツェに話そう。うーん……なんて言えばわかってもらえるだろう……」
あの人、俺に迷惑をかけたくない、とか言い出しそう。
なんとか丸め込めるように……じゃなくて、説得できるように……。
うーん、うーん……。
――と、悩んでいたが頭が働かなくなるので、しっかり睡眠はとって、翌日。
騎士団長と副団長にも話は通したし、あとはフェリツェの了解を得るのみ。
まだどのように切り出すか、上手い話し方が思い浮かばないが……とにかくあまり時間はない。
父にも「早ければ早いほどいいが、来月には間違いなく王族への婚姻の話が彼の耳に入る。今は私が止めているけれど、研究者たちの中にも狙っている者が多い。彼らはマロネスから止めてもらっているが、抜け駆けする者もいるかもしれない」とか言われていたし!
見張り塔の玄関は施錠されておらず、普通に中に入って管理人室の扉をノックする。
さすがに管理人室は鍵がかかっているので、フェリツェが起きていなければ開いていない。
だが、すぐに「おはよー」と返事が聞こえてきた。
その声だけで安堵する。
ガチャ、と鍵の開く音と共に、扉が開く。
「おはよう、エリウス! よかった!」
「え?」
少し焦ったような、笑顔の歪んだフェリツェ。
すぐに俺の腕を掴まれて「見て!」と部屋に引き摺り込まれる。
どうしたんだ? またなにかアウモに変化が?
困惑しながら一歩、部屋に入ると――
「あうーぽーぉうあ!」
「……え!? え!?」
「アウモが! アウモが朝起きたら……!」
「ぱーーわぅぉあ!」
両手。五本の指の、ツルツルの肌の……。
薄い緑色の毛先の銀髪、新緑のキラキラした瞳、大きめのシャツをワンピースのように纏った五歳児くらいの人間の子ども? が椅子から立ち上がり、走ってフェリツェの腰に抱きつく。
「あうぱぁーぁぁ」
「なっ……なっ……なっ……ど、っえ……!?」
「朝起きたら、人間の子どもの姿になっていたんだよ……」
「え、ええええええー!?」
満面の笑顔で俺を見上げるこの髪の長い少年が、アウモ!?
なんでこんなことに!? というか、こんなことに、なるの!?
「し、進化したってこと? 成長したって? ええ? こんなことになるの?」
「俺にもわからないんだよ。とりあえず風の魔石を与えたらガブガブ食べたから、アウモであることに間違いはなさそうなんだけど……」
「フェリツェや、騎士団で育てていたから人の姿を真似た……のかも? 言葉は通じるの?」
「ああ、うん……一応? さすがに真っ裸で出歩かせるわけにもいかないから、俺のシャツを着せたんだけど……これってど、どうしたらいいんだ? 服買ってきた方がいい? 買い物行ったばっかりなのに? いや、そもそもこれ、竜の姿に戻るのか? 相変わらずぱうぱう言っててなに言ってるのかは全然わからないんだけど、もしかしてこれ、人語も話せるようになる? 俺のせいで人型になっちゃった?」
「ちょ、ちょっと落ち着いて」
最初はいつものフェリツェかと思ったら、ちゃんと混乱してた。
肩を掴んでひとまず椅子に座らせ、「フェリツェ自身は食事はしたの?」と聞くといかにめ「忘れてた!」という表情。
アウモを優先させて、自分の朝ご飯を忘れていたのか。
非常にフェリツェらしい。
簡単なものを作るから、アウモの面倒を見てて、と言って簡易キッチンに魔石で火を入れる。
フライパンに卵を割って、パンにバターを塗り目玉焼きを載せたものを野菜とともに木皿に盛って出す。
スープは昨日の残りがあったので、それも温め直して出した。
お土産のグレーイプの実を洗ってカットし、デザートという形で出す。
「グレーイプの実じゃないか……! お高いやつ!」
「昨日父が帰ってきてお土産でくれたんだ。たくさんあるから気にしないで食べて」
「えー! でも、これ……風邪引いた時たまーに食べられたやつ……えー、なんか嬉しい。ありがとう、エリウス」
「っ」
孤児院は貧乏だった。
父が俺を引き取ったあとは、公爵家から援助が出るようになったけれどその前は食べるものもみんなで分け合い、果物を食べられるのは病気になった時だけ。
特に栄養の高い黄色いナババの実や、柑橘系最大級のグレーイブの実は病で気持ちの弱った時に食べられる、最高のご馳走。
最悪、そのままそれが最期の晩餐になり得る子どもにとっては――。
それを思い出して笑顔を向けるフェリツェ。
いやーーー……世界一可愛い。
やばい、俺、今日は一段とフェリツェが、好き、って思う。
「ぱぅーぁ!」
「アウモはさっき風の魔石を食べただろう? 俺のご飯も食べてみたいのか?」
「あぱぅ!」
「ふーん? じゃあパン、食べてみる? ほら、アーン」
「アーーーーー」
あれ? フェリツェのために作ったのに、アウモの口に入るの?
