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目醒め
しおりを挟む暗闇はうまく言葉では言い表せないなにかがある。
なんだか闇をじっと見つめているとまるで引き込まれてしまいそうな……。
…というのも現に今私がその状況に置かれているからだ。
周りにはどこまでも続いていくような闇が広がっていた。
「…どこなんだ……ここは?」
独りでそう呟いても解決できる問題ではない。
私は目を覚ましてからなぜこのような状況に置かれているかを第一に考えた。
しかし、自分自身が何者であるのかもここに来る前何をしていたのかも全く思い出せないのである。
そう、私は所謂記憶喪失という奴らしい
私はとりあえずここから出ようと体を動かした。
いや、正確には動かそうとした。
まるで金縛りにあったかのように、というよりは何か金属製のもので体を固定されており、体が動かなせいのである。
幸いにも頭部は問題なく動かせるので少し辺りを見回す
やはりそこには暗闇が広がるだけで何もない。
しかし、何かがおかしい
この状況ならあってもおかしくない“何か”を私は感じていない。
何かが、私から抜け落ちている気がするのだ。
私はしばらくそのことに対して思案していると、バン!という随分大きな音がして辺りは暗闇から、眩しい光へ包まれた空間へと一変した。
眩しい光にもだんだんと目が慣れ始め、前方に一つの物体があることを先ず認識する。
どうやらそれは鏡のようだ。
私は自らの容姿を記憶を失ったことにより忘れてしまっているので、体中を細部に至るまで見渡して自分を自分と認識できるようにした。
どうやら私はこの中身の精神年齢に反して身体の方の年齢はかなり若いらしい。
14歳の少年といった所だろうか?
腕や足には手錠や足枷がされていた。
どうやら動かせないのはこのせいらしい
「……ねえ、キミ」
突然の後ろからの声に多少驚き後ろを勢いよく振り返る。
首が少し痛んだがそんなことは気にせずその声の正体を凝視し続けた。
なぜならそれが余りにも異様な形相を呈していたからである。
全身を覆うぶよぶよとした半液状の肉に頭部から数十本は生えてるであろう発達した触手。
身体に比べて異常に大きすぎる腕。
はっきり言ってその姿は異様だった。
……しかし、おかしい。
私はその姿を目の当たりにしても特に動揺もしなかったのである。
そう、私は人間なら誰しもが有している感情…
恐怖を失ってしまっていた。
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