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(番外編)こびとの靴
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さて、というわけで翌週には公園まで馬車を走らせて、ユリウス一行は湖のある公園を訪れた。
リヒトは絵本で描かれていた場所の目途をつけると、早々にそこにしゃがみこんで草を掻き分け始めた。
王城の庭師たちがこちらの公園の手入れも欠かしていないため、雑草がぼうぼうと伸びている、ということはない。
新緑のうつくしい芝が広がり、ところどころで野花が咲いていた。
リヒトは大きな葉っぱをつけている花の根元などを熱心に探している。彼なりに、こびとの隠れやすい場所を考えながら行動しているのだ。
偉いなぁ、可愛いなぁ、とユリウスはその様を観察しながら、けれどリヒトの顔に疲れの色が浮かんではいないか、鼻先をくすぐるオメガの匂いに異常はないかなどを注意深く探った。
「リヒト、ずっとしゃがんでたら血が下がるよ。一回立ち上がろうか」
夢中になって地面を捜索しているリヒトへ声を掛けると、ふぁい、とあやふやな返事が返ってきて、ユリウスは思わず苦笑いを浮かべた。
この子は昔から集中力がすごい。
それはリヒトの美点に他ならないが、ひたすらに地面を捜索している華奢な体は、リヒトが自覚している以上に体力に乏しい。
幼いころの栄養不良に加えて、ユリウスが保護してからも五感が正常に働かないリヒトは、ずっと屋内の生活だった。
食も細く、行動範囲も限られていたリヒトに、筋力や体力を養う余地などなかった。
だからいまこうして、馬車で公園まで出かけられるようになり、草花に触れて景色を楽しむようになれたことは、ユリウスにしてみれば奇跡のようだ。
太陽の下、つばの広い白い帽子にほとんど隠れてしまうリヒトを見下ろしながら、ユリウスはじわりと微笑んだ。
可愛い可愛いユリウスのオメガ。
思う存分こびと探しをさせてあげたいけれど、そろそろ休憩を挟まなければ。
「リヒト。リーヒート。ほら、ゆっくり立って」
薄い背中をさすって促すと、リヒトがハッとしたようにこちらを振り向き、慌てた仕草で立ち上がった。
途端にくらりと揺れた体を支え、ユリウスは腕にひょいと抱き上げた。
リヒトが目を閉じて、ユリウスの胸にもたれかかってくる。
「ゆ、ゆぅりさま、くらくらします」
「だからゆっくり立ってって言ったのに。リヒト、それは立ち眩みだよ」
「たちくらみ」
「そう。頭に血が回りきらないんだ。ゆっくり立ち上がれば大丈夫だから」
ユリウスの説明に、リヒトがわかったようなわからないような微妙な表情のままでこくりと頷いた。
ユリウスはガゼボまで戻ると、リヒトを抱っこしたままベンチに腰を下ろした。目眩が収まったのか、リヒトが何度かまばたきをして、小さく笑った。
「ユーリ様、治りました」
「それは良かった。ほら、僕のオメガ。水分を摂って」
ちゅ、とひたいにキスをして、ユリウスは用意されてあったグラスに手を伸ばす。ユリウスが持ち上げたそれに、すかさずテオバルドが料理長特製ドリンクを注いでくれた。
ユリウス用には、紅茶の準備がある。
テオバルドがテキパキと茶器の支度をし、テーブルクロスの上で持ってきたバスケットを開いた。
中には色とりどりの焼き菓子が詰まっている。
甘いものが好きなリヒトのために、料理長サデスはめきめきとその腕を上げているようだ。先日などはなんとクラウスの屋敷の料理人に、玉子パンの作り方を習いに行ったらしい。