座ろうと思ったが、それならと「じゃああと二つ目玉焼き焼くね」と伝えて作業に戻る。
だが、アウモが本当に人間の食事を本当に食べられるのかどうか、俺もつい、窺い見てしまう。
「あむー!」
「「食べた!」」
むしろ推奨、という感じだ。
降って湧いたような俺の存在は、父にとっても最悪切り捨てても仕方ないってことなのかもしれない。
いや、体調のよくないセアリア夫人を最優先にするのは当たり前か。
「よし! 明日、フェリツェに話そう。うーん……なんて言えばわかってもらえるだろう……」
あの人、俺に迷惑をかけたくない、とか言い出しそう。
なんとか丸め込めるように……じゃなくて、説得できるように……。
うーん、うーん……。
――と、悩んでいたが頭が働かなくなるので、しっかり睡眠はとって、翌日。
騎士団長と副団長にも話は通したし、あとはフェリツェの了解を得るのみ。
まだどのように切り出すか、上手い話し方が思い浮かばないが……とにかくあまり時間はない。
父にも「早ければ早いほどいいが、来月には間違いなく王族への婚姻の話が彼の耳に入る。今は私が止めているけれど、研究者たちの中にも狙っている者が多い。彼らはマロネスから止めてもらっているが、抜け駆けする者もいるかもしれない」とか言われていたし!
見張り塔の玄関は施錠されておらず、普通に中に入って管理人室の扉をノックする。
さすがに管理人室は鍵がかかっているので、フェリツェが起きていなければ開いていない。
だが、すぐに「おはよー」と返事が聞こえてきた。
その声だけで安堵する。
ガチャ、と鍵の開く音と共に、扉が開く。
「おはよう、エリウス! よかった!」
「え?」
少し焦ったような、笑顔の歪んだフェリツェ。
すぐに俺の腕を掴まれて「見て!」と部屋に引き摺り込まれる。
どうしたんだ? またなにかアウモに変化が?
困惑しながら一歩、部屋に入ると――
「あうーぽーぉうあ!」
「……え!? え!?」
「アウモが! アウモが朝起きたら……!」
「ぱーーわぅぉあ!」
両手。五本の指の、ツルツルの肌の……。
薄い緑色の毛先の銀髪、新緑のキラキラした瞳、大きめのシャツをワンピースのように纏った五歳児くらいの人間の子ども? が椅子から立ち上がり、走ってフェリツェの腰に抱きつく。
「あうぱぁーぁぁ」
「なっ……なっ……なっ……ど、っえ……!?」
「朝起きたら、人間の子どもの姿になっていたんだよ……」
「え、ええええええー!?」
満面の笑顔で俺を見上げるこの髪の長い少年が、アウモ!?
なんでこんなことに!? というか、こんなことに、なるの!?
「し、進化したってこと? 成長したって? ええ? こんなことになるの?」
「俺にもわからないんだよ。とりあえず風の魔石を与えたらガブガブ食べたから、アウモであることに間違いはなさそうなんだけど……」
「フェリツェや、騎士団で育てていたから人の姿を真似た……のかも? 言葉は通じるの?」
「ああ、うん……一応? さすがに真っ裸で出歩かせるわけにもいかないから、俺のシャツを着せたんだけど……これってど、どうしたらいいんだ? 服買ってきた方がいい? 買い物行ったばっかりなのに? いや、そもそもこれ、竜の姿に戻るのか? 相変わらずぱうぱう言っててなに言ってるのかは全然わからないんだけど、もしかしてこれ、人語も話せるようになる? 俺のせいで人型になっちゃった?」
「ちょ、ちょっと落ち着いて」
最初はいつものフェリツェかと思ったら、ちゃんと混乱してた。
肩を掴んでひとまず椅子に座らせ、「フェリツェ自身は食事はしたの?」と聞くといかにめ「忘れてた!」という表情。
アウモを優先させて、自分の朝ご飯を忘れていたのか。
非常にフェリツェらしい。
簡単なものを作るから、アウモの面倒を見てて、と言って簡易キッチンに魔石で火を入れる。
フライパンに卵を割って、パンにバターを塗り目玉焼きを載せたものを野菜とともに木皿に盛って出す。
スープは昨日の残りがあったので、それも温め直して出した。
お土産のグレーイプの実を洗ってカットし、デザートという形で出す。
「グレーイプの実じゃないか……! お高いやつ!」
「昨日父が帰ってきてお土産でくれたんだ。たくさんあるから気にしないで食べて」
「えー! でも、これ……風邪引いた時たまーに食べられたやつ……えー、なんか嬉しい。ありがとう、エリウス」
「っ」
孤児院は貧乏だった。
父が俺を引き取ったあとは、公爵家から援助が出るようになったけれどその前は食べるものもみんなで分け合い、果物を食べられるのは病気になった時だけ。
特に栄養の高い黄色いナババの実や、柑橘系最大級のグレーイブの実は病で気持ちの弱った時に食べられる、最高のご馳走。
最悪、そのままそれが最期の晩餐になり得る子どもにとっては――。
それを思い出して笑顔を向けるフェリツェ。
いやーーー……世界一可愛い。
やばい、俺、今日は一段とフェリツェが、好き、って思う。
「ぱぅーぁ!」
「アウモはさっき風の魔石を食べただろう? 俺のご飯も食べてみたいのか?」
「あぱぅ!」
「ふーん? じゃあパン、食べてみる? ほら、アーン」
「アーーーーー」
あれ? フェリツェのために作ったのに、アウモの口に入るの?
座ろうと思ったが、それならと「じゃああと二つ目玉焼き焼くね」と伝えて作業に戻る。
だが、アウモが本当に人間の食事を本当に食べられるのかどうか、俺もつい、窺い見てしまう。
「あむー!」
「「食べた!」」
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