エミール様にいただいた玉子パンがしゅわしゅわで美味しかったんです。リヒトが笑顔で言ったその一言がサデスを駆り立てたというのだから恐ろしい。
僕のオメガはひと誑しなんだよなぁ、と、自身も周囲から同様の評価を得ていることを棚に上げて、ユリウスは焼き菓子を見ながら悩ましい吐息を漏らした。
膝の上のリヒトの口元へグラスを近づけ、そのままそれを飲ませる。
こく、こく、と喉を鳴らす様は幼いころのままだ。
当然のようにそうしてからリヒトは、ハッと我に返ったようにユリウスを見上げてきた。
「僕、自分で飲めます」
真面目な顔で訴えてきたリヒトへと視線を流して、ユリウスは細い手首を掴んだ。
「リヒト、僕のオメガ。その手でグラスが持てるのかな?」
笑いながら問いかけると、リヒトがきょとんとまばたきをして、自身の両手を目の前に翳した。
その丸い指先を見て、リヒトが「わぁ」と声を漏らす。
ひたすらに草を掻き分けていたせいで、リヒトの指先はくすんだ緑色が付着していたのだった。
「ユーリ様、僕の指、緑です」
「そうだね。草の汁が付いちゃったんだろうね」
温室で草花に触れる機会はあったが、こんなふうに無造作に地面に生えている草に触ったのは、リヒトにとって初めての体験だった。
「リヒト、きみの膝も、ほら」
ユリウスがそこへ注意を促すと、リヒトの目が真ん丸になる。
リヒトの履いているゆったりとしたズボンの膝や裾も、ところどころ緑色に染まっていた。
ひぇ~、とテオバルドは内心で悲鳴をあげた。
リヒトのお出かけに際して、こびと探しがしやすいようにとユリウスが選んだ服である。動きやすさ抜群の機能性を重視したズボンは一見シンプルではあったが、つがいに安っぽい服を着せる男ではない。
そのお高い服に、草の汁。
洗濯係の侍女が卒倒するのではないかとテオバルドは危ぶんだが、そもそも服にお金がかかるという根本的なことをあまり意識していないリヒトは、興味津々とばかりに裾を摘まんだり指を動かしたりしながら、緑の染みを観察していた。
「あ」
小さくつぶやいたリヒトが、ズボンにくっついていただ円形の葉っぱを手に取った。
「ユーリ様」
「ん?」
「ユーリ様の目と、おんなじ色の葉っぱです」
うふふ、と笑いながらリヒトが、ユリウスの顔の横まで小さな葉っぱを持ち上げた。
それから彼は、あれ? と首を傾げて。
「でもユーリ様の目の色の方が、やっぱりとってもきれいですね」
おんなじ色だと思ったのに全然違った、と残念そうに話すリヒトを、ユリウスは両腕にぎゅうっと抱きしめた。
なんて可愛いことを言う子だろう。
リヒトが可愛すぎて、ユリウスの心臓はもうもたないかもしれない。
ジタバタと悶えたくなったユリウスの視界の端で、テオバルドがおしぼりの用意をしているのが見えた。
「テオ」
低く、短く、侍従の名を呼んで、ユリウスは氷の一瞥を投げた。
余計な真似をするな、と視線だけで命じて、ユリウスはバスケットを引き寄せ、中が良く見えるように傾けた。
「リヒト、どれがいい?」
料理長の焼き菓子はどれもとても美味しそうだ。
リヒトがパァっと目を輝かせて、薄切りの林檎を薔薇に見立てたミニケーキを指さした。
テオバルドが小皿とフォークをユリウスへと手渡してくる。
そうだ、わかってきたじゃないか。
ユリウスは満足げにひとつ頷くと、
「リヒトの手は汚れているから、僕が食べさせてあげるね」
リヒトへとそう告げて、小皿にミニケーキを取り分けた。
「はい、リヒト」
口元へと蜜がけの林檎を近づけてやると、リヒトがあ~んと口を開く。
もぐもぐと動く頬が可愛い。
以前は口の中の感覚も弱くて、よく食べこぼしをしていたリヒトだが、触覚が治癒してからはきれいに食べられるようになった。
それに加え、味覚と嗅覚が戻ってからは、食事をすることはリヒトにとって喜びのひとつに加わった。
こくり、と嚥下をしてからリヒトは、満月の瞳にユリウスを映して、はにかむように微笑んだ。
「甘酸っぱくて美味しいです」
この子に美味しいものをたらふく食べさせてやりたい、と料理長サデスが思ったのも納得の可愛さである。
ユリウスは上機嫌に、ケーキの残りも手ずからリヒトへと食べさせてやった。
テオバルドは、リヒトの手を拭くために用意したはずの、行き場のなくなったおしぼりを、そっと銀のトレーに載せ、ユリウスの前に置いた。
ユリウスが褒美のようにテオバルドへと、蕩けそうな笑みを向けてきた。
ひぇ~、とテオバルドはまた内心で悲鳴を上げる。
王弟殿下の美貌を見慣れているはずなのに、笑顔ひとつで心臓がバクバクするのだからすごい。
アルファだから美形なのか、はたまたうつくしいからこそのユリウスなのか。
ユリウスの微笑にうっかり惑わされそうになったテオバルドは、思考が混乱してきて、「うわあっ」と茶色い髪を掻き回した。
突然のテオバルドの奇行に、リヒトが目を丸くしてこちらを見てくる。
ことんと小首を傾げたリヒトが、
「ユーリ様、テオさんもお腹が空いたみたいです。ケーキをあげてもいいですか?」
と無邪気にユリウスへと囁いた。
ユリウスがくっくっと肩を揺すって笑い、テオバルドの用意したおしぼりを手に取ると、それでリヒトの口元をやさしく拭ってやる。
それからテオへと視線を流して、僕のリヒトの申し出をまさか断らないよな、と無言の圧を掛けながら、
「テオ、ロンバードも。好きなものを取っていい」
と、バスケットを示した。
味なんてわかるかよ、と内心でツッコミながら、テオバルドは頭を下げた。
ちなみにロンバードは、
「俺は菓子よりも酒がいいんですが」
と実に図々しいことを言ってユリウスを呆れさせたのだった。
リヒトは絵本で描かれていた場所の目途をつけると、早々にそこにしゃがみこんで草を掻き分け始めた。
王城の庭師たちがこちらの公園の手入れも欠かしていないため、雑草がぼうぼうと伸びている、ということはない。
新緑のうつくしい芝が広がり、ところどころで野花が咲いていた。
リヒトは大きな葉っぱをつけている花の根元などを熱心に探している。彼なりに、こびとの隠れやすい場所を考えながら行動しているのだ。
偉いなぁ、可愛いなぁ、とユリウスはその様を観察しながら、けれどリヒトの顔に疲れの色が浮かんではいないか、鼻先をくすぐるオメガの匂いに異常はないかなどを注意深く探った。
「リヒト、ずっとしゃがんでたら血が下がるよ。一回立ち上がろうか」
夢中になって地面を捜索しているリヒトへ声を掛けると、ふぁい、とあやふやな返事が返ってきて、ユリウスは思わず苦笑いを浮かべた。
この子は昔から集中力がすごい。
それはリヒトの美点に他ならないが、ひたすらに地面を捜索している華奢な体は、リヒトが自覚している以上に体力に乏しい。
幼いころの栄養不良に加えて、ユリウスが保護してからも五感が正常に働かないリヒトは、ずっと屋内の生活だった。
食も細く、行動範囲も限られていたリヒトに、筋力や体力を養う余地などなかった。
だからいまこうして、馬車で公園まで出かけられるようになり、草花に触れて景色を楽しむようになれたことは、ユリウスにしてみれば奇跡のようだ。
太陽の下、つばの広い白い帽子にほとんど隠れてしまうリヒトを見下ろしながら、ユリウスはじわりと微笑んだ。
可愛い可愛いユリウスのオメガ。
思う存分こびと探しをさせてあげたいけれど、そろそろ休憩を挟まなければ。
「リヒト。リーヒート。ほら、ゆっくり立って」
薄い背中をさすって促すと、リヒトがハッとしたようにこちらを振り向き、慌てた仕草で立ち上がった。
途端にくらりと揺れた体を支え、ユリウスは腕にひょいと抱き上げた。
リヒトが目を閉じて、ユリウスの胸にもたれかかってくる。
「ゆ、ゆぅりさま、くらくらします」
「だからゆっくり立ってって言ったのに。リヒト、それは立ち眩みだよ」
「たちくらみ」
「そう。頭に血が回りきらないんだ。ゆっくり立ち上がれば大丈夫だから」
ユリウスの説明に、リヒトがわかったようなわからないような微妙な表情のままでこくりと頷いた。
ユリウスはガゼボまで戻ると、リヒトを抱っこしたままベンチに腰を下ろした。目眩が収まったのか、リヒトが何度かまばたきをして、小さく笑った。
「ユーリ様、治りました」
「それは良かった。ほら、僕のオメガ。水分を摂って」
ちゅ、とひたいにキスをして、ユリウスは用意されてあったグラスに手を伸ばす。ユリウスが持ち上げたそれに、すかさずテオバルドが料理長特製ドリンクを注いでくれた。
ユリウス用には、紅茶の準備がある。
テオバルドがテキパキと茶器の支度をし、テーブルクロスの上で持ってきたバスケットを開いた。
中には色とりどりの焼き菓子が詰まっている。
甘いものが好きなリヒトのために、料理長サデスはめきめきとその腕を上げているようだ。先日などはなんとクラウスの屋敷の料理人に、玉子パンの作り方を習いに行ったらしい。
エミール様にいただいた玉子パンがしゅわしゅわで美味しかったんです。リヒトが笑顔で言ったその一言がサデスを駆り立てたというのだから恐ろしい。
僕のオメガはひと誑しなんだよなぁ、と、自身も周囲から同様の評価を得ていることを棚に上げて、ユリウスは焼き菓子を見ながら悩ましい吐息を漏らした。
膝の上のリヒトの口元へグラスを近づけ、そのままそれを飲ませる。
こく、こく、と喉を鳴らす様は幼いころのままだ。
当然のようにそうしてからリヒトは、ハッと我に返ったようにユリウスを見上げてきた。
「僕、自分で飲めます」
真面目な顔で訴えてきたリヒトへと視線を流して、ユリウスは細い手首を掴んだ。
「リヒト、僕のオメガ。その手でグラスが持てるのかな?」
笑いながら問いかけると、リヒトがきょとんとまばたきをして、自身の両手を目の前に翳した。
その丸い指先を見て、リヒトが「わぁ」と声を漏らす。
ひたすらに草を掻き分けていたせいで、リヒトの指先はくすんだ緑色が付着していたのだった。
「ユーリ様、僕の指、緑です」
「そうだね。草の汁が付いちゃったんだろうね」
温室で草花に触れる機会はあったが、こんなふうに無造作に地面に生えている草に触ったのは、リヒトにとって初めての体験だった。
「リヒト、きみの膝も、ほら」
ユリウスがそこへ注意を促すと、リヒトの目が真ん丸になる。
リヒトの履いているゆったりとしたズボンの膝や裾も、ところどころ緑色に染まっていた。
ひぇ~、とテオバルドは内心で悲鳴をあげた。
リヒトのお出かけに際して、こびと探しがしやすいようにとユリウスが選んだ服である。動きやすさ抜群の機能性を重視したズボンは一見シンプルではあったが、つがいに安っぽい服を着せる男ではない。
そのお高い服に、草の汁。
洗濯係の侍女が卒倒するのではないかとテオバルドは危ぶんだが、そもそも服にお金がかかるという根本的なことをあまり意識していないリヒトは、興味津々とばかりに裾を摘まんだり指を動かしたりしながら、緑の染みを観察していた。
「あ」
小さくつぶやいたリヒトが、ズボンにくっついていただ円形の葉っぱを手に取った。
「ユーリ様」
「ん?」
「ユーリ様の目と、おんなじ色の葉っぱです」
うふふ、と笑いながらリヒトが、ユリウスの顔の横まで小さな葉っぱを持ち上げた。
それから彼は、あれ? と首を傾げて。
「でもユーリ様の目の色の方が、やっぱりとってもきれいですね」
おんなじ色だと思ったのに全然違った、と残念そうに話すリヒトを、ユリウスは両腕にぎゅうっと抱きしめた。
なんて可愛いことを言う子だろう。
リヒトが可愛すぎて、ユリウスの心臓はもうもたないかもしれない。
ジタバタと悶えたくなったユリウスの視界の端で、テオバルドがおしぼりの用意をしているのが見えた。
「テオ」
低く、短く、侍従の名を呼んで、ユリウスは氷の一瞥を投げた。
余計な真似をするな、と視線だけで命じて、ユリウスはバスケットを引き寄せ、中が良く見えるように傾けた。
「リヒト、どれがいい?」
料理長の焼き菓子はどれもとても美味しそうだ。
リヒトがパァっと目を輝かせて、薄切りの林檎を薔薇に見立てたミニケーキを指さした。
テオバルドが小皿とフォークをユリウスへと手渡してくる。
そうだ、わかってきたじゃないか。
ユリウスは満足げにひとつ頷くと、
「リヒトの手は汚れているから、僕が食べさせてあげるね」
リヒトへとそう告げて、小皿にミニケーキを取り分けた。
「はい、リヒト」
口元へと蜜がけの林檎を近づけてやると、リヒトがあ~んと口を開く。
もぐもぐと動く頬が可愛い。
以前は口の中の感覚も弱くて、よく食べこぼしをしていたリヒトだが、触覚が治癒してからはきれいに食べられるようになった。
それに加え、味覚と嗅覚が戻ってからは、食事をすることはリヒトにとって喜びのひとつに加わった。
こくり、と嚥下をしてからリヒトは、満月の瞳にユリウスを映して、はにかむように微笑んだ。
「甘酸っぱくて美味しいです」
この子に美味しいものをたらふく食べさせてやりたい、と料理長サデスが思ったのも納得の可愛さである。
ユリウスは上機嫌に、ケーキの残りも手ずからリヒトへと食べさせてやった。
テオバルドは、リヒトの手を拭くために用意したはずの、行き場のなくなったおしぼりを、そっと銀のトレーに載せ、ユリウスの前に置いた。
ユリウスが褒美のようにテオバルドへと、蕩けそうな笑みを向けてきた。
ひぇ~、とテオバルドはまた内心で悲鳴を上げる。
王弟殿下の美貌を見慣れているはずなのに、笑顔ひとつで心臓がバクバクするのだからすごい。
アルファだから美形なのか、はたまたうつくしいからこそのユリウスなのか。
ユリウスの微笑にうっかり惑わされそうになったテオバルドは、思考が混乱してきて、「うわあっ」と茶色い髪を掻き回した。
突然のテオバルドの奇行に、リヒトが目を丸くしてこちらを見てくる。
ことんと小首を傾げたリヒトが、
「ユーリ様、テオさんもお腹が空いたみたいです。ケーキをあげてもいいですか?」
と無邪気にユリウスへと囁いた。
ユリウスがくっくっと肩を揺すって笑い、テオバルドの用意したおしぼりを手に取ると、それでリヒトの口元をやさしく拭ってやる。
それからテオへと視線を流して、僕のリヒトの申し出をまさか断らないよな、と無言の圧を掛けながら、
「テオ、ロンバードも。好きなものを取っていい」
と、バスケットを示した。
味なんてわかるかよ、と内心でツッコミながら、テオバルドは頭を下げた。
ちなみにロンバードは、
「俺は菓子よりも酒がいいんですが」
と実に図々しいことを言ってユリウスを呆れさせたのだった。
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